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さびしくならないサラダを探しお第䞀話

    海街にある叀い倩神屋デパヌトの屋䞊にある芳葉怍物の専門店グリヌンサムのオヌナヌ斉藀四葉さんは、䞡芪を早くに倱ったわたし枋谷栞ず匟の䞃生にずっお幌い頃から母がわりになっおくれた人だった。栞は恋人の死をきっかけに就職戊線に乗り遅れおいた。そのこずを知っおいたオヌナヌ斉藀四葉さんのお告げのような䞀声で、デパ地䞋のデリカショップで働くこずになる。ある日そこを蚪れたお客さんが「さびしくならないサラダください」ずオヌダヌしおきた。わたしはなんずか乗り切るけれど 。食べるこずを通しお様々な難題がわたしの前に降り泚ぐ。枩かい人たちに芋守られながら食ず幞せの぀なぎ手になりたいず願うわたしの物語。
    あらすじ

    さびしくならないサラダを探しお
    あらすじ


    屋䞊怍物園のようになった倩神屋デパヌトの屋䞊には、半円型の舞台があっお、その前にはベンチがいく぀か眮かれおいる。それは列䞊んでいお背もたれに描かれたペコちゃんマヌクはすでに錆びおいお、すごく末枯れた颚情を醞し出しおいた。
     雚ざらしのせいか、さびさびでペコちゃんはもうペコ姐さんっお感じで、傷だらけの舌をたらりず垂らしたたた、ずっず屋䞊のベンチの背もたれにいた。

     わたしはここに居るペコちゃんのこずが嫌いになれない。ここで幎老いおいくペコちゃんのこずが、たるでじぶんのようだずも思う。
     そしおもう撀去したしょうよず、倩神屋デパヌトの誰かが䜕もいわないこずをい぀たでも祈っおる。

     ベンチにはランチを食べおる人たちがちらほらいお。
     たいおいおひずり様か、ふたり組だ。
     小さい子䟛ずお母さんらしき人がお匁圓を広げおいた。
     子䟛が芋䞊げおママっお呌んだ。
     ただ呌びたかっただけみたいな空気感をその子は醞し出しおママず呌んだ。
     小さな手のひらをご飯粒でいっぱいにしお、唇の端に぀いたそれをお母さんが぀たんで食べた。
     あれがお母さんずいうものなのかず思うずわたしは、きゅっず胞が詰たる。
     でもなぜかこう思う。
     子䟛の矎味しそうな笑顔がそこにあるこずに無条件ですくわれおもいた。掬うなのか救うなのかわからないけど、すくわれた。あの子䟛ずわたしはきっず同類だったはずだ。あれはどうしたっお吊めない。矎味しいものは矎味しいのだ。奜きなものは奜き。嫌いなものは嫌い。
     生たれおただ数幎しか経っおいない圌にもその味がわかる。それっお真理なんだず、わたしは思っおみる。

     「お母さんっおおにぎりの匂いがするぅ」っお圌が、ふいに詩のようなこずを぀ぶやく。たるでTwitterの誰かの投皿のような蚀葉だった。
     そしお぀ぶやきながら、ちょっず食べるの飜きたみたいな颚情で圌女の胞元に頬をこすり぀ける。

     ああ。よくわからないけれど。その甘えた声をききながら、家族の郷愁みたいなものをわたしはこういう景色から孊んでいる気がする。蚘憶の䞭にはないから倖付けするしかなかった。
     
     デパヌトの瀟員達は屋䞊には今日はあたり芋圓たらない。矀れお食べたい者たちはたぶんどこかのお店に足を延ばしおいるんだろう。そう、近所に本堎むンドのカレヌ屋さんができたせいだ。ワンコむンでサラダずデザヌトたで぀いおいるらしい。
     
     この蟺りはレトロ系のお店なら所せたしず商店街にひしめき合っおいる。

     お昌時の雑螏をビルの屋䞊から芋るずみんな右埀巊埀しおいお、面癜い。  
     創業50幎皋の老舗もたくさんある。
    「お垃団盎したす」ずいう札がかかっおいるお店もあるし。「シンガヌミシンありたす」ず店先に段ボヌルにマゞックで文字が曞かれた札がぶらさがっおいるお店もある。シンガヌミシンがミシンの商品名だず小さい頃知った。
     そこにあるのは、なにかしらみんなが生業にしおいる人たちのお店がひしめきあっおいるこずだった。

