
こころ を 準備する
今から少しさかのぼって、4月初旬。
新学期前日のこと。
いつも「学校行きたくない」とぼやく息子(小3)が、珍しく自分から学校の準備していた。
1人で黙々と持ち物を確認する息子に「あと準備するものは?」と聞いたら
「こころ。」と即答された。
こころ。
予想外の回答。一瞬、時が止まって見えた。
息子は何故かキリッとした顔をしている。
「それ一番大事なやつ!いいね!!!」
私は何だか無性に嬉しくて、バンバンと息子の背中を叩きながら、笑った。
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幼稚園年少の頃から、何かと
「ようちえんいきたくない」
「習い事行きたくない」
「学校行きたくない」
と言い、泣きながら大きくなった息子は、今年度から小学生3年生になった。
………。
え?もう3年生なの?はやい。はやすぎる。
私の頭の中の息子は、今も少し幼い。
去年だって、新学期前日は不安そうに泣いていたじゃないか。「おかあさん、一緒に確認して。」と、新学期が不安で何度も何度も荷物を確認したっけ。
息子は人前に立つのが嫌いで、自分の気持ちを皆に言うのが苦手で、次の日の事を想像しては不安で泣いた。小1~小2の頃はそんな毎日だった。
「こころの準備が大切だよ」
「明日のイメージトレーニングしよう」
「失敗しても良い。今は練習してる途中なの」
こんな言葉をかけてもやっぱり息子は泣くし、いつも優しい言葉をかけられるほど私の器は大きいワケでも無く、私は時々キレた。ああ、また怒って台無しにしてしまった…。
だから「私が声をかけても大して効果は得られない。」そう思った。お手上げた。息子は筋金入りの心配性だ。困ったな。まじで困った。
困ったから、息子に聞いてみることにした。
「何が不安なのか」
「何が一番イヤなのか」
「何が楽しいか」
「何なら出来そうか」
最初は「わからない」と答えていた息子。でも質問を変えていくうちに「それなら…」と答えやすくなる事が分かった。より具体的に質問して、気持ちを言葉にしてもらった。
今度は「じゃあ、一緒に考えてみよう」と、意志疎通をはかった。息子は「わからない」事が怖いみたいだった。
その「わからない」事を言葉で説明したり、図に描いたりすると、息子はいくらか安心するようで。これには本当に時間がかかった。毎日、何度もやると、こちらも疲れるから、私は時々キレた。息子はやっぱり泣いていた。
「このやりとりに、意味はあるのだろうか?」
何度そう思ったか分からない。
わからない。
どうしたらいい?怒るくらいなら、やめた方が良いのかもしれない。
「わからない」事は、不安だ。大人でも。
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そんな悩みを抱える中、救世主が現れた。
『ピンポーーーン』
「むすこくん、いますかぁ?」
徒歩1分の場所に住む、息子のクラスメイトだった。突然現れたその子は、明るく優しい口調で、初めての訪問でも全く物怖じしなかった。
「むすこくん!あそべる?」
どうやら遊び相手を求めて『突撃ピンポン』巡りをしているらしい。
クラスでそんなに関わりが無い子らしく、最初は戸惑っていた息子だったが、友達に誘われて少しずつ外に遊びに行くようになった。
それをきっかけに、事態も少しずつ好転し始めた。
泣かずに登校する日が増えた。
イライラキーキー泣く事が減った。
学校の話をしてくれる事が増えた。
『ともだち』
息子には、友達が必要だったんか。
「わからない」を一緒に笑い飛ばしてくれるような友達が。
悩み続けた日々は一体何だったというのか。
親の存在って案外そんなもんかもしれない。
きっかけって案外そんなもんかもしれない。
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「忘れ物があったら、ぜったいぜったい届けてね!じゃあね、いってきます!」
息子が登校する時に必ず言う、呪文みたいな言葉。きっと、心配性な息子にとってのお守りみたいな言葉。
息子は、1人で明日の荷物とこころを準備できるようになったんだね。
もちろん、まだ「わからない」と泣く事もあるけど。3歩進んで2歩下がりながら石橋を叩きまくる息子もだいぶ強くなった。
私は毎日息子を見ているはずなのに、「この子は、もう大きいんだ」と改めて認識したのでした。