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✂キリトリ線の内偎で🐯寅幎の劻のために曞いた短線が、11䜜になるたで

    䞀区切り぀いたので

    先日、『むンビゞブルフレヌムThe Frame Is Set』を公開したした。

    癜石茝道ずいう男を远いかけた物語は、これで完結です。

    長い話でした。

    曞いおいる最䞭は、ずにかく終わらせるこずしか考えおいなかったので、公開ボタンを抌したあず、しばらく劙な手持ち無沙汰が残りたした。

    それで、ふず、これたで曞いおきたものを䞊べおみたんです。

    数えおみるず、このシリヌズはい぀のたにか11䜜になっおいたした。

    うち2䜜――『゜シオパスフレヌム・れロ』ず『囜遞匁護人 柏朚悠人』には、寅子は䞀床も登堎したせん。それでも、同じ䞖界の䞭で起きおいる話です。

    自分でも少し驚きたした。

    最初は、劻のために短線を䞀本曞いおみようず思っただけだったのに。

    せっかく䞀区切り぀いたので、今日は少し立ち止たっお、この11䜜がどうやっお生たれ、どう転がり、い぀のたにか今の圢になったのかを振り返っおみようず思いたす。

    これは、いわば䞀人の趣味の曞き手の制䜜蚘録です。

    䞀本の短線から始たったものが、曞いおいる本人の思惑を少しず぀はみ出しながら、ここたで育っおいった。その過皋そのものを、今回は曞いおみようず思いたす。

    どうかお付き合いいただけたら幞いです。


    すべおは「切り取る」から始たった

    noteを始めたのは、2024幎9月でした。

    最初の蚘事は、小説ではありたせん。

    劻ずの旅行のたびに曞き溜めおいた旅行日蚘――トラベルノヌトを、noteに曞き写すこずにした。そんな報告のような蚘事でした。

    その䞭に、自分でも今読み返すず少し䞍思議な䞀文がありたす。

    「旅行ずいう䞀般人の非日垞をただ切り取っただけの日蚘なので」

    謙遜の぀もりで曞いた䞀行でした。

    倧した䞭身のない日蚘ですよ、ずいう皋床の意味だったず思いたす。

    でも今になっお読み返すず、この「切り取る」ずいう蚀葉の䞭に、その埌やるこずになるほずんど党郚が入っおいた気がしたす。

    私の執筆コンセプトは『非日垞のキリトリ線』。

    副題は「日垞から非日垞郚分を切り取り」。

    これは、noteを始めた時から倉わっおいたせん。

    去幎、クリ゚むタヌペヌゞのヘッダヌずアむコンを刷新した時も、このコンセプトをそのたた画にしたした。

    巊に私――撮る偎。

    右に寅子――フレヌムを぀くる偎。

    そしお䞭倮に、キリトリ線。

    旅の蚘録も、人物月旊も、フィクションも、考えおみれば、やっおいるこずはずっず同じでした。

    日垞の䞭から、ある郚分だけを遞んで、枠で囲む。

    それだけのこずを、圢を倉えながら、ずっずやっおきたんだず思いたす。


    劻ずテレビの2時間ミステリヌから、物語が始たった

    きっかけは、本圓にささいなこずでした。

    ある日、い぀ものようにトラベルノヌトをたずめおいた時、ふずテレビを芳おいる劻の姿が目に入りたした。

    再攟送の西村京倪郎トラベルミステリヌに倢䞭になっおいる。

    劻は昔から2時間ミステリヌが奜きで、十接川譊郚も、赀い霊柩車も、浅芋光圊も、欠かさず芳おいたす。

    話のパタヌンが䌌おいるせいで、どれをい぀芳たか忘れおしたい、

    「䜕床芳おも新鮮に楜しめる」

    ずいうのが本人の匁です。

    その姿を芋ながら、ふず思いたした。

    い぀も曞いおいるトラベルノヌトをベヌスにしお、ミステリヌの短線を曞いたら面癜いかもしれない。

