雪庇

雪庇(せっぴ、英: snow cornice(あるいはcornice))は、雪のかぶった山の尾根などに、風が一方方向に吹き、風下方向に庇(ひさし)のように迫り出してできる雪の塊。吹きだまりの一部である[1]。また、屋根などに積もった状態の雪(冠雪)が庇状にせり出しているものも雪庇と言う。
雪氷学の雪庇とは異なり、道路管理などでは成因を問わず「庇のように見える雪(庇状の雪)」をすべて雪庇と称している[2]。
山岳と雪庇
[編集]山では風が強いところで雪が吹き払われ、それが尾根など風速が急減する場所で積雪し吹きだまりとなるが、雪庇はその一部で風下側に張り出すように形成される[1][3][4]。雪庇の形は地形、降雪量、風の強さ等により様々である[3]。
吹きだまりや雪庇は、雪荷重の急増や雪同士の弱い結合をもたらし雪崩の原因となる[4]。
なお、いわゆる巨大雪庇と庇状にできた小さな雪庇とでは形状や性質が異なるとされる[3]。例えば北アルプスの大日岳山頂に発達する巨大雪庇は、遠方からは日射による陰の影響で大きな庇のように見えるが、実際には鉛直に近い状態になっていることが多い[3]。
冠雪と雪庇
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落下すると時にはケガや死亡事故につながるだけでなく、トラックのキャビンや荷室を押しつぶすこともあり非常に危険。
物体に積もった雪(冠雪)が水平方向に広がって庇状になったものも雪庇と呼ばれる[5]。クリープによる緩やかな塑性変形とされ、空気を多く含む新雪ほどこの性質は強い[5]。
多雪地域の建築物の屋根形状は、設備機器の屋上への設置、雪処理作業の軽減、落雪トラブルの回避などのため陸屋根であることが多い[6][注釈 1]。しかし、この種の屋根形状では屋根の軒先に雪庇が発生することも多く、軒先への局所荷重の増加、崩落による人身事故、設備機器の破損などの原因となることから、雪庇を抑制する技術の開発が進められている[6]。
漢字表記
[編集]漢字では雪庇と表記するが、「雪」は常用漢字(教育漢字)であるのに対して「庇」は常用漢字ではないため、常用漢字でない漢字を使用しない場では「庇」のみをひらがなにした「雪ぴ」の表記が用いられることがある。雪庇を知らない人が「雪ぴ」の表記を目にし、「ゆきぴ」と誤読され、可愛い若者言葉かと思われた例もあったという[8][9]。
季語
[編集]季語としての雪庇(せっぴ)は、冬の季語(晩冬の季語)[10]。分類は天文[11]。季語としての「雪庇」は、山の急な傾斜面にできる雪の庇(ひさし)を指す[11]。季語「雪」の数ある子季語の一つである[11]。
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- 1 2 竹内 政夫「吹雪とその対策 (3) 吹きだまりの発生機構と形」『雪氷』第62巻第1号、日本雪氷学会、2000年、1-34頁。
- ↑ 竹内 政夫、細川 和彦「道路における雪庇と冠雪」『雪氷研究大会講演要旨集』、日本雪氷学会、2018年。
- 1 2 3 4 川田 邦夫「山岳地の吹雪・吹き溜まり・雪庇」『日本雪氷学会全国大会講演予稿集』第72巻第1号、日本雪氷学会、2009年、131-136頁。
- 1 2 「スキー場を対象にした雪崩危険度推定 (PDF)」『防災科学技術研究所』。2026年2月14日閲覧。
- 1 2 竹内 政夫「冠雪からできる雪庇」『日本雪氷学会全国大会講演予稿集』、日本雪氷学会、2005年。
- 1 2 堤 拓哉「陸屋根に形成される雪庇と気象要素との関係に関する研究」『日本雪工学会誌』第21巻第5号、日本雪工学会、2005年。
- ↑ 山田信博「積雪寒冷地における無落雪屋根の普及状況に関する研究 (PDF)」。2026年2月14日閲覧。
- ↑ 「一見かわいい?若者言葉風の「雪ぴ」 死亡事故にもつながる危険な存在だった」『J-CASTニュース』2021年1月7日。2023年1月29日閲覧。
- ↑ ハフポスト日本版編集部「「雪ぴ」の読み方と意味は?大雪の後、屋根からの落下に注意して」『ハフポスト』2021年1月8日。2023年1月29日閲覧。
- ↑ “「雪」(ゆき)晩冬”. 季語と歳時記-きごさい歳時記. 季語と歳時記の会 (2011年3月14日). 2018年2月22日閲覧。
- 1 2 3 日外アソシエーツ『季語・季題辞典』