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奈良博「超 国宝展」~東大寺とその近傍をめぐる⑦

    ※記事内の像の写真は全て「仏像館」の撮影OKのものです。
    (東西新館の国宝展の方は全て撮影禁止)

    来週も再来週もちょこちょこと用事があるので、今のうちに奈良国立博物館、通称「奈良博」の「超 国宝展」へ行ってきました。
    明治28年(1895)に開館以来、130周年を記念して過去にない最大規模の国宝展だと、HPでも謳っていますので、絶対に見逃すまいと思っていたのです。

    そういえばこの「奈良博」も東大寺のすぐ目と鼻の先にありますので、今回のシリーズに加えておくのがいいと思いました。

    「ならしかトレイン」に感激!

    意気揚々と出かけ、近鉄奈良線のホームに滑り込んできた電車を見てテンションはマックスになりました!

    派手にラッピングされた外観にギョッとしつつも「おぉ!」と驚きの声を上げ、あわててスマホを取り出して撮影しました。

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    とにかくかわいい!
    私は全く知らなかったのですが、「ならしかトレイン」というもので、なんと3年前にすでにデビューしていたそうです。
    吊皮の鹿はコロンと丸くてカワイイのですが、見ようによってはイノシシにも見えなくもない(笑)

    外側だけではなく床やシートに至るまで、近鉄奈良駅周辺の名所と鹿と若草山のイメージをフルにデザインしているのは見事!

    図らずもこんな特別列車に当たったのは、この日に良い仏像との出会いが予感されました。


    選りすぐりの超国宝に
    目移りしてしまう

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    思わず呆然となったのは、新館の入り口から伸びた長蛇の列でした。

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    右から折り返して左へと続き、まだ延々と続く様子に言葉を失いました。
    なんという人気ぶりでしょう!

    奈良博メンバーシップ会員

    前回初対面のつきふねさんにこの奈良博にも年パス●●●があると聞いていたので、ぜひともこの日は入会しようと思っていました。

    調べてみるとメンバーシップ会員というもので、入会日から1年間、「特別展」は少し制限があるものの、仏像館や名品展は何度でも無料。
    しかも東京・京都・九州の国立博物館でも特典を受ける事ができます。

    今年は東大寺の友の会も入っているので、ついでに有効活用できると思い入る事にしました。

    さて、話を入り口の大行列に戻します。
    行列整理している方に、メンバーシップに入るのもこの行列に並ぶのかを質問すると、お隣の「仏像館」でも手続きができるそうです。

    並ばずにすぐに手続きできた上、チケットを買うための長い行列の横からダイレクトに入場できたので、大きな優越感を味わいました。

    東大寺友の会も奈良博メンバーシップも共に各5,000円。
    特別展が1回2,200円、同敷地内の仏像館が700円なので、2回も行けば元が取れるという金額的なお得感もありますが、なによりチケット売り場で無駄に並ぶ必要がないという大きな利点があります。

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    二つ折りタイプで、
    表紙は伽藍神立像(鎌倉時代)です。

    いざ入館すると、予想通りの混雑ぶりで、とにかく人だらけ。
    全体に第7章に分けられていましたが、そこを確認しながら回るより、とにかく見る事ができるものを臨機応変に観て回りました。
    教科書でしか観たことないような貴重な仏像の数々に、始終目移りしっぱなしで、心の中で奇声をあげるほど興奮したことを白状します。


    ひとみさんもこの展覧会の様子を記事にされています。
    私と違って理路整然とまとめられていますので、ぜひご覧になってくださいね。

    以下、順不同で思いつくままにご紹介いたします。

    ◆「百済観音」と「菩薩半跏像」

    興味はやはり今回の目玉の「百済観音」と「菩薩半跏像」がどのように展示されているか。
    それぞれ法隆寺とそのお隣の中宮寺の所蔵なので、昨年、法隆寺を堪能して現地でしっかり観ているだけに、本家本元との展示の違いも気になるところです。

