
自然と売れる仕組みづくり “マーケティング” #18
企業は、目的を持って存在しています。
経営学者であるピーター・ドラッカー氏は、その目的を「顧客の創造」だと定義しました。
そして、その目的を果たすための最も重要な機能が
マーケティングであるとも述べています。
対して、日本ではよく、「マーケティングは難しい」、「よく分からない」と言われます。
背景には、アメリカと比べて10年以上遅れているとも言われる歴史や、
概念が複雑に語られすぎていることがあるのかもしれません。
現代では、「マーケティング」という言葉を知らない人は、ほとんどいないと思います。
一方で、マーケティングとは何かと問われると答えるのに悩む人は少なくありません。
それだけマーケティングは範囲が広く、捉えにくい分野なのだと思います。

■ 本質は、驚くほどシンプル
マーケティングを市場調査のことだと捉える人も少なくありません。
しかし、情報は、集めるだけでは戦略になりません。
ここから環境を分析し、課題を定め、一連のプロセスをつなげてこそ、戦略と施策に一貫性が生まれ、打ち手への確信につながるのだと思います。
ピーター・ドラッカー氏は、「マーケティングの理想は、販売を不要にすることである。」と説いています。
これは「営業はいらない」という意味ではありません。
顧客を理解し、顧客にとって価値のある製品やサービスを提供する。
そして、無理に売り込まなくても、自然に選ばれる状態をつくる。
そういう意味だと私は捉えています。
マーケティングの父とも呼ばれるフィリップ・コトラーも、「ニーズに応えて利益を上げること」と、非常にシンプルに表現しています。
結局、マーケティングの本質は、それほど複雑ではありません。

■ マーケティングは「3つのプロセス」で考える
マーケティングを実際の活動に落とし込むと、大きく3つに整理できます。
1.環境を理解する
まず、市場・顧客・競合・自社を理解する。
そのために、PEST分析、3C分析、SWOT分析などのフレームワークを使います。
重要なのは、フレームワークを使うこと自体ではありません。
そこから何を見い出すのかという視点となります。
2.誰に価値を届けるのかを決める
次にSTPです。
* Segmentation:市場を分ける
* Targeting:狙う市場を決める
* Positioning:自社の立ち位置を明確にする
ここで重要なのは、誰にとって、この製品・サービスは価値があるのかという問いです。
3.どうやって価値を届けるのかを設計する
そして4Pです。
* Product:製品
* Price:価格
* Place:流通
* Promotion:プロモーション
これらをバラバラに考えるのではなく、ストーリーとして設計します。

■ 戦略の順番は「何を、誰に、どうやって」
マーケティング戦略を考えるとき、私は次の順番を意識する様にしています。
① 何を → ② 誰に → ③ どうやって
「①何を」とは、製品やサービスそのものではなく、それを含めた提供できる自社独自の価値を意味します。
「②誰に」とは、その価値を必要としているのは誰なのかです。
広義的には、市場や業界となりますし、狭義的には個人ですし更に特定個人を想定したペルソナである場合もあります。
そして、「③どうやって」届けるのかです。
自社独自の価値を必要と望んでいただけることで、初めて付加価値(USP)が成立します。
そして、ここが戦略の核心部分になろうかと思います。
さらに、時には、③ → ② → ① と逆から考えてみることも重要です。
「この届け方なら、誰に届くのか?」
「その人に、本当に価値があるのか?」
「そもそも、自社の商品・サービスである必要があるのか?」
この往復によって、戦略の精度は高まっていきます。

■ 営業は「売る」・マーケティングは「売れる」
マーケティングと営業の違いを表現する上で、とてもシンプルで分かりやすいワードです。
営業は「売る」
マーケティングは「売れる」
もちろん、実際の境界はもっと複雑です。
それでも、マーケティングの役割を理解するには分かりやすい表現です。
マーケティングは、
* 顧客を理解する
* 商品・サービスを設計する
* 価格を決める
* 必要な人に情報を届ける
* 見込み顧客との関係を育てる
といった活動を通じて、売れやすくする状態をつくる仕事です。
BtoBマーケティングであれば、デマンドジェネレーションもその一つです。
見込み顧客を獲得し、情報提供によって関係を育て、購買につながる需要をつくる。
こうした仕組みによって、営業がゼロから顧客を探し、売り込むだけではない状態をつくることができます。
■ マーケティングの重要性とは
現在、多くの企業が直面しているのが「人材不足」です。
帝国データバンクの調査では、2024年時点で51.0%の企業が「正社員不足」と回答しています。
また、エン・ジャパンの2022年の調査では、82%の企業が「不足している部門がある」と回答してきます。
その中でも、
* 1位:営業 28%
* 2位:技術 20%
* 3位:バックオフィス 13%
となっており、営業職の人材の不足は大きな課題です。
製造業では、「人材不足」を前提に、ロボット化や自動化、デジタル化によって生産性を高める取り組みが進んでいます。
一方、営業はまだまだ人に依存した構造が残っています。
優秀な営業担当者が頑張る。
営業担当者の人脈に頼る。
営業担当者が電話し、訪問する。
しかし、人材不足が続く中で、いつまでも「人を増やせば売上が伸びる」というモデルに依存することは難しくなります。
だからこそ、営業にも「仕組み化」という発想が必要になっているのです。
■ 「人」ではなく「仕組み」で売れる状態をつくる
マーケティングによって、
「この会社の製品は、自分たちの課題を解決してくれそうだ」
「一度、話を聞いてみたい」
「この会社に相談してみよう」
という状態まで、顧客の理解や関心を高めることが目的です。
そうすることによって営業は、ゼロから関係をつくるのではなく、すでに課題を認識している顧客との感度の高い対話からスタートすることができます。
これは、営業をなくすことではありません。
営業にとって、営業が本来やるべき仕事に集中できる状態をつくることです。
実際に私たちの会社でも、現状は人の力によって営業が回っています。
しかし将来を考えれば、人材への依存は大きな課題です。
だからこそ、「人を増やして売るだけではなく、仕組みで売れる状態をつくる」ことに取り組まなければなりません。
■ マーケティングをシンプルにする
マーケティングは、確かに範囲が広く、分かりにくいものです。
だからこそ、難しく感じてしまいます。
しかし、個々の手法やフレームワークに振り回される必要はありません。
当社ではマーケティングを、「自然と売れる仕組みづくり」と定義しています。
大切なのは、誰に、何を、どうやって届けるのかを設計することによって、自然に選ばれる状態をつくる一連の流れです。
その先に、自然と売れる仕組み」が生まれる。
それこそが、マーケティングの本質なのだと思います。
これからの時代、「人を増やして売る」から、「仕組みで売れる状態をつくる」へ。
この発想への転換が、企業の成長を大きく左右していくのではないかと考えます。