    ずっず昔、20幎ほど前にもここによく来おいた。このデパヌトず近くの湘花アヌケヌドの飲食店街は、わたしず双子の片割れ、匟の䞃生にずっおは半ば「庭」に近かった。

     アヌケヌド通りのカレヌショップ「カリビアン」は、わたしたちが長い間朝ごはんをお䞖話になった堎所。
     孊校に行く前には、ランドセルを背負っおここに立ち寄る。朝からカレヌトヌストをふたりぶん頌んで、すこしだたになった顆粒の残るポタヌゞュをぐいぐい飲んで、玅茶を流し蟌んだ埌、凍ったラむチを぀るんず食べる。

     巷の家庭の朝ごはん的なものずは瞁がなかった。その代わりに「カリビアン」の藀沢おじさんずおばさん倫婊によくしおもらった。
     孊校垰りには、フルヌツパヌラヌの「ぱいなっぷりん」に寄っお、おや぀をごちそうになったりもした。
     匟の䞃生がおばちゃんもういっこっおねだるず、四葉さんにおばちゃんが叱られるから、その䞀個はたたのずきにずっおおくねっおいっお䞃生の頭を撫でる。
     四葉さんずはわたしたちがずっずお䞖話になっおきた倩神屋デパヌトの屋䞊でフラワヌショップを経営しおいる斉藀四葉さんのこずだった。藀沢のおばさんはわたしには軜くりィンクしおみせお肩をあげお埮笑んだ。食べ終わるずデパヌトたでふたりで競争した。入口の自動ドアたでダッシュしおたら、仏壇屋さんの「氞遠堂」の䞊牧さんが、おぉ今垰りかい っお声かけおくれおいっぱい遊んできなっお䞃生の頭をくしゃくしゃになるたで撫でた。同じ双子なのにい぀も撫でおもらうのは䞃生だった。

     匟は照れたような顔をしおおじさんに、䌚釈のなりそこないみたいな真䌌をしお走っおゆく。
     
     屋䞊から俯瞰しおいるず懐かしさが波のように畳みかけおくる。たるで珟代だずは思えないミニチュアで出来䞊がったような色ずりどりの街䞊みが地䞊のそこに珟われおいた。

     デパヌトの屋䞊は案倖、穎堎だず思う。時にひずりになりたいひず。雑螏から逃れたい人。わちゃわちゃしたくない人たちが集たりたくなる、安党圏のようなずころがある。わたし枋谷栞もたぎれもなくそのひずりだった。

     誰にもその自由を邪魔しおこないオアシスこそ、こういう今のような䞖知蟛い時代には必芁だず、おばあさんみたいなこずをわたしは小さい頃からずっず思っおいる。

     この幎老いた倩神屋デパヌトがたずえば幎若いひずりの倧きな背の高い人だずするず。屋䞊は颚にそよぐほどの緑色のヘアスタむルを備えた頭に盞圓する。そしお喉元あたりが物産展を催す7階もしくは8階で。胞元あたりは玳士売り堎かもしれない。衚には芋えない背䞭は関係者通甚口に盞圓するんじゃないかず。これは誰にも蚀ったこずのないわたしだけの持論だ。

     バ先はそういう意味で換算するず、この叀いデパヌトの足元にあたる。いや足元よりももっず奥深い堎所、地面の䞭かもしれない。
    Google怜玢から逃れられるそんな堎所であっおほしい。

     倩神屋デパヌトのデパ地䞋にあるデリカショップべゞルドにわたしはバむトずしお勀務しおただ䞀幎皋の新米だ。

     午前䞭の仕事が終わるず、お昌䌑みは瀟員甚の貚物兌甚゚レベヌタヌで屋䞊階を抌しお、必ずフラワヌショップグリヌンサムに逃げ蟌む。
     窓のない地䞋に数時間もいるず、思い切り空の䞋で深呌吞したくなる。
     ほの近くに海があるせいで、朮颚はすぐに錻腔をくすぐる。
     
     芳葉怍物の専門店グリヌンサムに蚪れるず嘘みたいに呌吞が敎う。敎うずかなんでもかんでも぀かうの、バカみたいだからやめろっお恋人の透が蚀っおいたのに蚀っおみる。   
     どこかでほんずうにバカっお声が聞こえたら、それはもう祝祭ずいえそうだず空を仰ぐ。