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    当日のチケット
    向かって左:百済観音、右:菩薩半跏像

    入ってすぐに私の愛する「百済観音」がデン!と直立されていました。
    しかし、たくさんの人が周りを囲んでいたので、足元は全く見えません。
    超混雑しているため仕方がないのですが、あまり効果的とは言えない展示で、現地で観るより一回り小さく感じ、迫力や美しさも半減していたように思いました。

    対して、最後に登場した「菩薩半跏像」は一面真っ白の空間に置かれ、その黒いボディが引き立つ効果的な展示でした。
    いかにも最後の大ボスという特別●●な存在という立ち位置だと伝わります。

    ですから「百済観音」は絶対に法隆寺の「大宝蔵院」で観る事をおススメします。

    ◆リアリズムを追求した僧の姿

    重源上人ちょうげんしょうにん坐像は7月の東大寺「俊乗堂」での特別開扉を楽しみにしていましたが、ここでじっくり観る事ができました!

    額の深いシワ、落ち窪んだ眼、こけた頬、背を丸めて、頭を前に突き出して前かがみですが、目はしっかりと前を見据えています。
    そのちんまりと座る姿は老齢となっても、高僧の気高さを十分感じられるものでした。
    いかにも平家の南都焼き討ち後の東大寺再興を成し遂げた誇りと、それまでの苦労がにじみ出た姿を描写していました。

    前後左右のどこから見ても人間そのもので、今にも動きそうなほどリアルででした。

    その他、岡寺創建・義淵ぎえん僧正、西大寺中興の祖・|叡尊《えいそん》なども超が付くほどリアルで、おそらくそれぞれの特徴を忠実に再現されたとわかるほど現実味がありありと表れていました。

    ◆維摩居士ゆいまこじの姿に感激!

    法隆寺訪問以来、気になっていた維摩居士ゆいまこじのリアル像もあった事に、私は嬉々としてしまいました。

    法隆寺・五重塔の東面の「維摩詰像土ゆいまきつぞうど」で文殊菩薩と問答していたほどの人物です。
    しかも彼は仏でも僧侶でもなく、在家の信者だと言うではありませんか!
    よほど高い精神と信心の持ち主で、徳の深さが偲ばれ、今、私は大注目の人物なのです。

    この像は、まさしく文殊との問答の様子を表現していて、声を発する時にできる顔の筋肉の形状が自然で、これもまたリアル過ぎます。

    ◆空也上人立像は何体ある?

    教科書、あるいはテレビの画像でしか観た事がなかった「空也上人くうやしょうにん像」を初めて見ました!

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    藤田美術館

    彼は南無阿弥陀仏と唱えて極楽往生を叶える阿弥陀信仰を広め、その唱えた念仏の6文字が、6体の阿弥陀如来になって口から出たという伝承を表したもので、空也を象徴した姿です。

    彼が創建した京都の「六波羅蜜寺」にしかないと勝手に思い込んでいましたが、こちらにあったのはなんと、大阪の「藤田美術館」所蔵のものでした。

    今回調べて初めて知ったのですが、この像は文化財として登録されているものだけでも3体あり、現存最古の六波羅蜜寺を筆頭に、藤田美術館、そして滋賀の荘厳寺にあるらしい。
    ただし、荘厳寺のものは口からの阿弥陀は破損したのか現在はついてません。

    重文登録されていないものもあるらしいので、全てこの阿弥陀信仰にあやかりたくて、模写して信仰対象としたのだと思うと、当時の人々の切実さが伝わります。

    空也上人像は、鎌倉時代を代表する仏師、運慶の四男・康勝の制作と伝わりますが、恍惚とした表情や、肋骨が浮き出て頬もこけた瘦せ細った様子、そして脚のスネ毛まで忠実に再現されたリアルさは、いかにも慶派っぽい。

    ◆大日如来坐像に釘付けになる

    奈良・円成寺所蔵の「大日如来」に惹かれました。
    印相は「智拳印ちけんいん」なので金剛界の如来だとわかります。
    (胎蔵界の大日は右手が上の法界定印ほっかいじょういん)

