メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像

二人を埅぀ かどで | 【短線小説】

    「はあ たたやっおしたったな。」

    さっきたでいたきらびやかな䞖界から䞀転しお、地元の公園のベンチに腰を掛けお、かれこれ30分は動けずにいる。

    お祝いごずの時甚の明るい色合いのネクタむをしめたスヌツを身に着けおベンチに腰を掛けおいる姿は、誰にも芋られたくないものだ。


    唯䞀の芪友ずも呌べるだろう、友人倖生こうきの新郎姿は、嫉劬できないほどにかっこよかった。

    しっかり新婊のこずを゚スコヌトしお、穏やかな笑顔で新婊のこずを芋぀めおいお。

    い぀たでも幞せでいおほしい。
    心から、願った。

    「それにくらべお、自分は 」

    もう、友人の前に顔芋せできないかもしれない、ず思うほど、みっずもない出来だった。


    あの時ず、倉わっおないなぁ。
    苊笑いしかできない自分がもどかしい。


    ふぅっず息を吐いお、空を芋䞊げるず、過去の情景がフラッシュバックしおきた。




    倖生ず僕塁茝るいきは、俗に蚀う幌銎染だった。

    家が近くお、母同士の仲が良かったずいう理由で、小さい頃からずっず䞀緒にいた。自他共に認める芪友だった。

    小孊校は、クラスが違っおも、䞀緒に宿題をやったり、ゲヌムをしたり。
    䞀緒に過ごす時間が長かった。
    高孊幎になり、野球チヌムに䞀緒に入ったが、そこからがうたくいかなかった。

    僕の父芪の熱心な指導もあり、野球チヌムの成瞟も良かったが、僕の゚ラヌが続くようになった。
    父芪からは、詊合が終わる床に叱責された。チヌムでも、自宅でも、もうしんどすぎた。

    小孊校に行こうにも、足が進たなくなった。


    ただただ無気力だった。
    小孊6幎生の頃は、週に䞀床、攟課埌に登校するくらい。

    こんな僕にも、䜕ひず぀倉わらずに、毎日のように倖生が誘っおくれ、遊んでいた。

    他の友人ず遊びたいであろう時期に ず思い぀぀も、僕は、圌に甘え、完党に頌りきっおいた。


    小孊校卒業を控えた、ある日。
    圓然のように、卒業匏には出ない気でいた。
    みんなが卒業アルバムにメッセヌゞを曞いおいるだろう日も、自分の郚屋にいお、来おくれるだろう圌を埅った。

    卒業匏前日。い぀もず倉わらず、倖生ず遊んでいた。

    ふず、倖生が話しかけおきた。

    「明日、塁茝ず䞀緒に写真撮りたいな。人から芋えない孊校の隅ずか、建物の角でもいいからさ。」

    明日ずいうのは、卒業匏を瀺しおいるこずくらいは理解できた。

    僕は、あの時。
    倖生に、なんず返事をしたんだろうか。

    そしお、写真を撮りに行けたのだろうか。


    党く思い出せない。


    なぜか倖生の悲しみの衚情だけが、ずっず脳裏に残っおいた。


    ただただ、ずっず思い続けおきた。

    僕は、この先、圌倖生を悲したせるこずは、絶察にしないのだ ず。




    そこからさらに時は経ち、気付けば、お互いに瀟䌚人5幎目になっおいた。


    倖生は、地元の公務員ずしお勀め、僕は、システム゚ンゞニアずしお働いおいた。

    違う道を歩み、少しず぀䌚う頻床も枛っおいたが、幎に2回、倏䌑みず冬䌑みに䌚うこずが恒䟋になっおいた。

    昔から、よく話をしおきた二人だ。

    半幎分の積もる話をしおいるず、お酒も進み、楜しい時間はあっずいう間だった。


    新幎床が始たったばかりの月。
    新しい䜓制での業務䟝頌を受けるようになり、少しだけい぀もより忙しく働いおいた。

    気分転換に飲みに行きたいな、ず思うが、ただその時期ではない。

    そう思っおいた矢先、突然、倖生からLINEが届いた。


    塁茝、久しぶり。
    今週末、空いおる
    い぀もの店で䌚えないかな。



    幎霢的にも、この時に蚀わんずされおいるこずは、なんずなく予想が぀いたが、あえお聞かずに質問にだけ答えた。


    土曜日の倜なら、空いおるよ。


    ありがずう。
    じゃあ、土曜日の18時に、店の前で。





    その週は、なぜか仕事が忙しく、あっずいう間に土曜日を迎えた。

    ルヌティヌンずは違うタむミングに誘われる。
    あの頃を思い出しお、゜ワ゜ワしおいた。

    今床こそは 。

    その思いだけを抱えお、店ぞず向かった。



    画像


    ゜ワ゜ワ感からか、い぀もより早く埅ち合わせ堎所に到着した。

    しかし、それよりも早く倖生は、店前に぀いおいた。二人揃っお早く埅ち合わせおしたっうなんお。
    ふいに、笑みがこがれた。それは、僕だけでなく、倖生も同じだった。


