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Photo bynasigorendayo

自動#風まかせ文芸部


    小さな頃、母に連れられて行った郊外のスーパーマーケット。
    その入口に立ったとき、私は生まれて初めて「自動ドア」というものと出会った。

    扉はガラス張りで、向こう側に果物の山やカラフルなポスターが見える。
    でも、その透明な壁は、じっと私を拒むように動かない。

    「開かないよ?」
    私は母のコートの裾を引っ張った。

    「大丈夫。歩いてごらん」
    母は笑うだけで、手を伸ばそうとはしない。

    半信半疑のまま、小さな足で一歩踏み出したその瞬間、
    すうっ、とガラスが左右に割れるように滑っていく。

    「えっ!」

    たった一歩で世界が勝手に動いた。
    魔法みたいだ、と本気で思った。

    中に入っても私は振り返り、何度も何度も確認した。
    すると、次の人が近づくたびに扉はまた静かに開いていく。

    『私のためだけじゃないのか』

    子ども心に、少しだけ悔しい。
    でも、帰り道で母が言った。

    「自動ドアってね、誰にでも同じように開くんだよ。
    それが便利なんだけど、ちょっと優しすぎる気もするよね」
    その言葉が妙に胸に残った。

    今でも自動ドアの前に立つと、『開くよね』と思う自分がいる。




    #風まかせ文芸部

     
     

    てみ

     
     
    書くことが好きです。映画感想文、読書感想文、短歌、小説、体験談、エッセイなど書いています。宮沢賢治、新美南吉の童話好きです。柳田國男の「遠野物語」は大好きです。初noteは、20240222です。

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