    穏やかな表情で、体つきも両腕の開き具合も違和感を1ミリも感じさせない自然な描写で、これらの絶妙な曲線は美しすぎる。
    ピンと伸ばした背筋には生身の人間が持つ弾力性まで感じられるのです。

    パッと見てそう感じさせられたと思ったら、なんと若き運慶の初期の作でした。
    やっぱり彼は人間の肉体構造をよく理解していたのでしょう。

    さて、所蔵しているこの「円成寺」は東大寺の東側に位置し、春日山と高円山たかまどやまの谷あいを通る柳生街道にあるという。
    HPを確認すると、東大寺をスタートして石仏めぐりもできるようで、また是非訪れてみたいと思いました。

    それにしても東大寺周辺、東西南北すべてに見どころが多すぎます。
    これは今年1年だけでは回りきれないかもしれない。


    仏像館でのステキな出会い

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    裏側(近鉄奈良駅側)からの写真

    メインは新館ではありますが、同敷地内にある「仏像館」も、なかなかどうして国内随一の仏像点数を誇ります。
    中には破損した部位だけの展示もあるほどで、仏像三昧に浸りたい方は、是非ご覧いただきたい。

    ◆金峯山寺・金剛力士像

    サムネイル画像にもしていますが、隣接する「仏像館」では奈良・金峯山寺きんぷせんじの「金剛力士像」が特別展示されています。

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    どちらも約506㎝という高さは圧倒的な存在感で、見上げるほどに大きい。
    しかし、金剛力士像としてはこれでも国内2番目の大きさで、東大寺・南大門のものは約840㎝もあり大差をつけて国内1位です。

    この金峯山寺のものでも天井スレスレですので、東大寺のものは入りきれないという事ですね。
    南大門両脇の窮屈な金網内に収められていますが、広い空間で囲いなしで観る事ができたなら、どれだけ迫力があるのでしょう。
    叶う事なら、両者4体を並べて鑑賞してみたいと思ってしまいました。

    ◆浄瑠璃寺の馬頭観音

    今年1月、秘仏公開日に訪ねた浄瑠璃寺。
    その時にお留守だった馬頭観音に出会う事ができました。

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    浄瑠璃寺観光パンフレットより
    仏像館では撮影禁止です。

    ハッキリ言ってめちゃくちゃ怖い!
    マジでホラーです💦
    夜に観たら悲鳴を上げて逃げてしまうのは間違いない。
    馬のような食欲で「煩悩」を食べ尽くすとされていますが、身体も丸ごと食べられてしまうような空気は十分あります。
    言う事を聞かないやんちゃな子供に見せると大人しくさせる効力はありそうで、私も幼い頃の次男に見せたかったと思いました。

    ◆五大明王

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    小さな像でありますが、平安時代作の貴重な像です。
    奈良博データベースによると、京都・東寺の五大明王と同じく弘法大師様式ではありますが、左下の軍荼利ぐんだり明王が左脚を高く跳ね上げて片足立ちしているのは珍しいそうです。

    ◆十二神将

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    鎌倉時代の作品。
    とにかく各像の表情やポーズが豊かで楽しい。
    軽妙な変化をつけながらも、全体にまとまっています。
    頭上にそれぞれの十二支獣の特性をそのまま表情に表現されている手法は見事。

    ◆獅子と狛犬

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    両者ともシブイ!
    立ち上げた尾の表現も良し!
    どちらの獅子も鎌倉時代の作で、かつて文殊菩薩の台座となっていたもの。
    筋肉の隆起や胸の隆起、そして精悍な顔立ちなどは、鎌倉時代らしいリアルさが表現されています。

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    こちらは頭に角があるので狛犬ですね。
    案内板によると、歯をむき出しにして正面を見据えたポーズは平安時代ですが、筋骨のリアル描写は鎌倉時代の特徴なので、おそらく平安後期から鎌倉前期の作だと考えられています。

