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構造が限界をこえた先に見えるもの② - 光琳の構造はなぜ生命を持つのか

    数あるnoteの中からおいでいただきありがとうございます。

    今回はミケランジェロ
    「システィーナ礼拝堂」VR作品と
    尾形光琳
    「杜若図屏風」の
    共通点
    「完全な構造が起こす現象・異変」について
    まとめてみたいと思います。


    連載(3本立て)

    今回は長くなりそうなので
    3本立てにしてみました。

    前回のおさらい

    1,
    構造が限界をこえた先に見えるもの①
    複製から声は聞こえるのか
    印刷博物館 VRシスティーナ礼拝堂

    のタイトルで書いております。

    ミケランジェロの
    システィーナ礼拝堂

    VRデジタル作品に
    アウラは宿るのか、

    そして
    ミケランジェロの完全な構造は
    内部に収まりきらない力が
    限界を超えて動き出す

    という内容で書かせていただきました。

    少し時間が空いてしまいましたが
    連載として引き続き、

    今回は

    2,
    光琳の構造はなぜ生命を持つのか
    について

    として、
    (なんとか)まとめていきたいと思います。


    鑑賞レポートは
    すでにそれぞれアップさせていただいております。

    下記のリンク記事は
    杜若図屏風について
    鑑賞のみを書かせていただいた
    レポートになります。
    よろしければ下記もぜひ
    ご覧くださいませ

    ↓杜若図屏風@
    根津美術館

    ↓1回目のシスティーナ礼拝堂の
    鑑賞レポートです
    システィーナ礼拝堂VR@
    印刷博物館



    前回の続き・課題


    前回はシスティーナ礼拝堂の
    ミケランジェロ作
    最後の審判をもとに記事を書かせていただき

    最後に

    極限まで強い構造の中では、
    他にどんなことが起こるのか。

    これを2回目(今回)の

    尾形光琳の
    杜若図屏風(今度は本物)
    で書いてみたいと思います、
    とお伝えしたところまででした。

    尾形光琳 杜若図屏風

    尾形光琳の杜若図屏風は
    根津美術館所蔵の
    国宝の図屏風です。

    私も何度も鑑賞している
    付き合いが割と長い図屏風なのですが

    一見、
    金も花も
    日本的で美しいので

    「デザイン的で反復される構図が秀逸な
    美しいお花の日本屏風」
    という印象でした。

    ただ、鑑賞を続けるうちに
    杜若が
    じくじく、ぶくぶくと
    溢れるように
    膨張していく

    という現象が起こり
    体験談をレポートに
    書かせていただいています。
    https://note.com/killamaru/n/n3d71b9775421


    なぜ、うごめきだすのか

    私はずっと不思議でした。

    なぜ、この屏風は
    こんなにも「整っている」のに
    とまっていられないのだろうか。

    なぜ、完璧に配置されているはずなのに、
    内側からじくじくと
    生命が滲み出してくるのだろう。

    その時、思い出したのが
    ミケランジェロの
    システィーナ礼拝堂でした。

    前回の記事でも書いた通り
    印刷博物館で見た
    VRシスティーナ礼拝堂では

    ミケランジェロの人体が
    完璧な構造でありながら
    その内部に収まりきらない力を抱え込み
    画面の中で
    動きだすように感じられました。

    人体は捻れ、
    引っ張られ、
    伸ばされ、
    静止できなくなる。

    そして
    光琳の杜若にも
    私はどこか
    似たものを感じたのです。

    つまり、
    前回の最後に取り上げた
    「極限まで強い構造」というものが
    杜若図屏風
    にもあって
    その結果、
    最後の審判とは違った現象が
    こちらでも起こっている。
    ということなのです。


    完璧すぎる絵がだす音


    すごく感覚的なお話になってしまうのですが。

    前回の根津美術館レビューでも取り上げた
    尾形光琳筆 夏草図屏風 
    (サイトに入ってすぐに見ることができます。
    サムネは杜若ですので
    紛らわしいご説明に
    なってしまってすみません。)

    本当に構図が完成されている絵を見ると
    「ぱちっ」と音がすることがあります。

    あるべきものが、
    あるべき場所へ収まった音です。

    光琳の《夏草図屏風》には、
    その音がありました。

    でも《杜若図屏風》は少し違う

    たしかに完璧な構図なのに
    図屏風が出す音は
    ハマる音の「ぱちっ」ではないのです。

    画像
    こんなにも美しい構図なのに、
    ぱちっとハマっているはずなのに、
    だす音は、違う

    むしろ
    「どろっ」
    「ぶくっ」

    そんな、
    内側から何かが膨れ上がるような音がするのです。

    ウィキペディアのページでは
    杜若図をもっと大きく見ることができます

    こちらをみても
    ぱちっと構図がハマる音というより
    どろっを超えて
    バキっ!という
    杜若が屏風を
    つき破ろうとしている音が
    聞こえてきます。

    さらに目の前で見ると。
    怖いです。
    もはや人間の力では
    とめることのできない
    まるで自然の脅威のように
    うちにはらむ力が
    増殖し沸騰するように
    溢れ出てくるのです。

    完璧な構図のさきにあるもの


    システィーナ礼拝堂では、
    完璧すぎる人体構造が
    画面の中で
    静止できなくなる
    瞬間を感じました。

    ミケランジェロも、光琳も、
    当然ながら本人たちは
    「制御できなくなる状態」を
    描こうとしていたわけでは
    ないのだと思います。
    (私には少なくともそうは見えません。)