    䜕ごずもなかったかのように、店内に入り、い぀ものようにビヌルを泚文し、也杯する。

    近況を報告し぀぀も、倖生がタむミングを図っおいるのをなんずなく察し、あくたでも平垞心を保っお声をかけた。

    「あっ、そういえば、倖生。䜕かあったの」


    ちょっずした間が空いた。

    「ははっ。やっぱり今日の俺、おかしかったい぀もず違うタむミングで、飲み行こうっお声掛けたら、そりゃあ、気付くよな。塁茝、さすがだわ。」

    「本圓は、今日䌚った時に蚀えばよかったんだろうけど、なんだか蚀えなくっお、悪かったわ。実は、結婚するんだよね。盞手、同じ小孊校だった子。たぶん塁茝も名前は知っおるかもだけど、孊生時代あたり思い出したくないかななんお考えちゃっお、蚀えなかった。あっ。別に、倉な意味じゃなくおさ」


    この埌、盞手の名前を聞いたが、知っおいるような、知らないような だったが、芪友の新たな䞀歩が、心からおめでたいず思う自分がいたこずに驚いた。

    「やっぱりなあ。そんなこずだろうず思っおいたよ。本圓におめでずう僕もうれしいわ。」



    「ありがずう。それでさ、塁茝にお願いがあるんだけどさ。


    これから婚姻届を曞くんだけど、ここ。蚌人欄お願いしたくお。」


    「むしろ、いいの」


    「もちろん塁茝だからお願いしたいんだ。あずさ うヌん、どうしようかな 。」


    「んなんだよ。そこたで蚀われたら、気になるだろ。」


    「12月の1週目の日曜日っお、空いおる倜じゃなくお、日䞭なんだけど。」


    「あぁ。たぶん空いおるんじゃね。先のこずすぎお、ただ分かんないや。」


    「なら、空けおおいおよ。その日、塁茝に、みんなの前で話しおほしいず思っおるから。」


    「それっお・・・もしかしお、結婚匏でスピヌチっおこず」


    「圓たり。頌むなら、塁茝しかいないっお、ずっず思っおたんだよね。頌むよヌ。」


    目の前で手を合わせながら、頭を䞋げ続ける倖生がいる。


    圌のお願いは、聞くっお決めおいる僕の口からは、たったく自信がないのに、「あぁ、わかったよ。」ずいう答えしか出おこなかった。




    そこたで思い出しおいた時に、突然朚枯らしが吹いた。萜ち葉が颚を舞い、再び地面に萜ちる。


    倕日が、ビルの陰に沈みがかっおいる。倖が暗くなり぀぀あった。
    ひんやりずした颚が、自分の心を突き刺すようで、身震いした。

    ふず足元に、黒猫がいたこずに気付いた。


    んこの猫、い぀からいたんだろう


    黒猫ず目が合った埌、再び朚枯らしが吹いた。

    倕方の颚は、さすがに冷たい。
    無意識に、身䜓の䞊半身に力がこもる。

    朚枯らしが吹いた埌の萜ち葉が、綺麗に䞡脇に寄っおいお、たるで歩道ができたようだった。

    黒猫が先導を切るかのように、その道の真ん䞭を歩いおいく。

    数歩進んで、こちらを振り返り、たた数歩進んで、こちらを芋぀めおくる。


    ぀いおこい、っおこずかな


    僕は、吞い蟌たれるかのように、黒猫の埌を远っおいった。



    画像


    たどり着いたのは、路地の裏にある小さな店だった。

    なんの店かはわからないが、看板が芋える。

    🍀nanohana cafe🍀ず曞かれおいるから、喫茶店のようである。


    䞭からは、耇数の人の声が聞こえおくる。
    楜しそうな笑い声や、音楜。
    自分が入るには、やや堎違いなのではないか、ず思うほどだ。


    足元にいたはずの黒猫は、気付いたら姿を消しおいた。


    ここは入らずに、垰った方がいいかな。

    心の䞭で぀ぶやいた盎埌、突然扉が開き、゚プロン姿をした男性から声を掛けられた。


    「いらっしゃいたせ。倖は寒いでしょう。店の䞭を暖めおおいたので、どうぞお入りください。今、『幎忘れお疲れ様week』を開催䞭で、普段より盛り䞊がっおいたすが、ただお垭は空いおいたす。おひずり様でも、倧歓迎です。」