    ◆絶対秘仏ミステリー

    さてこの仏像館でのレポートで最後にどうしても語りたいものがあります。

    何人たりとも観た人がいない絶対●●秘仏とされている二月堂ご本尊、大小2体の十一面観音のうち大観音の光背が展示されていたので、私は驚いて声をあげそうになりました。
    (下記リンク右下のもの)

    昨夜のおとな旅あるき旅は、なら仏像館へ。珠玉の仏像が複数、丁寧に紹介されました。二月堂ご本尊の光背もちょっとだけ登場。。同じ奈良博の特別展でなく、仏像館に特化した内容なのが大人ぽくて良かった。 pic.twitter.com/yo8M28ed88

    — 興福寺三重塔 (@3pagoda) July 17, 2021

    というのも今年の4月から、松原市主催の月一開催の「おもしろ仏像講座」に参加していて、つい先日もこの「絶対秘仏」に関しての話が出たところだったのです。
    奈良博に寄託しているという事は聞いていたのですが、まさかこの日に展示されているとは思いもよらなかったので、嬉しい不意打ちを食らった感じです。

    とにかく講師の方から聞いた通り、大きな舟形の光背はボロボロで、台紙に張ってパネルにして、やっとその形がわかる状態でした。

    誰も見た事がない=存在しない??

    光背がこの状態であるのなら、ご本尊のお姿もただの木片程度にしか残っていないのではないか?
    そういう疑惑が湧くほどひどい状態でした。

    この件に関しては、長くなりそうなので、後日また記事にします。


    興福寺国宝館はアップデートしていた

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    実はこの日、前期展示のみで観れなかったものがありました。
    それは「天燈鬼てんとうき」と「龍燈鬼りゅうとうき」です。

    どうしても見たかったので、帰り道に所蔵している「興福寺」に寄ってみました。

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    久しぶりにあの阿修羅を含む「八部衆」にも会いたかったので、一石二鳥です。

    一目散に「国宝館」に向かったのですが、入り口の方向は変わっているし、順路がはっきり決められて、しかも一番見たい「千手観音」や「八部衆」のあたりは立ち止まっていると注意される始末です。

    昔はもっと自由に観れたと記憶しているのですが、リニューアルしてキレイになったのはいいですが、しっかり見仏できなかったのが少々不満です。

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    国宝館パンフレットより

    印刷物の写真では限界があって、彼らの豊かでコミカルな表情やポーズは伝わりませんが、本当に良くできた邪鬼たちなのです。
    私のイチオシなので、ぜひ実物をみてほしいです。




    ~仏像三昧の一日を終えて~
    これでもか!というぐらい、この日は仏像を見て歩き、とんでもない数を鑑賞したのですが、やはり法隆寺・大宝蔵院に安置された「百済観音」に勝るものはありませんでした。
    今回の展示は、イマイチだったのをみると、本家本元の法隆寺が十分にその魅力を熟知しているからこそ、最良の見せ方をしているのだとわかりました。

    それだけではなく、やはり各像は、本来のあるべきところにある事が一番なのかもしれませんね。


    図録は3,300円。
    高めなのと、重たいのとで迷いましたが、やはり買いました。
    メンバーシップで10%引の2,970円でした。

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    【東大寺とその近傍をめぐる】
    ①冬の「浄瑠璃寺」
    ②下見の春日大社
    ③今期初!東大寺散策「南大門と大仏殿」
    ④今期初!東大寺散策「西伽藍と東伽藍」
    ⑤noteオフ会!氷室神社と不空院
    ⑥noteオフ会!ミュージアムと依水園


     
     
    エッセイスト (主に読書、歴史に関して書いています。 1961年生まれ大阪府出身。読書好き。歴史好き。ハンドメイド好き。妄想好き。 著書「レキジョークル奥の枝道」シリーズ7冊目をただいま執筆中。<https://amzn.to/3vgIGz9>

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