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Photo bynicolaco

第8話:博多の七夕と美しい人 恋はペンタゴン

    博多の街は、祇園山笠の活気で熱を帯びていた。7月の空気は湿気を含み、提灯の光と祭りの喧騒が交錯し、太鼓がどこからか聞こえる。

    夕方の早い時間、まさきはANA機から降り立ち、腕のロレックスをチラリと確認。

    博多か…dannyさんが住む九州。

    恋して日本旅行なんて、得すぎるな。これから始まる恋の旅に、スキップしたい脚元を抑えて冷静に振る舞う。


    外銀仕込みの頭のそろばんは、仕事とプライベートのリターンを弾きながら順調に回る。
    甥っ子にお土産、通りもん買って帰ろう。通りもんは日本を代表する銘菓だと信じてる。きっと喜ぶだろう。
    プライベートの充実が、仕事の充実。

    今日の目的はdannyさんとの、noteのサムネイルの打ち合わせだ。
    俺だけの織姫との対面、絶対成功させる!

    XでのDMとZoomでのやり取りで、dannyさんの猫っ毛シルエットと金属音のような可愛い声に、まさきはすっかり心を奪われていた。

    今回は絶対美女。
    たまゆなのガチムチ、塊の詩、あんなサプライズはもうゴメンだ!俺は恋愛攻略note書くぐらい無類の女の子好きなんだ。

    まさきは自分に言い聞かせ、博多駅前の待ち合わせ場所へ向かう。

    「まさきさんっすか?」

    不意にかけられた声に、まさきは振り返る。

    そこに立っていたのは、リムレスメガネにサーフカールの髪、映画賞のレッドカーペットで話題になった俳優を思わせる洗練された男。

    古着風の白いシャツにゆるいデニム、首元に巻かれた薄手のスカーフが博多の風に揺れる。こなれたおしゃれ好きの着こなしだ、腕にTiffanyのシルバーが光る。おしゃれ。博多の街のストリートスナップから出てきたような洗練された出立だ。

    「え。」  

    まさきは思わずマヌケな声を漏らす。

    待て、待て待て! またか!?

    大事な心のポートフォリオが一瞬クラッシュしかけるが、目の前の男――dannyさんの雰囲気は、たまゆなのガチムチ衝撃とはまるで違う。


    綺麗な顔立ち、鋭いけど柔らかい目元、どこか中性的な魅力。
    いや、でも…男!? 芸能人?!

    うそ、めっちゃイケメンじゃん…!

    あ、彼は、人間だわ。魂が入ってる。俺と同じ。

    「はい、で、貴方は…?」  
    まさきはなんとか冷静さを取り戻し、探るように尋ねる。

    「dannyっすけど。」  

    dannyがニヤリと笑う。金属音のような声は、Zoomで聞いたあの可愛らしいトーンの面影がある。

    ディテールは、ボイチェンっぽいけど…まぁ、今どきだよな?声も著作権あるし!
    副業で身バレNGって言ってたし、細やかさに感動すら覚えた。

    まさきは自分を納得させつつ、dannyの洗練された雰囲気に引き込まれる。

    たまゆなパターンじゃない。これは…新しいパターン、つまり、人と人の、誠実な出会いだ!

    「早速ですけど、サムネイル見るんで。
    パソコン持ってきてますよね?
    カフェ行きません?」  

    まさきとほぼ変わらない背丈。
    175と178。
    2人でいたら目立つだろう。

    dannyの提案はテキパキとしていて、仕事モード全開。まさきはホッとしつつ、

    この人、めっちゃプロだな、餅は餅屋...と感心する。

    二人は駅近くの路地裏、博多らしい古着屋の隣にあるミニマムなカフェに入った。

    木の温もりと白い壁、カウンターに並ぶ小さな観葉植物が可愛らしい雰囲気。

    七夕の夜、店内には笹の葉に吊るされた短冊が揺れている。

    まさきはレッツノートを取り出し、dannyがAIで出力して送ってくれたサムネイル画像を表示する。  

    「これ、dannyさんが作ってくれたやつ。noteの『モテる男の思考回路』に合わせた感じで、文字入れ自分でしてみたんだけど、結構いいと思ってるんだけど、どうかな?」  


    まさきは自信満々に画面を見せる。  

    dannyはメガネの奥の目を細め、じっと画面を見つめる。メガネを少し持ち上げる仕草を見せため息をつく。

    そして、開口一番。  

    「センスないっすね。」  

    思いがけず届いた言葉に、まさきの笑顔が凍る。


    セ、センスない!?

    センスの塊(あ、塊)で、

    恋愛マニュアルの著者、外銀出身のエリートコンサルが、こんなストレートなダメ出しを食らうなんて!

    だが、dannyの口調には悪意がない。
    むしろ、軽やかな笑顔で続ける。  
    この人は著作物に誠実なのだ。

    「いや、まさきさんのnote自体はめっちゃ面白いっすよ。
    だからこそ、もったいない。

    このサムネ、なんか…こう、普通すぎる。

    文字の配置もタイトルも。

    もっとパンチ効かせない? ほら、俺の『人妻シリーズ』みたいな、グッとくる感じ。」

    dannyが自分のスマホを取り出し、AIで描いた新作イラストを見せる。色気とユーモアが混ざったタッチに、まさきは思わず唸る。

    確かに…こっちの方が断然映える!

    「すげぇ…dannyさん、めっちゃセンスあるな。どうやったらこんなの作れるの?」  
    まさきは素直に感心し、つい身を乗り出す。  

    dannyがクスクスと笑う。  
    「まさきさんのセルフィー、めっちゃいい素材だったから。まず素材がいいって強みだよ。

    顔、ほんと綺麗っすね。…でもさ、noteサムネイルのコンセプト、もっと攻めてもいいんじゃない?


    俺、ガンガン攻めるの好きっすよ。」  

    その言葉に、まさきの心臓がドクンと跳ねる。

    攻める!? え、仕事の話だよな!?

    dannyのメガネ越しの視線と、サーフカールの髪が揺れる仕草に、なぜか塊の紙ナプキンが頭をよぎる。

    隣に君の笑顔があるせい」…って、いや、待て、なんで今それ!?さっきも出たけど、塊!心の塊に話しかけている自分に気がつき思わず赤面する。

    カフェの窓の外では、七夕の夜空に星が瞬く。

    博多の祭りの喧騒が遠く聞こえる中、出逢った2人の彦星と彦星。

    二人の織りなす夜は、まだ始まったばかりだった。

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