
研究者の視点からテーマを解説|「仕事・育児をしながら創作をする理由」アンケート&インタビュー参加者募集!
私は会社員をしながら、子育てをしながら、社会学の在野研究をしています。
そう言うと「すごいですね」と言われることが多いのですが、私にとってはむしろ、この三つが切り離せないために、自ずと一緒にやっているという感覚があります(そして、いつもタスク詰め詰めで後悔しがち......周囲でサポートしてくださる方々に感謝です)。
前回の「仕事・育児をしながら創作をする理由」記事では、私自身の創作体験や、創作をやめてしまった後輩の話をしました。
「なぜ人は忙しくても作るのか」この問いは、私にとって個人的な疑問であると同時に、と学術的に向き合いたいテーマです。
今回は、研究者の立場から同じテーマを掘り下げていきます。
資本主義の中で、うつは「個人の問題」になっていく

研究のタイトルは、"Throwing Away the 'Salaried Worker' Life: Capitalism, Depression, and Creativity as Resistance"——日本語にすると「会社員人生を脱ぎ去る:資本主義、うつ、そして抵抗としての創作」です。Throw awayは通常「捨てる」と訳されますが、一時的に脱皮するというニュアンスで「脱ぎ去る」と表現しました。
現代の資本主義社会は、効率・生産性・パフォーマンスという価値観を前面に押し出しています。その中でうつや燃え尽きは、「社会の構造的な問題」としてではなく、「個人のメンタルの弱さ」として経験されてしまいます。
特に日本・韓国・中国といった東アジアでは、教育・就職・社会的上昇をめぐる競争圧力が激しく、うつや不安障害の統計的な増加が続いています。
私自身、躁鬱病の診断を受けている当事者でもあります。だからこそ、これを「個人の問題」として片付けたくない、という気持ちが研究の根っこにあります。
「ブルシット・ジョブ」と、やり過ごしの技法

この研究は、三つの理論的な柱を持っています。
一つ目は、Mark Fisherの「資本主義リアリズム」(2009)。資本主義に対して息苦しさはみんながうっすらと感じながらも、それに代わるオルタナティブを想像することすら難しくなっている状態を描いた本です。うつは、その中で個人化・正常化されていく。
二つ目は、David Graeberの「ブルシット・ジョブ」(2018)。多くの、特にホワイトカラー職に従事する人々が、自分の仕事を「社会的に無意味だ」と感じながら働いているという議論です。アンケートで「仕事に無意味さを感じますか?」と聞いているのも、この視点からです。
三つ目は、Michel de Certeauの「日常的実践」(1990)。支配的な構造の中で、人々は小さな「やり過ごし」の技法を編み出して生きている、という考え方です。創作活動は、その一つかもしれない、という仮説があります。
※各著者に関しては末尾に資料をまとめています。
創作は「静かな抵抗」である、という仮説

この研究が注目するのは、プロのアーティストではありません。仕事や育児のかたわら、小さく創作を続けている人たちです。
彼・彼女らにとって創作は、単なる趣味や自己表現以上のものとして機能しているのではないか——私はそう考えています。
具体的には、こういう仮説を持っています。
創作は、心理社会的なコーピング戦略である
資本主義的な価値体系から、一時的に距離を置く手段である
日常の中で、自分の主体性を取り戻す行為である
心理的な危機の中で、自己を再構築する実践である
まとめると創作は、普通の会社員生活の中に埋め込まれた「静かな抵抗」である、という見立てです。
「創作万歳」な結論にはしたくない
ただ、私はこの研究を「創作すれば救われる」という話にするつもりはありません。
創作にもつらさがある。上を目指したくなるからこそ苦しくなる。時間がないから追い詰められる。それでもやめられない、その複雑な感情を、丁寧に描きたいと思っています。
インタビューで聞きたいのは、きれいな話だけじゃない。
しんどさも、葛藤も、全部ひっくるめた「なぜ作り続けるのか」という問いへの答えです。
アンケート&インタビュー参加の流れ
アンケートに回答する(インタビュー同意についてもここで聞きます)
インタビュー参加に同意された方に、日程調整リンクをメールでお送りします
オンラインでインタビュー(約1時間)
後日、原稿をメールでご確認いただきます(参加後30日以内に撤回可)
成果は論文・note・書籍等で発表予定です。
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インタビュー参加に同意された方に、日程調整リンクをメールでお送りします
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後日、原稿をメールでご確認いただきます(参加後30日以内に撤回可)
成果は論文・note・書籍等で発表予定です。
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吉岡 詩織 | tapi 野良研究者(社会学・会社員で子育て中)
野良猫のような研究者。専門は社会学だが社会学者は苦手。気候変動、福祉国家、会社、ヴィーガニズム、「産む/産まない」「飼う/飼わない」「食べる/食べない」「働く/働かない」などの葛藤を、日常と研究のあいだで考えている。とにかく色んなことに興味がある。
tapiの由来は、中高の友達Kくんが作った「学年一の秀才よしおか、その手には天王寺のたぴおか」というラップ。
下記は吉岡さんの別プロジェクト
「子どもを持つ理由・持たない理由」インタビューも参加募集中
