
【ワークショップ】解くべき問題は何なのか?を考えるー料理がなかなか出てこないレストラン
何をするかを決めるうえで、私が大切にしているのが「解くべき問題は何か」を考えることです。
今回は、私が企画チームでよく取り組んでいたワークショップを一つ紹介させてください。
普段レストランで、なかなか料理が出てこないと感じる時、ありますよね?
そういう時、提供する側はどんなことを考えて、どうやって解決しようとしているのでしょうか?
ぜひ、読みながら一緒に考えてみてください。きっと何か気づきがあると思います。

第1幕 お客様からのクレーム、あなたならどうする?
ある街に、人気の洋食レストランがありました。
料理の味には定評があり、ランチタイムには多くのお客様が訪れます。

ところが最近、こんなクレームが増えてきました。
客:「注文した料理がなかなか来ない。もう少し早く提供できないんですか?」

困った店長は、スタッフを集めて相談します。
店長:「料理が遅いという声が増えている。何とか改善したい」
ここで、あなたに質問です。

Q1. あなたがこのお店のスタッフだったら、どんな解決策を提案しますか?
第2幕 よくよく調べてみると?
いかがだったでしょうか?
多くの方が、まずは以下のような解決策を思い浮かべたのではないでしょうか。
・厨房のスタッフを増やす。
・調理の手順を見直して、スピードを上げる。
・席数を減らす。
ただ、この店長は、すぐに対策を打つのではなく、まず事実を調べてみることにしました。
わかったのは、次のようなことです。

料理が出てくるまでの時間は、変わっていない。それなのに、クレームだけが増えている。
もし第1幕で「厨房のメンバーを増員する」と決めていたら、どうなっていたでしょうか。
第3幕 本当の問題は?
さらに店長に話を聞くと、3か月前に店内を改装していたことがわかりました。
以前はオープンキッチンで、お客様の席から料理を作っている様子が見えていました。

しかし改装後は、厨房が壁で仕切られ、調理の様子が見えなくなりました。
お客様からすれば、以前は料理を待っている間も、シェフが調理している姿が見えていました。
客:「今、作ってくれているんだな」
ところが改装後は、注文してから何の変化もありません。
客:「注文はちゃんと通っているのかな?」
客:「いつまで待てばいいんだろう?」

つまり、不満の原因は、実際の待ち時間だけではなく、待っている間の不安や不透明さにもあったのです。
第4幕 解決策の結果は?
厨房が見えなくなり、待ち時間が不安になった。
そう考えた店長は、次の改善策を実行しました。
・注文時に「10分ほどかかります」と伝える
・スタッフが料理の進み具合を案内する
・厨房の様子をモニターに映す
ところが1か月後。クレームは、ほとんど減っていませんでした。
客:「料理がまだ来ないんですけど」
客:「ちょっと遅くないですか?」
相変わらず、お客様から同じ言葉が聞こえてきます。

ここで、あなたに2つ目の質問です。

Q2. 待ち時間の不安を解消したはずなのに、なぜ問題は解決しなかったのでしょうか?
第5幕 よくよく見てみると?
店長は、クレームが発生したテーブルを詳しく調べることにしました。
すると、興味深い傾向が見つかりました。
クレームの発生状況(架空の調査結果)
・1人で来店したお客様:料理が届くまで平均10分、クレームは少ない
・2人以上で来店したお客様:最初の1皿は平均7分、全員分が揃うのは平均14分、クレームは多い

最初の料理が早く届いているはずのグループ客の方が、不満を感じている。それはなぜでしょうか。
スタッフが実際のテーブルを観察すると、ある光景に気づきました。
2人で訪れたお客様のうち、1人には料理が届いています。しかし、もう1人にはまだ届いていません。
料理が届いた人は、相手を気遣って食べ始められずにいます。やがて料理が冷め始めます。
そして、料理を待っている人がスタッフに声をかけました。

