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地域活動やローカルメディアを「補助金」で始めるメリットとその限界

    佐賀県基山町を活動拠点に、2027年のサイト開設10周年を目指しているローカルウェブメディア『大字基山』は、編集長のみ・一人体制の運営ではありません。

    私たちはサイト開設当初から、複数名による編集部を結成し、活動してきました。
    その背景の一つに、当時大いに助けられた「補助金制度」があります。

    地元の補助金を活用した『大字基山』開設

    2017年9月開設の『大字基山』の運営母体は、まちづくり団体(任意団体)として始まりました。

    任意団体とは

    任意団体とは、営利を目的としない複数名の有志(個人)が集まって結成し、目的をもって名簿、規約、会則などを作り、自発的に活動するグループです。

    • 自治会

    • 各種住民団体

    • ボランティア団体(法人格のない任意団体)

    • まちづくり活動を行う団体・組織(学生団体を含む)  など

    例えば小学校や中学校のPTAは、法人格のない任意団体。意外と身近にある存在なのです。
    私たちの普段の暮らしは、さまざまな地域の任意団体によって支えられています。

    「まちづくり」を支援する補助金制度

    佐賀県基山町には、こういった任意団体の「まちづくり」に関わる活動を経済的に支援する制度があります。

    補助事業の目的
    町内で、自発性に基づき、自立的、継続的に地域社会に役立つ活動を行う営利を目的としない「まちづくり組織」を支援し、「協働のまちづくり」を進めることを目的としています。

    まちづくり基金事業補助金とは(基山町HPより)

    他にもさまざまな自治体で、このように地域活性化や地域貢献活動を行う住民グループを対象に、活動を支援する補助金が用意されています。

    基山町の場合は、法人格の有無を問わず、最大年間30万円まで。
    スタートアップ支援として3年間の期限付きですが、特例で延長される場合もあります。

    個人が地域でチャレンジしたい非営利の取り組みがあり、複数人の賛同者がいて、その活動が公的に評価されて金銭的に支援してもらえる制度があるなら、まず最初にチーム結成を目指す価値はあります。

    補助金を活用するメリット

    ウェブメディア『大字基山』はこの制度を活用して、個人が経済的な負担をすることなく、サイトを立ち上げることができました。

    プロジェクトの発起人である私自身はPRプランナーとしての実務経験から、メディア運営に必要なマーケティング、広報、コンテンツ制作、取材調整やライティングなどの知識がありました。

    でも、サイト開設・運用に関する知識はゼロ!

    そして意欲だけは高かったので、「サイトの根幹を担う設計・開設はプロに頼みたい」と考えました。
    その後、地域でのご縁がつながり、誠実かつ実直なプロにサイト開設・管理をお任せできて今に繋がっているのは、活動初期にサポートしてもらえた「補助金」のおかげです。

    取材活動という視点では、地元行政とつながりが構築できることも、大きなメリットになりました。補助金の目的が「協働のまちづくり」だからこそ、例えば活動告知を行政にサポートしてもらえたりします。

    行政の「お墨付き」がもらえると、地域住民の理解も得られやすく、活動しやすくなります。

    補助金を活用する「限界」

    そうして地域でのボランティア活動を長く続けていると、いずれ直面する課題があります。
    活動の継続にまつわる、あれこれです。
    その多くは「資金」があれば解決できるのですが、まちづくりに関する補助金の多くは、非営利の活動が対象です。

    補助金が使えない項目例(多くの場合)

    • 所属するメンバーの人件費(作業報酬、作業手当)には使えません。

    • 所属するメンバーの交通費には使えません。

    • 事務所等の団体の運営経費には使えません。

    • 他の補助金と併用できません。

    補助金は、「税金」です。
    その使い道は厳格に細部にわたって決められており、収支を含む報告書の作成は、慣れていない人だと大変です。
    そして、いずれは「自立自走」の活動継続が求められています。
    任意団体の「自立自走」とは、究極的には補助金に頼らない、自主財源化です。
    補助金活用について「デメリット」は言い過ぎかもしれませんが、この自主財源化に移行するタイミングで活用の限界に気づき、戸惑うことが出てくるかもしれません。

    私たちがサイト開設2年で補助金を諦めた理由

    立ち上げ当初からウェブメディア『大字基山』は、「自立自走」を目指さねばと考えていました。
    ボランティア活動の多くは「寄付金」という理解者のサポートによって活動を続けるものですが、ウェブメディアなら「広告収入」という選択肢があったからです。

    広告収入による「自立自走」を目指した結果

    地域メディアは、社会福祉活動と違って「地域になくても困らない」活動です。
    だから、メンバー個人の経済的・時間的負担が大きいだろうウェブメディア運営の責任者として、「人件費」とは言わないまでも活動にかかる実費、「交通費」くらいは払いたいと思っていました。

