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新鮮な塩

    年末に実家の大掃除をした時にもらってきた塩がある。

    台所の引出しの中のものを全部出して、乾物や缶詰の賞味期限をチェックしていた。隅っこから出てきた小袋、『PASTA SALT』と書かれたそれはミルで挽かないと使えない岩塩だった。高齢者には無用の長物だ。

    母「これあげるよ、塩なんだから大丈夫でしょ」

    いつの塩??賞味期限は??
    パッケージを見ると、こう書いてあった。

    『塩は品質の変化が極めて少ない商品ですので、賞味期限の設定はしておりません』


    賞味期限がない食品

    賞味期限がない食品。
    塩・砂糖・酢などの調味料や、冷凍のアイスクリームや氷などがある。アイスクリームは何年寝かしても不味くも美味しくもならず品質を保持するらしく、賞味期限が設定されていない。だから「搾りたての生乳と採れて3日以内の新鮮な卵を使ってます!」と謳っていても、いつの?って言われない。当たり前だがアイス自体が新鮮なのではなく、新鮮な素材をコールドスリープということである。

    塩は常温で半永久的に保存できる。賞味期限切れで廃棄する必要がないからビジネス的にも扱いやすいし、もし売れ残っても応用範囲が半端なく広い。アイスに入れて『塩ミルクアイスクリーム』にすれば、永遠に不滅なのだ。

    塩は永遠~♪ 愛は~ひとつ♪(銀杏BOYZ)

    第一、生命維持に欠かすことができない食材であり、塩の安定供給はライフラインと言っても過言ではないだろう。約30年前までは国の専売品だった。

    自由化により今では先のPASTA SALTのようにミネラルたっぷりの美味しい塩という商品はたくさんある。だが今ひとつ面白みに欠ける。そろそろ逆説的な尖った商品が出てきてもおかしくない。


    新しい塩、それは賞味期限のある「新鮮な塩」一択なのではないか。
    生酒や生キャラメルのように冷蔵保存の「生塩なましお」(しっとりまろやか)
    ブルーオーシャン!メイドインジャパン!!

    くだらない。実にくだらない。

    塩に賞味期限をつけるという、何の理由もなく何の役にも立たないものを、その道のプロが大真面目に作れば作るほど、くだらなさが増す。


    くだらなさの追求

    日本が誇る職人さんの時間とお金と技術を無駄遣いした、『くだらないものグランプリ』は面白かった。

    優勝作品、おにぎりの具を取り除いて誰でも簡単にご飯と海苔の部分だけを食べられる機械とか、「さけるチーズ」を極限まで薄くスライスして「すけるチーズ」にする装置とか。目的不明だし、何の存在価値もない。

    コロナ禍の閉塞感、『不要不急』への反発からか、くだらないものへの憧れはいつしか渇望となった。医療従事者とマスクを作る人以外の大多数は暇だった。しかしコロナ禍が終わって仕事が忙しくなったから、いつまでも遊んでいられないとなってこのグランプリは終わってしまった。残念だ。工業製品に限らず、様々な分野でくだらなさを追求していたい。

    個人的に好きなのは『エッグスタンド』。卵を立てる、ただそれだけのために作られた専用アイテム。とろとろの半熟卵をエッグスタンドに立て、そーっと殻の上部だけを取り除き、スプーンでほじくって食べる。

    いったい全体、卵が先か、エッグスタンドが先かわからない。

    大袈裟っていうか、丁寧な暮らしっていうのか、たかが「転がる卵を立てたい」だけの理由で、大して活用の機会もない食器を家族の人数分揃えるかと言ったら……。
    買ったとてすぐに食器棚の肥やしになることは目に見えている。卵以外にも何か入れられるだろうかと考えるが、何も入らない。

    それどころか、卵と言っても固ゆで卵や生卵では立てる理由が見つからない。殻の上部を恐る恐る割ってみて、トロトロの半熟だった時初めて、立ててよかったと胸をなで下ろすことになるのだ。

    そんなエッグスタンドの何が好きなのかと言えば、その存在自体がかわいくてアートだからだ。言い換えれば、くだらなさに他ならない。


    絵を飾り、音楽を聴き、植物を育て、そして卵を立てる。

    「さ、朝食をいただきましょう」

    あ、冷蔵庫から塩持ってきて。
    塩はやっぱり生よねー、半熟卵によく合うの♪
    あれ?!今日の卵は少し茹で過ぎたかしら?黄身が固まっちゃった。これじゃスタンドとスプーン要らないわね。笑
    でもでも、塩はやっぱり、、、

    ナマよねーー

    新鮮なうちに召し上がれ!



    くだらないの中に愛が

    人は笑うように生きる

    星野源『くだらないの中に』


     
     
    結婚式を中から見た四方山話ほか日常茶飯事をエッセイに綴ります。(2000字) 嫌いな食べ物はあんこ。他SNSとは連携していません。@福島県

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