客:「すみません、まだ料理が来ないんですけど」
ここで初めて、店長は気づきました。
お客様が不満に感じていたのは、待ち時間そのものではなく、一緒に食事を始められないことだったのです。
さらに調べると、3か月前の改装の際に、厨房のオペレーションも変わっていました。
以前はテーブル単位で料理を揃えて提供していましたが、新しい仕組みでは、調理が終わった料理から順番に提供するようになっていたのです。
その結果、全体の平均提供時間は変わらないまま、同じテーブルの料理が届くタイミングに大きな差が生まれていました。

第6幕 本当に解くべき問題は何か?
あなたに3つ目(最後)の質問です。

Q3. このレストランは、何を改善するべきでしょうか?
この問題に対する解決策は、厨房の増員でも、調理スピードの改善でも、モニターの設置でもありません。
例えば、同じテーブルの料理をできるだけ揃えて提供するという、オペレーションの見直しです。
ただし、ここでさらに考えるべきことがあります。
1人で訪れるお客様は、料理が早く来ることを望んでいるかもしれません。一方、グループ客は、料理が揃って届くことを重視するかもしれません。
つまり、すべてのお客様に同じ解決策を適用すればよいとも限らないのです。

振り返り 問題の見え方は、3回変わった
この物語の中だけで、問題の見え方は3回変わりました。
最初は「料理が遅い」。
だから、厨房の増員やスピードアップが思い浮かびました。
次は「待ち時間が不安」。
だから、時間の案内やモニターの設置を行いました。
そして最後に、「一緒に食事を始められない」。
ここで初めて、揃えて提供するという手が見えてきました。

どの段階の解決策も、それぞれの問題に対しては筋が通っています。
違ったのは、解決策ではなく、解こうとしていた問題の方でした。
私がこのワークショップで持ち帰ってほしいと思っていることは、3つです
・現状見えているのは、問題そのものではなく、問題の手がかりである
・事実を集めるたびに、問題の定義を疑い直す
・「誰にとっての問題か」によって、正しい解決策は変わる
これは、AI時代にこそ大切になる考え方だと思っています。
AIに「料理を早く出す方法は?」と聞けば、AIは早く出す方法をいくつも提案してくれるでしょう。
しかし、そもそも「早く出すこと」が解くべき問題なのかどうかは、教えてくれません。
解決策をつくるスピードが上がるほど、どの問題を解くのかを決める力の価値は、むしろ高まっていくのではないでしょうか。
おわりに
いかがでしたでしょうか?
「問題は何なのか?」を考えることの難しさと、その奥深さを少しでも感じていただけたら嬉しいです。
Q1〜Q3で、あなたはどんな答えを書いたでしょうか。よければコメントで教えてください!
今後のnoteでは、こうした問題をどのように捉え、どう考えていけばよいのかについても、もう少し深く書いていけたらと思っています。
もし「こんなテーマを読みたい」というご要望があれば、コメントや質問箱で教えてもらえると嬉しいです。感想もぜひお待ちしています。
今回のお話は、私のバイブルともいえる名著『ライト、ついてますか ― 問題発見の人間学』を、私なりにアレンジしたものです。
問題は、解くよりも見つける方がずっと難しく、ずっと面白い。そんなことを、軽やかな物語で教えてくれる一冊です。
ご興味があれば、ぜひ手に取ってみてください。

磯﨑翔也|中小企業診断士
経営・事業開発・AIについて、実務と学びを通じて考えたことを発信していきます。
Gembally(ゲンバリー)
公式サイト:gembally.com
参考資料
・ドナルド・C・ゴース、ジェラルド・M・ワインバーグ著、木村泉訳『ライト、ついてますか ― 問題発見の人間学』共立出版、1987年
https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784320023680
(原著:Donald C. Gause, Gerald M. Weinberg "Are Your Lights On?: How to Figure Out What the Problem Really Is")
※本記事に登場するレストランと調査結果は、ワークショップ用の架空の設定です。
※本記事は個人の見解であり、所属組織の公式見解ではありません。