ファンク・メタル
ファンク・メタル(英: Funk Metal)とは、ファンク・ロックおよびヘヴィメタルのサブジャンル[1]。ヘヴィメタルの要素にファンク調のベースラインやシンコペーションの効いたリズムを融合させた音楽を指す[1]。1980年代半ばにレッド・ホット・チリ・ペッパーズやフィッシュボーンがファンクの要素を色濃く打ち出したファンク・メタルのバンドとして台頭し、その後ファンク・メタルはスラッシュメタル寄りのサウンドへと傾倒していった[1]。「スラッシュ・ファンク(thrash-funk)」とも呼ばれる[2]。
歴史
[編集]1970年代後半にアメリカのファンク・ロックバンドであるマザーズ・ファイネストがより力強いサウンドを求め始め、楽曲「Hard Rock Lover」の発表を経て1981年に発表したアルバム『Iron Age』でヘヴィ・ロックとファンクを本格的に融合させ、ファンク・メタルの原点とも言える要素を確立した[3]。

1984年にレッド・ホット・チリ・ペッパーズが発表したセルフタイトルのデビュー・アルバムがファンク・メタルの最初の作品であると位置づけられている[4]。レッド・ホット・チリ・ペッパーズの他にはフェイス・ノー・モア、フィッシュボーンがファンク・メタルの先駆として台頭した[5]。また、リヴィング・カラーはローリング・ストーン誌に「黒人ファンク・メタルの先駆者」として紹介されている[6]。
1980年代半ばにスラッシュメタルをルーツとして結成したプライマスもファンク・メタルに位置づけられることが多いが、バンドのリーダー兼ベーシストであるレス・クレイプールは「どこへ行ってもファンク・メタルという枠でひとまとめにされてしまう。人はどうしても何かで分類したがるものなんだろうね」と語っている[7][8]。
1989年にフェイス・ノー・モアの楽曲「エピック」、リヴィング・カラーの楽曲「カルト・オブ・パーソナリティー」がヒット[9][10][11]。一方この頃、レッド・ホット・チリ・ペッパーズのアンソニー・キーディスはフェイス・ノー・モアの新しいボーカリストであるマイク・パットンが自身のスタイルを盗用していると非難した[12]。
1991年にファンク・メタルは批評的にも商業的にも絶頂期を迎え、レッド・ホット・チリ・ペッパーズの『ブラッド・シュガー・セックス・マジック』、プライマスの『セイリング・ザ・シーズ・オブ・チーズ』、マイク・パットンの所属するミスター・バングルのセルフタイトルのデビュー・アルバムなどが音楽メディアから高い評価を獲得した[13]。
1990年代にメインストリームで成功を収めたレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンやバケットヘッドもファンク・メタルに関連付けられており、バケットヘッドが参加したバンド「プラクシス」が1992年に発表したアルバム『トランスミューテイション~ミューテイティス・ミュータンディス』もファンク・メタルの作品として知られている[14][15][16]。

1990年代後半になるとインキュバス、シュガー・レイ、311といったバンドがファンク・メタルに分類される[17]。ニュー・メタルに分類されるコーンやポップ・パンクに分類されるゼブラヘッドなどのバンドもファンク・メタルの要素を取り入れており、コーンのボーカルであるジョナサン・デイヴィスは「俺たちは常に自分たちをファンク・バンドだと思ってきた。あのファンキーでグルーヴィーなサウンドさ。ニュー・メタルなんてクソみたいな言葉が出てきたとき、俺はずっとそれに抵抗してきたんだ」と語り、ギタリストであるジェームズ・シェイファーは2014年に「Kornはファンク・メタル・バンドとして始まり、今もそうあり続けている」と語っている[18][19][20]。パパ・ローチもまた1994年から1997年にかけてのインディーズ時代の作品についてはファンク・メタルを自認している[21]。
1980年代から1990年代初頭にかけてファンク・メタルのバンドとして知られるようになったレッド・ホット・チリ・ペッパーズ、フェイス・ノー・モア、ミスター・バングルなどといったバンドは、1990年代後半に入るとそれまでのサウンドを捨て、他のスタイルへと移行していった。レッド・ホット・チリ・ペッパーズは1999年のアルバム『カリフォルニケイション』を境に、よりメインストリーム向けのポップ・ロックの方向性へと舵を切った[22]。ワシントン・ポスト紙は、『ワン・ホット・ミニット』から『カリフォルニケイション』までの4年間の空白期間に、コーンやリンプ・ビズキットといったバンドがレッド・ホット・チリ・ペッパーズの「ファンク/メタル/ラップの融合」というスタイルをさらに発展させていったと批評した[23]。
2000年代以降ファンク・メタルに分類されるバンドにはスーパーグループであるプロフェッツ・オブ・レイジが挙げられ、エイリアン・アント・ファームは2001年にマイケル・ジャクソンの「スムーズ・クリミナル」をファンク・メタル調にカバーし、大ヒットを記録した[24][25][26]。
批評
[編集]イギリスの音楽ジャーナリストであるJoel McIverは著書『Know Your Enemy: The Story of Rage Against the Machine』でファンク・メタルを「1980年代後半にベーシストがスラップ奏法を用いるロック・バンドに対して適用された、少々不格好な名称である」と評した[27]。
ニュージーランド・マッセイ大学メディア研究准教授のRoy Shukerは、著書『Understanding Popular Music』でファンク・メタルについて以下のように評している[28]。
ロックとポップという『古典的』な区別は、様々な形の『オルタナティヴ』音楽を考慮に入れると困難に直面する。これは、ジャンルをあまりに厳格な類型に当てはめようとすることの難しさを示している。例えば、『スラッシュ・ファンク』と呼ばれる奔放な音楽ジャンルをどこに位置づければよいのだろうか。これは1970年代のファンク、パンク・ロック、ラップ、カリフォルニアのサーフ・カルチャー、スケートボード・カルチャー、ヒッピー・カルチャーを融合させたもので、報道によれば1990年にサンフランシスコのクラブ・シーンを席巻したとされる。 — Roy Shuker、Understanding Popular Music[28]
Shukerは2005年の著書『Popular Music: The Key Concepts』でもファンク・メタルについて触れ、「初期のメタル・スタイルよりも構成が緩やかで、リード・ギターよりもベース・ギターに重きを置いている」と評している[29]。
Viceは2016年にファンク・メタルについて「ほとんど忘れ去られ、時に酷評されるジャンル」と評した[17]。