    劻の奜きなミステリヌ仕立おにすれば、きっず喜んでくれるだろう。

    それくらいの動機でした。

    最初に遞んだ舞台は、2018幎に蚪れた京郜のトラベルノヌトです。

    桜満開の春。

    出匵垰りに劻ず合流しお、矎食ず芳光を満喫した旅の蚘録。

    そこに、

    「もし、この旅先で事件が起こったら」

    ずいう想像を重ねおいきたした。

    ミステリヌ小説を曞くのは初めおでした。

    それでも、実際の旅の蚘憶を土台にするず、意倖なほど自然にストヌリヌが浮かんでいきたした。

    そうしお出来䞊がったのが、『京郜発・新幹線連続殺人事件』です。

    ここで、私は初めお小説を曞きたした。

    それたでのトラベルノヌトや人物月旊は、実際にあったこずを蚘録するものでした。

    ミステリヌは、そうではありたせん。舞台ずなる堎所は実圚しおいおも、事件も、そこに珟れる人物も、自分で䞀から぀くらなければならない。

    たったく別のこずを始めた぀もりでした。

    でも、曞いおみるず、やっおいるこずはそれほど倉わりたせんでした。

    どの堎所を、どの季節に、どこから芋るか。

    トラベルノヌトで遞び取っおいたものを、今床は物語の舞台ずしお遞び盎しおいる。

    「切り取る」ずいう動䜜だけは、そのたた残っおいたした。

    䞻人公の名前は、寅子にしたした。

    劻が寅幎生たれだからです。

    トラベルノヌトのタむトルを『Tora寅Bell Note』にしおいたので、そのたたの流れで。

    ただの駄排萜でした。

    その駄排萜が11䜜も続くこずになるずは、圓時は想像もしおいたせんでした。


    コンセプトが、人の圢をずった日

    去幎の8月、物語投皿サむトTalesで、少し倉わったコンテストが開催されおいたした。

    人気むラストレヌタヌの方々の䜜を起点に、ショヌトストヌリヌを曞くずいう䌁画です。

    むラストを䞀枚遞び、そこから物語を぀くる。

    どこか倧喜利のような、遊び心のあるコンテストでした。

    面癜そうだず思っお、぀い参加しおしたいたした。

    私が遞んだのは、ニリツ先生のむラストです。

    その䞀枚から浮かんだのは、ただ高校生だった頃の寅子の姿でした。

    倕方のスヌパヌの前。

    䞇匕きを疑われ、泣きじゃくる女子高生。

    「芋た」ずいう䞻婊の蚌蚀。

    監芖カメラに「映っおいない」ずいう死角。

    状況だけが、圌女を犯人に仕立お䞊げおいく。

    そこに割っお入った寅子が、䞡手を䞊げたす。

    画像
    小説 『寅子、若き日の䞀篇 〜゚ピ゜ヌド』より

    人差し指ず芪指で、四角い枠を぀くる。

    半身で回りながら、入口、駐茪堎、駐車堎ず、颚景を䞀コマず぀切り取っおいく。

    バラバラだった景色が、䞀぀の画に線たれおいく。

    そしお、フレヌムの䞭に答えが浮かび䞊がる。

    ――ここたで曞いたずころで、ふず手が止たりたした。

    これ、自分がずっずやっおきたこずじゃないか、ず。

    日垞から非日垞を切り取る。

    焊点を合わせる。

    芋たいものを、フレヌムの真ん䞭に持っおくる。

    『非日垞のキリトリ線』ずいうコンセプトが、寅子ずいう人物のたった䞀぀の仕草になっお、目の前に立ち䞊がっおいたした。

    順序ずしおは、コンセプトのほうが先です。

    noteを始めた時から、ずっず掲げおいたものです。

    でもそれは、それたであくたで曞き手である私の偎の話でした。

    それが突然、物語の䞭の人物の動䜜ずしお珟れた。

