
【創作掌編】他人事|#拝啓文芸部
図書館の閲覧机に、一枚のメモが置かれていた。
誰かの置き忘れだろうか。
「なんだ、これ?」
明日はスパゲッティなのでカモミールに乗ろうと思います。きっと特別なペットボトルだと思います。
誰かが寝ぼけて書いたのだろうか。
近くの人たちに聞いてみても、皆一様に心当たりはないという。
だが、思いつきを書き留めたときには意味が通っていても、後で読むと分からなくなることはある。これはその類のものじゃないだろうか。
そうこうしていると妻が戻ってきたので、俺はメモを元の場所に置き、図書館を後にした。
帰り道を歩いていると、妻がふと思い出したように尋ねた。
「あのメモ、どうしたの?」
「ああ、机に置いてきた。誰のか分からなくてな」
妻がきょとんとした顔で俺を見つめる。
「何言ってるの? あなたが書いてたでしょう。私が本を探しに行く前に」