アメリカのヘヴィメタル・ハードロック系音楽サイト「Blabbermouth.net」は、2022年にファンク・メタルについて「とてつもなく面白く、後に登場した多くのジャンル混合型サブジャンルよりもはるかに独創的」と評し、「言うまでもなく、ファンク・メタルは長く続くようには作られておらず、その後の数年間ではグランジやニュー・メタルの方がはるかに大きな商業的成功を収めた」と付け加えた[30]。
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- 1 2 3 “Funk Metal Music Style Overview” (英語). AllMusic. 2026年7月29日閲覧。
- ↑ “Lawrence Journal-World - Google News Archive Search”. news.google.com. 2026年7月29日閲覧。
- ↑ (英語) Mother's Finest: Iron Age Tracks & Reviews | AllMusic 2026年7月29日閲覧。
- ↑ Haire, Chris (2018年4月2日). “Content marketing is destroying journalism” (英語). Charleston City Paper. 2026年7月29日閲覧。
- ↑ “10 funk metal bands that time forgot” (英語). Louder (2021年6月29日). 2026年7月29日閲覧。
- ↑ “Living Colour: Collideoscope : Music Reviews”. Rolling Stone. 2009年4月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2026年7月29日閲覧。
- ↑ “New Rage: The Funky from Guitar Player, August 1991”. www.ram.org. 2026年7月29日閲覧。
- ↑ “Primus Set To Release New Album, 'Green Naugahyde,' This September”. Guitar World (英語). 2011年6月6日. 2017年6月30日時点のオリジナルよりアーカイブ. 2026年7月29日閲覧.
- ↑ Blabbermouth (2008年1月19日). “MIKE PATTON Doesn't Rule Out FAITH NO MORE Reunion” (英語). BLABBERMOUTH.NET. 2026年7月29日閲覧。
- ↑ Haire, Chris (2018年4月2日). “Content marketing is destroying journalism” (英語). Charleston City Paper. 2026年7月29日閲覧。
- ↑ “Living Colour — Biography, Discography, Albums & Expert Reviews” (英語). AllMusic. 2026年7月29日閲覧。
- ↑ Pervan, Melek Nur (2021年7月9日). “The Story Of The Rivalry Between Anthony Kiedis And Faith No More’s Mike Patton” (英語). Rock Celebrities. 2026年7月29日閲覧。
- ↑ Jenkins, Mark (1991年10月27日). “CALIFORNIA'S FUNK-METALISTS, PUTTING ON AIRS”. The Washington Post (アメリカ英語). ISSN 0190-8286. 2026年7月29日閲覧.
- ↑ “Rage Against the Machine — Biography, Discography, Albums & Expert Reviews” (英語). AllMusic. 2026年7月29日閲覧。
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- ↑ “Praxis - Profanation: Preparation For a Coming Darkness - Blurt Magazine”. Blurt Magazine (アメリカ英語). 2014年12月21日時点のオリジナルよりアーカイブ. 2026年7月29日閲覧.
- 1 2 Lyons, Patrick (2016年12月10日). “How Bad Brains Created the Best Funk Metal Album 30 Years Ago” (英語). VICE. 2026年7月29日閲覧。
- ↑ “Zebrahead — Biography, Discography, Albums & Expert Reviews” (英語). AllMusic. 2026年7月29日閲覧。
- ↑ Hill, John (2015年3月26日). “Rank Your Records: Korn's Jonathan Davis Rates the Band's 11 Albums” (英語). VICE. 2026年7月29日閲覧。
- ↑ “In The 239: Korn to bring funk-metal sound to Fort Rock” (英語). www.naplesnews.com. 2026年7月29日閲覧。
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- ↑ Camp, Zoe. “Hear Prophets of Rage's Bruising New Song "Strength in Numbers"” (英語). Revolver. 2026年7月29日閲覧。
- ↑ “Alien Ant Farm — Biography, Discography, Albums & Expert Reviews” (英語). AllMusic. 2026年7月29日閲覧。
- ↑ McIver, Joel (2014). Know Your Enemy: The Story of Rage Against the Machine. Omnibus Press. ISBN 9781783230341
- 1 2 Shuker, Roy (1994). Understanding Popular Music. Routledge. p. 6. ISBN 9780415107228 2022年7月1日閲覧。
- ↑ Shuker, Roy (1994). Understanding Popular Music. Routledge. p. 6. ISBN 9780415107228 2022年7月1日閲覧。
- ↑ “Head First” (英語). BLABBERMOUTH.NET (2022年5月24日). 2026年7月29日閲覧。