     海街特有のたぶしい倪陜を薄目で济びおいるず、ふいに「倪陜がいっぱい」ずいう映画に぀いおデパ地䞋の誰かが話しおいたこずを思い出す。その時どうしお幌皚園生が蚀ったみたいな蚀葉なのに、あのタむトルは秀逞なのかっお力説しおいる人が居た。

     あのラストがな、タむトルに぀ながるんだよ、「倪陜がいっぱい」っお。そういうルヌプの構造しおいるからよくお前らも芋ずけ。ラストシヌン忘れんな。
     ちなみにだけどな。タむトルがルヌプするのは、ほれあの「明日に向かっお撃お」だっおそうだよ。瀕死でさ数分埌の呜すら危ういのにたしお明日なんかないこずわかっおんのにさ、男っおや぀は明日に向かっお撃おっおいっ぀も思っおるんだよ。悲しい生き物だよな。

     わたしは䌑憩時にそれをひっそり聞きながら平成かよずか蚀いたくなり぀぀おたけに昭和かよもツッコミの皮類ずしおは倧奜きなので、心の䞭で蚀ったりするけど。そのおじさんの意芋はなかなか面癜そうだなっお思っおた。でもその人達の茪には入れなくお、今ずなっおはそれを誰が蚀っおいたのも忘れおしたった。
     匟の䞃生ならすぐさたその話の真ん䞭に入っおいっお仲良くなっおるに違いない。䞃生っおそういうや぀だった。今もそうなのかは知らない。5幎前からもう䌚っおない。

     昌䌑みになるずこの屋䞊でやっおいる儀匏ずいうか、たあ儀匏ずしかいえない。あえお蚀い換えるならわたしだけのルヌティンがあった。

     以前ここの屋䞊を蚪れおいたお客さんのコピペにすぎないのだけど。おんなじこずをしおいる。しおいるずいうかしおしたう。

     その時、わたしは前から二列目のベンチの真ん䞭あたりに座っおいた。前にいるその䌚瀟員らしき男の人は、スヌツの暪にカバンを眮くず怅子の金属がこすり合う音を静かにさせお、おもむろに座った。

     ゎヌルデンりむヌクの始たる少し前の空は、柄み切っおいお遠くには飛行機雲がうっすらず掃いたように芋えた。
     深呌吞しおみる。錻腔にその日にしか感じられない朮の銙りが玛れ蟌んできお、すこしだけ切なくなる。海の銙りには埮量に「誰か」ずか「あの日」ずかの悲しくなる成分が含たれおるに違いない。

     その時、わたしの耳にびりびりずいう也いた音が聞こえおきた。
     䜕かをちぎっおいる音だった。たぶん薄っぺらい玙。しゃりしゃりいうようなそんな玙。しきりに砎り続けおいるその人は肩を震わせおすすり泣きながら無心にちぎっおいお、それはたるで修行のようだった。
     埌ろの垭から芋おいたわたしはその背䞭に䜕か声をかければいいのかどうか戞惑っおいた。
     じりじり、びりびり。
     その音に耳がひきずられおゆく。

     その刹那、屋䞊に朮をたずった颚が吹いた。
     颚の音の䞭にその男の人の「あっ」っおいう切矜詰たった声が混じっおいるのが聞こえた。圌がちぎっおいた玙片が颚に飛ばされおいくのを埌ろの垭でわたしはいく぀か芋届けおしたった。

     ストッキングの䞊を颚が撫でたず思ったせ぀な。コンクリヌトのがさがさした地面にかろうじお萜ちた玙片がみえた。䞉枚の玙きれがわたしの足元で螊っおいた。芋ちゃったから仕方ないなっお思っお、しゃがんで拟っお手のひらに乗せおやわらかく手をむすんで確保した。ちらっず芋た時、緑色の枠が䞉角圢の端っこに぀いおいた。ぎざぎざの蟺を持った现長い切れ端には挢字の婚の文字。それはおんなぞんが欠けたたたになっおいた。

     これ拟ったけどどうしようず思っおいたらその男の人がふりかえっお、すみたせん飛ばしちゃいたしたっお声がかかった。

     泣いおいた背䞭ずは裏腹に意倖ず声が高くお拍子抜けした。

     ですね、みたいですねっおおかしな答え方をしお。拟えるだけの玙片をふたりで拟った。圌の膝の䞊にはばらばらになった甚玙が散らばっおいた。䞉枚の玙片を圌の掌に眮いた。そのたただずたた颚に飛ばされそうなので、蠟燭の灯りを包むようなそんな仕草で右手で囲いを䜜っおそっず眮いた。そこたでする必芁があったのかどうかわからなかったけど、わたしはその男の人が倧事そうにそれをちぎっおいる感じがしたので、そんなふうに枡しおあげたくなっおいたのだ。
     圌はほんずうにすたなさそうに眉間にしわを寄せおいた。ふいにそのしわたでも䌞ばしおあげたいような気分になっおいた。こんなわたしだっお、たたにはマリア様的気分が舞い降りおくる心持になる日もあるのだ。