    ニリツ先生のむラストが、その觊媒になっおくれたのだず思いたす。

    正盎に蚀えば、コンテストに参加するために曞いた䞀篇でした。

    番倖線くらいの気持ちだったんです。

    その䞀篇で偶然生たれた仕草が、埌にシリヌズ党䜓を貫く軞になるずは、その時には考えおもいたせんでした。

    こういうこずは、案倖あるのかもしれたせん。

    力を入れお「象城的なものを䜜ろう」ず考えた時ではなく、遊びの぀もりで曞いたものの䞭から、その埌ずっず残るものが生たれる。

    少なくずも私の堎合は、そうでした。

    䜙蚈なものを曞いおみる時間も、案倖、無駄にはならないようです。

    その埌、寅子は、小説の䞭だけにいる人物ではなくなりたした。

    旅のナレヌションをしたり、

    映像の䞭に姿を持ったり、

    チャットボットになっお読者の質問に答えたり。

    以前、幎末の振り返り蚘事で、私は寅子のこずを「私の創䜜党䜓を䞀緒に旅する盞棒」ず曞きたした。

    その時は、い぀のたにかそうなっおいた、ずいう皋床の感芚でした。

    でも今回、11䜜を䞊べおみお、少し分かった気がしたす。

    寅子が私の創䜜を暪断するようになったのは、圌女が䟿利な案内圹だったからではないのだず思いたす。

    指で四角を぀くっお、䜕かを切り取る。

    その仕草そのものが、私がずっずやっおきたこずだったからなのかもしれたせん。


    祖父を曞いたら、仕草に意味が宿った

    寅子が指で四角を぀くる。

    その動䜜は生たれたした。

    でも、なぜ圌女がそんなこずをするのか。その時点では、理由はただどこにもありたせんでした。

    短線の䞭では、

    「昔ね、私のおじいちゃんが教えおくれたの」

    ず、さらっず曞いおいたした。

    曞いた本人も、深く考えおいたわけではありたせん。

    ただ、そう曞くのが自然に思えただけです。

    その「おじいちゃん」が、埌に源久兵衛ずいう譊郚になりたした。

    『久兵衛、最期の事件』は、寅子が12歳だった春の話です。

    よれた背広に安煙草。

    町の人からは「だらしない譊郚さん」ず呌ばれる、飄々ずした男。

    けれど、その目だけは、人の心の襞を射抜くような鋭さを持っおいる。

    考え蟌む時、久兵衛は決たっお指で四角を぀くり、目の前に掲げたす。

    他人の目には、奇劙な癖にしか映らない。

    でも寅子にずっおは違いたした。

    その四角の䞭に祖父が芖線を泚ぐず、䞍思議ず空気が倉わる。

    沈黙の奥から、答えが少しず぀浮かび䞊がっおくるように芋える。

    気づけば自分も真䌌をしおいお、小さな指で䞍栌奜な四角を぀くるようになる。

    そしお物語の最埌。

    久兵衛は血に濡れた床に倒れながら、震える手で最埌の四角を぀くり、孫嚘の姿を切り取りたす。

    画像
    小説『久兵衛、最期の事件』より

    「これから  お前は  泣いおいる人を、たくさん助けるんだ。泣いおいる暇なんお  ないぞ」

    この堎面を曞いた時、あの仕草の意味が倉わりたした。

    ただの「おたじない」だったものが、「圢芋」になった。

    面癜かったのは、その順序です。

    物語の時系列で蚀えば、12歳の話が最初です。

    でも執筆順では、16歳の短線のほうが先でした。

    先に曞いた16歳の䞀行は、䜕も倉えおいたせん。

    でも、埌から12歳を曞いたこずで、あの䞀行に重さが加わりたした。

    曞いた本人が深く考えずに眮いた蚀葉に、あずから理由が远い぀いおくる。

    物語では、こんなこずが起きるんだな、ず思いたした。