    ただ、あまりにも真剣に
    完璧な構造を追い詰めてしまった。

    完璧すぎた。

    極限まで追い詰められた構造は
    もう構造の中に収まりきらない。
    その結果
    画面は静止したままでいられなくなる。

    私には
    それが生命として立ち上がる瞬間に見えました。

    矛盾のようですが
    完璧なら完璧なほど
    絵は絵であることを
    超え始める。

    ミケランジェロの人体は捻れ、
    光琳の杜若は生命を増殖させる。


    だから私は
    杜若図屏風を単なる装飾の美として
    見ることができなくなりました。

    光琳が描いたのは
    杜若という花そのものだけでは
    ないのかもしれません。

    反復される花。
    同じように見える茎。
    絶妙に計算された間。

    それらは一見すると静止した構図です。

    でも、
    極限まで強い構造がゆえに
    その内部にあるリズムが動き始める。

    まるで春になって、
    植物が土の中から押し出るように。
    まさに、ばきっという音とともに。

    屏風という限られた空間の中で
    本来なら止まっているはずの生命が
    こちら側へ向かってくる。

    私はそれを「生命が描かれている」のではなく
    「生命が発生してしまっている」ように感じました。

    光琳は自然を写したのではなく
    自然が持っている力そのものを
    構造の中に閉じ込めた、のかもしれません。



    ーー
    わたしごとですが
    こちらの三本連載、
    この二本目のアップが大変遅れたにもかかわらず
    お読みいただきました方へ
    心から、ありがとうございました。
    ーー




    記事をまとめてみました。
    ご興味のある記事がありましたらぜひお読みください!

    はじめに01 -絵の声を聴く、アート鑑賞について- 好きな画家さん一覧
    https://note.com/killamaru/n/n0cb504116a87
    書き始めた経緯やこのNoteの説明など

    はじめに02 -アートの声を聴く鑑賞について-
    https://note.com/killamaru/n/n3b42879699f8
    「はじめに」の続きですが、私のNoteの中では、♡率が高くて、ありがたいです。

    はじめに03 -審美眼は何年で身につくもの?
    https://note.com/killamaru/n/ne9792bc439fe

    <ドイツ旅2026>
    ドイツから戻ってきました -2026.01.13 近況報告-
    https://note.com/killamaru/n/nce677f79afbc

    デューラーと話したくて家に2回おしかけた話 - デューラーズハウス -
    https://note.com/killamaru/n/n681100d72660

    フェルメール報告会 - ドイツ旅で鑑賞した絵のレポート -
    https://note.com/killamaru/n/n9509726b7b11

    フェルメールに隠された法則 - 嫌いだったフェルメールが好きになれた秘密 - [ディープ]
    https://note.com/killamaru/n/nab3fbbd02386

    <若冲>
    若冲からはじめて呼ばれた話 -泉屋博古館東京-
    https://note.com/killamaru/n/n79a61287feed

    若冲は、今日も私を呼ぶかしら - 三井記念美術館「円山応挙」展 -
    https://note.com/killamaru/n/na07051e46676

    若冲は、もう1人の天才にためらう、の話 - 東京藝大美術館 -相国寺展
    https://note.com/killamaru/n/n85b940e93ef9

    <ゴッホ>
    [ディープ]ゴッホのひまわりって、おいしいの? - 西洋美術館 ロンドン・ナショナル・ギャラリー展
    https://note.com/killamaru/n/n69330619f156

    「あなたはどんな鑑賞タイプ?」と「ゴッホの死相」について ゴッホ展 -東京都美術館-
    https://note.com/killamaru/n/na3e315c32ca0

    ゴッホ美術館(アムステルダム)に行ってきた -美術館レビュー(絵多め)-
    https://note.com/killamaru/n/n4e65dea66a63

    おいしそうな絵はここにも(ピエール・ボナール) -「ひまわり」異変の後日談-
    https://note.com/killamaru/n/n32920ae6c2de

    <美術展>
    ブラックホールを作りだせる画家 -仙厓展@出光美術館- [ディープ]
    https://note.com/killamaru/n/n576fe4a903b7

    絵から音がしない理由 -ユトリロ展(SOMPO美術館)-
    https://note.com/killamaru/n/nd086f4b57077

    定家にきゅんきゅん -国宝熊野御幸記と藤原定家展レポート(三井記念美術館)-
    https://note.com/killamaru/n/ne15a8591b9e4

    伊勢物語展 -根津美術館- 岩佐又兵衛に感じるもの
    https://note.com/killamaru/n/n522358cdf891

    僧侶の背中には、実は何があったのか -特別展「運慶 祈りの空間―興福寺北円堂」-
    https://note.com/killamaru/n/nb87fb034c08e

    マチュピチュの展示じゃない?!けど、興味深い -マチュピチュ展-
    https://note.com/killamaru/n/n5dd9d6de4666



    <岡本太郎とウォーホル>
    岡本太郎の絵をめくってバックヤードをのぞいた話[ディープ] - ウォーホルの続き -
    https://note.com/killamaru/n/ndd21dc5e0255

    アンディ・ウォーホル「SERIAL PORTRAITS」展(ルイヴィトン) - 岡本太郎のために力をお借りします -
    https://note.com/killamaru/n/ndd1a969b04ba

    <ランキング>
    [異変の起こった美術展ランキング]2025年行った美術展の中から)
    https://note.com/killamaru/n/n853c88ce272c



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    絵の声を聴いたり、描かれていない世界を感じたり。ちょっと不思議な美術鑑賞を綴っています。 絵の見え方は人それぞれ。あなたにも、あなただけの鑑賞能力があるはず。 いつかこの楽しさを一冊の本にして、もっと多くの人に届けたい。 記事は随時推敲中。すべて自分の言葉で書いています。

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