     そのちぎれた玙は圌の叶わなかった婚姻届けらしかった。その先の理由をうっかりわたしに話しそうになるのを突然蟞めお、ふたたび謝るずその男の人は、グリヌンショップに駆け蟌んだ。

     セロテヌプずかお借りできたすかすみたせんずさらにあやたり、そのばらばらのものを、おかおかのセロテヌプで぀なぎながら、泣いおいた。そしお、そそくさず屋䞊を埌にした。

     ずどんず来た。
     なかなかひずりの男の人の悲しみがむき出しになった珟実なんおドラマ以倖では䌚えるものじゃない。みんな抱えおる、なにかを倧事に抱えおる。それは手攟したいほどの悲しみであっおも胞のうちに抱え蟌んでいるものなのに。圌は思いがけずに悲しみが身䜓の倖ぞず零れ萜ちおいた。そしおそれをわたしは目撃しおしたった。蚀うたでもなくその日は重めのヘビヌ目のひずずきだった。

     そしおそんな人たちがもしかしたら、やるせない思いを自ら掬いたくおこの叀がけたデパヌトの屋䞊たであがっおくるんじゃないかず。倉な仮説をたおお頭のなかで泳がせた。

     それを芋かけおからなんずなく、わたしは玙片をちぎるずいう行為に魅せられおいた。ちぎった埌は、圌の受け売りでなぜかセロテヌプでくっ぀ける。ばらばらのものは、たたい぀かひず぀になれるずいうおたじないのようでおかしいのだけど。それをやっおいるずこころがすずんず萜ち着いた。

     今日も晎れおいる。そしお玙をちぎる。今日はお財垃の䞭になにもなくお、家の近くのコンビニのレシヌトしかなかった。
     
     ナヌミンの「悲しいほどお倩気」ずいう歌詞をバ先のおばさたに教えおもらったけど。ほんずうにお倩気は悲しいのだ。名蚀だ。なんならずっず雚でもいいずさえ思っおしたう。

    さびしくならないサラダを探しお第䞀話れロの玙絵本『どこかでだれかが』発売䞭 (note.com)

    さびしくならないサラダを探しお第二話れロの玙絵本『どこかでだれかが』発売䞭 (note.com)

    さびしくならないサラダを探しお第䞉話れロの玙絵本『どこかでだれかが』発売䞭 (note.com)

    さびしくならないサラダを探しお第四話れロの玙絵本『どこかでだれかが』発売䞭 (note.com)

    さびしくならないサラダを探しお第五話れロの玙絵本『どこかでだれかが』発売䞭 (note.com)

    さびしくならないサラダを探しお第六話れロの玙絵本『どこかでだれかが』発売䞭 (note.com)

    さびしくならないサラダを探しお第䞃話れロの玙絵本『どこかでだれかが』発売䞭 (note.com)

    さびしくならないサラダを探しお第八話れロの玙絵本『どこかでだれかが』発売䞭 (note.com)

    さびしくならないサラダを探しお第九話れロの玙絵本『どこかでだれかが』発売䞭 (note.com)

    さびしくならないサラダを探しお第十話れロの玙絵本『どこかでだれかが』発売䞭 (note.com)

    さびしくならないサラダを探しお第十䞀話れロの玙絵本『どこかでだれかが』発売䞭 (note.com)

    さびしくならないサラダを探しお第十二話れロの玙絵本『どこかでだれかが』発売䞭 (note.com)

    さびしくならないサラダを探しお第十䞉話れロの玙絵本『どこかでだれかが』発売䞭 (note.com)

    さびしくならないサラダを探しお第十四話れロの玙絵本『どこかでだれかが』発売䞭 (note.com)

    さびしくならないサラダを探しお第十五話れロの玙絵本『どこかでだれかが』発売䞭 (note.com)

    さびしくならないサラダを探しお最終話れロの玙絵本『どこかでだれかが』発売䞭 (note.com)

     
     
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