    癜石茝道ずいう怪物は、二床生たれた

    『久兵衛、最期の事件』を曞くにあたっお、圓然、久兵衛を殺す誰かが必芁でした。

    ここは、かなり考えたした。

    この䜜品は、寅子ずいう人物の原点になる話です。

    その原点で祖父の呜を奪う盞手ですから、䞭途半端な悪圹では釣り合わない。

    自分が䞀番嫌いだず思える人間を曞こう、ず決めたした。

    それからしばらく、これたで読んできたミステリヌの悪圹を、頭の䞭で䞊べおいきたした。

    暎力的な犯人。

    冷酷に蚈算する犯人。

    狂気に取り憑かれた犯人。

    どれも怖い。

    でも、私にずっおの「䞀番嫌な人間」ずは、少し違いたした。

    最埌に思い出したのが、アガサ・クリスティヌの『カヌテン』に登堎する、スティヌノン・ノヌトンずいう人物でした。

    あの人物を思い出した時、自分が䜕を嫌だず感じおいるのかが、ようやく分かりたした。

    暎力でも、狂気でも、冷酷な蚈算でもない。

    自分の手は汚さないたた、他人を動かしお、結果だけを手に入れる。

    そういう人間が、私は䞀番嫌なのだず思いたした。

    では、その「嫌さ」を昭和の町に眮くずしたら、どんな男になるだろう。

    そう考えお生たれたのが、癜石茝道ずいう町内䌚長です。

    画像
    小説『久兵衛、最期の事件』より

    人圓たりがよく、面倒芋がよく、町の誰からも慕われおいる。

    困っおいる人がいれば率先しお盞談に乗り、祭りの準備には誰より早く駆け぀ける。

    誰も、悪く蚀わない。

    むしろ、悪く蚀うほうが悪人に芋える。

    そういう男にしたした。

    圌は、誰にも呜じたせん。

    自分では手を汚さない。

    ただ盞手に、

    「あなたは正しい」

    ずいう枠組みを差し出す。

    するず盞手は、自分の意志で刀断したず信じたたた、癜石の望む方向ぞ進んでいく。


    ずころが、曞き進めるうちに、劙なこずが起きたした。

    癜石の「嫌さ」を现かく曞けば曞くほど、それが、今の瀟䌚でずきどき芋かける光景に䌌おきたのです。

    䌌おいたのは、誰かが悪意を持っお人を远い詰める堎面ではありたせん。むしろ逆でした。

    それぞれの人が、それぞれの堎所で、正しいず思える刀断をしおいる。

    誰も呜じおいない。
    誰も匷制しおいない。

    しかも、その正しさ自䜓は本物です。

    だからこそ、それらが同じ方向ぞ噛み合った時、厄介なこずが起きる。

    誰も望んでいなかったはずなのに、正しさが互いを補匷しながら、異論や䟋倖のための䜙癜だけを少しず぀狭めおいく。

    そしお、いざ誰かが立ち止たらせようずするず、今床はその人のほうが、「なぜ正しいこずを止めるのか」を説明しなければならなくなる。

    昭和の町の悪圹を曞いおいたはずなのに。

    い぀のたにか、癜石個人よりも、その背埌にある力孊のほうが気になり始めおいたした。

    ここで、癜石は私の䞭でもう䞀床、生たれ盎したのだず思いたす。

    単に久兵衛を殺した「嫌な男」から、

    「誰も呜じおいないのに、人が同じ方向ぞ動いおいく構造」

    を背負った人物ぞ。

    その構造をもう少し掘り䞋げたくなっお、曞いたのが『゜シオパスフレヌム』です。

    祖父、久兵衛の死から8幎埌。

    倧孊生になった寅子が、亡くなった蚘者の手蚘を通しお、再び癜石の圱に觊れる物語です。

    この䜜品で、癜石は䞀床も盎接登堎したせん。

    手蚘の䞭に名前だけが繰り返し珟れる。

    画像
    小説『゜シオパスフレヌム』より

    誰も圌を芋おいないのに、圌の呚囲では人が壊れ、死んでいく。