    サイト開設から3年目。
    行政の補助金を活用しながら、少しずつ地域での認知度を獲得し始めたタイミングで、地域事業者に広告出稿を募る「スポンサー制度」を導入しました。

    その結果、活動を応援いただける民間事業者の方々とつながりが生まれ、年間の補助金とほぼ同額の予算を集めることができました。
    目指していた「自立自走」への第一歩です。

    労働力は0円が大前提!ボランティアの「経費」

    だから、補助金を申請する必要はなくなりました。
    そして申請しても、多くのケースで「対象外」となることに気づきました。

    補助金には「収益納付(しゅうえきのうふ)」というルールがあります。

    「補助金+自己収入」の合計が「事業にかかった総経費」を上回った場合(つまり利益が出た場合)、その利益のうち補助金が寄与した割合分を返還するルールです。

    そして、この「事業にかかった経費」に構成員の実費・交通費を含まないのが、ボランティア活動の基本的な考え方です。自分たちの活動への対価を差し引くことは、認められません。それが、非営利という活動です。

    そのため、せっかく得た自己収入が、計算上はそのまま「使い道の決まっていない余ったお金」として扱われてしまったのです。

    稼げば稼ぐほど、補助金が減る?まちづくり活動のジレンマ

    例えば、以下のような地域密着ウェブメディアのケースを想定してみましょう。

    総支出
    50万円(うち、サーバー代・保守管理代などの対象経費20万円 + メンバーへの人件費・交通費30万円)
    総収入
    50万円(うち、補助金20万円 + 広告収入などの自己収入30万円)

    交通費くらいは自分たちで稼ぐ!という意気込み

    運営者の感覚では「収入50万 − 支出50万 = 0円(収支トントン)」です。
    しかし、行政の計算(補助金精算)ではこうなります。

    補助金の計算式
    収入(補助金20万 + 自己収入30万)− 認められる経費(20万) = 30万円の剰余(利益)

    ボランティアは「人件費0円」が当たり前

    この場合の自己収入「30万円」は、行政の目には「経費(20万)を引いても余ったお金」と映ります。
    だから「お金が余っているなら、税金(補助金)を出す必要はありませんでしたね。その分は返してください」というロジックで返還を求められるのです。

    この場合、30万円の余剰とされ、補助金20万円全額を返還します。

    結果、
    自己収入30万 − 認められる経費20万=10万円(使い道は自由!)

    ボランティア活動の「自立自走」達成

    無償ボランティアによるメディア運営の限界

    そうして私たちは、行政の補助金制度が認める「経費」の定義と、実際の運営に必要と考える「経費」、そのズレに直面することになりました。
    活動の自立自走を推奨されていたのに、と少なからずショックを受けました。

    でも、今なら分かります。
    私たちは自主財源化を目指した時点で、「無償ボランディア」であることを諦めていたのです。
    そして、「自分たちの労働力に対価を払いたい」と願い、自力で活動費を稼ぐことに挑戦し、成功しました。

    補助金は「補助輪」。
    補助金が合わなくなったのは、私たちの活動が「制度」を追い越して成長してしまった証です。

    さらに、時間の経過とともに、創設メンバーの多くは次の人生のステップへ進むため、編集部を卒業していきました。
    在留を懇願したこともありましたが、そもそも退会は自由。
    共働きが当たり前の時代、子育て現役世代にボランティアを続ける余裕はありません。

    取材・執筆・記事公開を繰り返す日々の中で、ボランティアで地域メディアは続けられないと、自ら悟りました。

    持続可能な地域メディアを目指すなら

    地域メディアが補助金という「安全網」の中で活動を続ける限り、運営に関わってくれるメンバーに正当な報酬どころかわずかな謝礼金を支払うことさえ、制度上できません。

    ボランティアの状態:
    自分の労働力を「0円」とみなすことで、補助金ルールの中に収まる。

    事業化の状態:
    自分の労働力に「対価」を支払おうとすると、それが行政ルール上は「利益」とみなされ、補助金が削られる。

    労働力0円で継続すべき?継続できる?

    発起人の私が地域密着のウェブメディア運営を通して目指したのは、住民が困った時に情報が得られる「暮らしの情報インフラ」になることでした。
    初心を大切に、本気で取り組むなら、「活動の継続」を第一に考える必要があります。

    補助金に頼らない、自立した事業化を目指すしかない。

    編集部として自立自走の一歩を踏み出した活動3年目から、代表である私自身も、今後の「働き方」をどうしていくのか迫られることになったのでした。


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    ライター・PR・編集業。「ローカル情報は暮らしのインフラ」を掲げ、人口1.7万人の町で浸透率95%のWebメディアを黒字運営中。年間PV35万(町の人口の約20倍)。補助金なしで自立自走するメディア運用術や、伝わる文脈設計のノウハウを公開しています。俳号:杢いう子

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