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Photo bydenwa_uranai1

書斎#風まかせ文芸部


    父は、売れない物書きさんだった。
    ほんの少しだけ原稿を読んだことがある。
    正直、何を言いたいのか分からなかった。

    そんな父の書斎には、大きな木製のデスクがあり、
    両側には本棚がずらりと並んでいた。
    まるで、重厚な文筆家の部屋のようだった。

    父が鬼籍に入り、使う人がいなくなったその部屋は、どこか寂しげに見える。
    けれど、私はこの部屋が好きだ。

    机の引き出しを開けると、
    インクの匂いと、少し黄ばんだ原稿用紙の束が顔を出す。
    ペン立てには、使いかけのボールペン。
    もうインクは出ないのに、なぜか捨てられずにいる。

    癖のある筆跡が残るノートには、
    書きかけの文章が途中で止まっていた。
    「この先に、何を書こうとしてたんだろうね」
    誰に言うでもなく、つぶやいてみる。

    机の前に座ると、思っていたよりも椅子が低い。
    手を置くと、木の感触がやさしくて、
    まるで父が「ようこそ」と言っているように思えた。

    ペンを一本借りて、真っ白な紙を広げてみる。
    何も書かなくても、しばらくはそれでよかった。

    ただ、この机に座ってみたかった。
    それだけで、今日は十分だと思えた。



    #書斎
    #風まかせ文芸部

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    てみ

     
     
    書くことが好きです。映画感想文、読書感想文、短歌、小説、体験談、エッセイなど書いています。宮沢賢治、新美南吉の童話好きです。柳田國男の「遠野物語」は大好きです。初noteは、20240222です。

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