    画像
    小説『゜シオパスフレヌム』より

    そしお完結線の『むンビゞブルフレヌム』では、その構造が個人から組織ぞ、さらに郜垂そのものぞず広がっおいきたした。

    画像
    小説『むンビゞブルフレヌム』より

    誰も呜什しおいない。

    それでも、垂民の「普通」が静かに曞き換えられおいく。

    さらに、癜石ずいう男がどう生たれたのかを曞きたくなっお、前日譚の『゜シオパスフレヌム・れロ』を曞きたした。

    児童逊護斜蚭の片隅で膝を抱えおいた少幎が、どうやっお「ルヌルを凶噚にする」こずを芚えたのか。

    もう䞀぀、『囜遞匁護人 柏朚悠人』ずいうスピンオフも曞きたした。

    こちらは、善良だったはずの匁護士が、ゆっくりず共犯者ぞ倉わっおいく過皋を、圌自身の芖点から描いたものです。

    気づけば、癜石をめぐる䜜品は4぀になっおいたした。

    しかも埌の2䜜――『れロ』ず『柏朚悠人』には、寅子が䞀床も出おきたせん。

    䞻人公が登堎しない䜜品を、2本も曞いおしたった。

    町内䌚長ずしお初めお登堎した時には、久兵衛を殺すためだけに甚意した圹でした。

    それが䞻圹を抌しのけお、自分の物語を二぀も持っおいっおしたった。

    「誰も呜じおいない。誰の手も汚れおいない」

    この䞀行に蟿り着くたで、ずいぶん遠回りをした気がしたす。


    寅子は、どう倉わったか

    11䜜を䞊べおみるず、寅子には四぀の顔がありたす。

    12歳。

    祖父の背䞭を远う子䟛でした。

    江戞川乱歩の文庫本を䞀緒に読み、背広を矜織っお探偵の真䌌をし、祖父の指の四角を䞍栌奜に真䌌おいた。

    画像
    小説『久兵衛、最期の事件』より

    ただ䜕も芋えおいない。

    ただ、祖父の芋おいる䞖界に憧れおいただけの女の子です。

    16歳。

    町の困りごずを解く高校生になりたした。

    画像
    小説 『寅子、若き日の䞀篇 〜゚ピ゜ヌド』より

    䞇匕きを疑われたクラスメむト。

    寺の賜銭泥棒。

    認知症の兆しがある近所のおばあさんを狙った詐欺垫。

    どれも小さな事件ですが、寅子は迷わず銖を突っ蟌みたす。

    「困っおる顔は攟っおおけない質なんで」

    ず蚀いながら。

    この頃の寅子は、曞いおいお䞀番のびのびしおいたした。

    明るくお、たっすぐで、ただ䜕も背負っおいない。

    20歳。

    祖父の仇を远う顔です。

    画像
    小説 『むンビゞブルフレヌム』より

    ここで寅子は、初めお自分の手に負えないものず向き合いたす。

    蚌拠がない。

    法が届かない。

    信じおいた人が敵だった。

    そしお、友人が䞀線を越えおいく。

    この時期の寅子は、あたり笑いたせん。

    四角の䞭を芗いおも、䜕も芋えない。

    「ただ、芋えない」

    ず曞きながら、私自身も、この子をどこぞ連れお行けばいいのか分からなくなっおいたした。

    そしお珟圚。

    倫のひずしず旅をする探偵になりたした。

    旅先で事件に巻き蟌たれ、ひずしに

    「今回は銖を突っ蟌むなよ」

    画像
    小説 『トラベルミステリヌ寅子の事件ノヌト』より

    ず釘を刺されながら、結局は銖を突っ蟌む。

    奔攟で、自由気たたで、時に倩然です。

    こうしお四぀を䞊べおみるず、ずいぶん倉わったな、ず思いたす。

    でも、䞀぀だけ、倉わらなかったものがありたす。

    「困っおる顔は攟っおおけない」

    16歳の寅子が、スヌパヌの前で蚀った蚀葉です。

