
AIに聞く前に、「何が問題なのか?」を考えたいー解くべき問題を見つける、3つの考え方
何が問題なのか?
「売上を伸ばす方法を教えて」
「人手不足を解消したい」
「問い合わせ対応を効率化したい」
AIに相談すると、さまざまな案が返ってきます。自分では思いつかなかった切り口もあり、私自身、日々助けられています。

ただ、解決策を聞くときに、気をつけたいことがあります。
質問をした時点で、私たちはすでに「何が問題なのか」を決めているということです。
前回は、「料理がなかなか出てこないレストラン」を題材に、問題の捉え方について書きました。
その中で、こんなことをお伝えしました。
どの段階の解決策も、それぞれの問題に対しては筋が通っています。 違ったのは、解決策ではなく、解こうとしていた問題の方でした。
「料理が遅い」という不満を掘り下げると、「一緒に食事を始められない」という困りごとが見えてくる。そこで初めて、同じテーブルの料理を揃えて提供する、という手が見えてきました。

では、私たちは普段の仕事で、どうすれば解くべき問題を見つけられるのでしょうか。
今回は、私が大切にしたい考え方を、3つに整理してみます。

考え方① 困りごとを、具体的な場面にする
たとえば、ある会社で「人が足りない」という声が上がっていたとします。採用を増やす、外注する、AIで自動化する。いろいろな対策が考えられます。
でも、その前に知りたいことがあります。
誰が、どんな仕事で、いつ困っているのか。 その結果、何ができなくなっているのか。
聞いてみると、「月末の請求業務に時間がかかり、営業担当者が顧客への提案に時間を使えない」という話かもしれません。
ここまで具体的になると、調べる対象が見えてきます。請求書の作成に時間がかかるのか、元の情報を集めるのが大変なのか、確認や修正が何度も発生するのか。

「人が足りない」は、問題を考え始めるための大切な手がかりです。
そこから具体的な場面を知ることで、ようやく取り組むことを考えられるのだと思います。
考え方② 事実と、自分の解釈を分ける
次に大切にしたいのは、わかっていることと、そう考えていることを分けることです。
「請求業務に毎月3日かかっている」 「担当者が残業している」
これらは、記録などで確認できる事実です。
一方で、以下のようなことは、その事実に対する解釈や仮説です。
「担当者の作業が遅いからだ」「人を増やせば解決する」

調べてみると、担当者は他部署からの情報を待っていたり、入力内容の不備を何度も確認していたりするかもしれません。その場合、担当者の作業だけを速くしても、全体はあまり変わらない可能性があります。
自分の説明が筋が通っていることと、実際にそうなっていることは、分けて考えたい。
納得できる説明が見つかった後も、事実に照らして見直す必要があるのだと思います。
③ 何が変われば、良くなったと言えるかを決める
もう一つは、目指す状態を明らかにすることです。
「人手不足を解消したい」という話でも、目指す状態はさまざまです。
残業を減らしたいのか。 受注を断らずに済むようにしたいのか。 営業担当者が顧客への提案に集中できるようにしたいのか。
目指す状態が違えば、優先する取り組みも、成果の確かめ方も変わります。

たとえば、請求書の作成時間が短くなっても、空いた時間が別の事務作業で埋まれば、提案の時間は増えないかもしれません。
だからこそ、「何を導入するか」とあわせて、「誰の、どんな状態を変えたいか」を考えたいと思います。
問題を考えるところから、AIと一緒に
ここまでの過程にも、AIは活用できると思っています。
たとえば、こんな聞き方です。
社内で「人が足りない」という声が出ています。すぐに解決策を出す前に、状況を整理したいです。確認すべきことを、一問ずつ聞いてください。
状況を伝えた後には、こう聞いてもいいでしょう。
今の話を、確認できている事実と、私の推測に分けてください。ほかに考えられる原因と、それを確かめる方法も挙げてください。

AIとの対話で見方を広げ、現場で話を聞き、記録を確かめる。得られた情報を整理して、また考える。この往復が大切だと思います。

私はこれまで、新規事業やプロダクト開発、事業運営に携わってきました。中小企業診断士としても、相談にすぐ答えを出すだけでなく、何に取り組むべきかを一緒に考えたいと思っています。
そして、実行した結果を確かめ、必要なら問題の捉え方から見直したい。
AIでできることが増えるほど、限られた人や時間を何に使うかが問われます。
次にAIへ解決策を聞くときは、一度、こう問いかけてみてください。
「私はいま、何を問題だと決めているのだろう?」

その問いから始めることで、AIとの対話も、少し変わってくるかもしれません。

磯﨑翔也|中小企業診断士
経営・事業開発・AIについて、実務と学びを通じて考えたことを発信していきます。
※本記事は個人の見解であり、所属組織の公式見解ではありません。