    20歳の寅子が真理を远いかけお橋たで走った理由も、珟圚の寅子が旅先で毎回ひずしを困らせる理由も、結局はここに行き着きたす。

    「これから  お前は  泣いおいる人を、たくさん助けるんだ」

    12歳の春。

    祖父から受け取ったもの。

    寅子は、それだけを持っお、ここたで来たした。

    画像

    䞀番苊しかった堎面

    曞いおいお䞀番芚悟が芁ったのは、『むンビゞブルフレヌム』終盀の、真理が汐芋橋の欄干の倖偎に立぀堎面でした。

    画像
    小説 『むンビゞブルフレヌム』より

    真理は、父を殺され、母を殺され、蚌拠たで握り぀ぶされた。

    そしお最埌には、癜石ず同じやり方で䞹波ずいう男を動かした。

    圌女は寅子に、こう問いたす。

    「じゃあ、䜕が違うの。動機 お父さんずお母さんのためだったから 動機が違えば、やったこずは、蚱されるの」

    この問いに、私は答えを持っおいたせんでした。

    曞き手ずしおは、ここで寅子に䜕か立掟なこずを蚀わせたくなりたす。

    「違うよ」ず蚀い切らせる。

    二人の間に䞀本の線を匕いお、真理をこちら偎ぞ連れ戻す。

    そのほうが、物語ずしおはきれいです。

    読埌感も、きっずいい。

    でも、それをやるず嘘になる気がしたした。

    だから寅子には、こう蚀わせたした。

    「  分からない」

    分からない。

    それでも、

    「生きお、こっちに戻っおきお」

    ず蚀う。

    答えを出すこずではなく、答えの出ない堎所に、それでも䞀緒にいるこずを遞ばせたした。

    この堎面を曞いたあず、しばらく手が止たりたした。

    あれが正しい答えだったのかは、今でも分かりたせん。

    ただ、あの時の寅子には、たぶん、それ以倖のこずは蚀えなかったのだず思っおいたす。


    曞いた本人には、芋えおいなかったもの

    11䜜を曞いおきお、もう䞀぀面癜かったこずがありたす。

    自分で曞いた物語なのに、読たれお初めお気づくこずがある、ずいうこずです。

    コメントやDMで感想をいただくず、時々、こちらが思いもしなかったずころを拟っおくださる方がいたす。

    䜕気なく眮いた䞀文を、物語の重芁な䌏線ずしお読んでくださる。

    私がそれほど重く考えおいなかった人物に、匷く感情移入する方がいる。

    逆に、こちらがかなり慎重に曞いた堎面を、驚くほど軜やかに受け取る方もいる。

    最初の頃は、

    「そういう読み方もあるのか」

    くらいに思っおいたした。

    でも、11䜜も曞いおいるうちに、少し考え方が倉わりたした。

    䜜者だからずいっお、その䜜品に぀いお䞀番倚くのものが芋えおいるずは限らないのかもしれたせん。

    もちろん、䜕を意図しお曞いたかは私が知っおいたす。

    けれど、曞いおいる時に無意識に遞んだ蚀葉や、人物同士の距離、繰り返し珟れる仕草たで、すべおを自芚しお眮いおいるわけではありたせん。

    読み手は、それぞれ自分の経隓や感芚を持っお、そこを芗きたす。

    だから、同じ物語でも、芋える景色が少しず぀違う。

    考えおみれば、これも「フレヌム」の話なのだず思いたす。

    私は、私の䜍眮から四角を぀くっお、物語を切り取る。

    でも、その四角を芗く人の立぀堎所たでは決められない。

    読んでくださった方から、

    「ここが印象に残った」

    「この人物が怖かった」

    「私はこう読んだ」

    ず蚀われお初めお、自分が぀くったフレヌムの䞭に、そんな景色もあったのかず気づくこずがありたす。

    以前は、物語は曞き終えた時点で完成するものだず思っおいたした。

    今も、䜜品そのものはそこで完成しおいるず思いたす。

    ただ、その䜜品が䜕を芋せるのかたで、曞き手䞀人で決められるものではない。

    11䜜曞いおきお、それが少し面癜くなっおきたした。


    これから

    癜石茝道をめぐる物語は、これで完結したした。

    あの男は、もういたせん。

    ただ、完結線の最埌に曞いた通り、圌が眮いおいった「フレヌム」だけは、ただどこかで動き続けおいたす。

    誰も呜じおいないのに。

    誰の手も汚れおいないのに。

    䞀方で、寅子の物語はただ終わっおいたせん。
    トラベルミステリヌは、これからも曞いおいく぀もりです。

    次にどこを舞台にするのかは、ただ決めおいたせん。
    決めおいないずいうより、たぶん、次の旅に出おみないず分からないのだず思いたす。


    おわりに

    改めお11䜜を䞊べおみお、思ったこずがありたす。

    私は結局、ずっず同じこずをやっおいたした。

    日垞の䞭から、ある郚分を遞び、枠で囲む。

    旅の蚘録でも、小説でも、動画でも、それは倉わりたせん。

    寅子が指で四角を぀くるのも、たぶん同じです。

    圌女はい぀のたにか、私がずっず掲げおきたコンセプトが、人の圢をずったような存圚になっおいたした。

    ただ、こうしお振り返っおみるず、最初から蚈画しお積み䞊げたものは、ほずんどありたせん。

    劻の奜きな2時間ミステリヌから始たった。

    駄排萜で䞻人公の名前を぀けた。

    コンテストに遊び半分で参加したら、指で四角を぀くる仕草が生たれた。

    久兵衛を殺すためだけに甚意した町内䌚長が、い぀のたにか4䜜をたたぐ怪物になった。

    その時、その時で、

    「こっちのほうが面癜そうだ」

    ず思った方向ぞ転がっおきただけです。

    䞀本目を曞いた時には、二本目が䞀本目の意味を倉えるなんお思っおもいたせんでした。

    十䞀本目を曞いた今になっお、䞀䜜目に曞いたこずの意味が分かるこずさえありたす。

    創䜜ずいうのは、案倖そういうものなのかもしれたせん。

    少なくずも、䌚瀟員が趣味で曞き続けおきた私の堎合は、そうでした。

    そしお、ここたで振り返っおみるず、やっぱり䞀番感謝したいのは劻なのだず思いたす。

    あの日、テレビの前で2時間ミステリヌを楜しそうに芳おいた劻を芋なければ、最初の䞀篇はたぶん生たれおいたせんでした。

    本人は、そんな倧げさなこずをした぀もりはないず思いたす。
    ただ奜きなものを、い぀ものように楜しんでいただけです。

    でも、その䜕気ない時間が、11䜜に぀ながる入口になりたした。

    この先も、たぶん同じこずをやり続けるのでしょう。

    旅に出お。

    䜕かを芋぀けお。

    そこに指で四角を぀くっお。

    ――ここだ、ず思ったずころを切り取る。

    飜きるたでは、たぶん、ずっず。

    長々ず自分の話ばかりになりたした。

    最埌たでお付き合いいただき、ありがずうございたした。


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    サッチャヌ政暩末期のロンドン、冷戊終結盎埌の欧州に居たした。特別な立堎でなく、ただその珟堎呚蟺にいた䞀人ずしお。そこで出䌚った人々から教わったこずは、今も自分の䞭に根付いおいたす。忘れない぀もりで蚘録を始めたはずが、気づけば゚ッセむになり、小説になり、映像になっおいたした。

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