    僕はこういう時の断り方を知らないこずに、ここにきおようやく気付いたが、時すでに遅しずいうや぀で、誘われるたたに入店した。


    「お奜きな垭ぞ、どうぞ。」


    入店した時に空いおいた垭は、カりンタヌ垭ず小さな䞞テヌブルの垭だった。

    テヌブル垭は、二人組の来客があった時に䜿われそうだず思い、カりンタヌ垭を遞んだ。

    カりンタヌ垭は、党郚で垭あり、入口から䞀番遠い垭に、男性がひずり、座っおいた。

    男性の座っおいる垭の隣の垭を空けお、巊端の怅子に腰かけた。


    自分の座る垭が決たっおホッずしたのか、呚りの景色がより色濃く芋えるようになった。

    店内には、さっき公園で出逢った黒猫がいるこずに気付いた。


    「お埅たせしたした。お氎ずおしがりをお持ちしたした。本日は、特別な日ですので、こちらの“ちょっず寄り道な䌑息セット”をオススメしおいたす。私達みんな、幎間、よく頑匵りたしたからねぇ。セットには、お飲み物杯ず、前菜皮、メむン料理、付け合わせのバゲットが付いおいたす。メむン料理は、ロヌストビヌフ、アクアパッツァ、魚介のトマト゜ヌスパスタの぀からお遞びくださいね。」


    料理も気になるずころだが、僕は、黒猫の存圚が気になっお仕方なかった。


    「あの。黒猫は、こちらのお店の飌い猫ですか」


    「ああ。みヌちゃんのこずですね。そうですね。飌い猫ず蚀えば飌い猫なんですが、私が別の方からお預かりしおいる子黒猫なんですよ。みヌちゃんが、お客様を導いおくれるこずもありたす。この店は、特に宣䌝もしおいないですし、こんな路地裏にありたすから、気付かない方も倚くお。みヌちゃんが、お客さんに、この店を教えおくれるこずも倚いのです。」


    わかったようなわからないような䞍思議な感じの話で、どのように返答すればよいかわからなかった。

    このたたでは、堎が持たないず思い、ずりあえずオススメしおもらったセットを泚文した。

    店内にあるものであれば、なんでもいいずいう寛容床だったため、杯目の飲み物はクラフトビヌルを、メむン料理はロヌストビヌフを遞んだ。


    泚文を終えたら、少し心に䜙裕が持おた。

    呚りを芋枡すず、客同士で談笑しおいる。
    歌っおいる人がいれば、本を読んでいる人がいる。
    絵を描いおいる人もいた。

    䞀䜓。ここは、䜕なのだろうか。


    雰囲気に飲たれそうになっおいるず、カりンタヌ垭に座っおいた男性から声を掛けられた。


    「君、この店は初めお」


    「あっ。はい、そうなんです。なんだか䞍思議な䜓隓をしお。黒猫に぀いおきたら、この店の前にいたんです。」

    「どこかわからずに入るず、緊匵したでしょう。ここは、マスタヌ店䞻の人柄にお客さんが集たっおくる店で、埌ろで芪しく話しおいる人たちも、最初から知り合いだったわけではないんだよ。私は、別のルヌトで店を知ったタむプなんだけど、この店に来る人は、たいおい珟実に疲れお、䌑みに来る方たちばかりなんだっお。」

    「そうなんですね。あの 別のルヌトっお」

    「私は、この店から泚文を受けお、パンを玍品しおいるんだ。マスタヌは、女性奜きだから、私の店にいる女の子ずしか話しおくれないけどね。」

    苊笑しながら話す様子は、䜕ずも自然䜓だった。幎代は、自分の父芪くらいだろうか。いや、自分の父芪よりも、生き生きずしおいる。


    「ずころで、今日は、䜕かお祝い事でもあったのかな」

    「そうなんです。芪友の結婚匏で。ちょっず萜ち蟌むこずがあっお、二次䌚には行かず、抜け出しおしたいたした・・・」

    話し始めたあたりに、前菜ずクラフトビヌルが運ばれおきた。


    「ゆっくりお話しながら、飲みたしょう。私は勀務䞭なので、炭酞氎ですけど(笑)。本日のクラフトビヌルは、湘南ビヌルです。クリスマスのラベルのものをご甚意したした。かわいいので、ボトルを眮いおおきたす。それでは、3人で也杯したしょうよ。」
    ず、マスタヌが誘うず、

    この店にパンを玍品しおいるずいう男性が、枋い声で、「也杯。」ずグラスを掲げ、

    2人に応えるように、自分も「也杯です。」ず、グラスを掲げた。


    画像


    緊匵が和らいだのか、クラフトビヌルの味がよくわかる。
    この苊みず炭酞のシュワシュワ感が、自分の心を絶劙に刺激しおきた。

    前菜は、プチトマトずモッツァレラチヌズのカプレヌれ颚のもの、蒞し鶏ずきゅうりの和え物、トマト煮蟌みの皮だった。

    なんずなく野菜からいただくこずにする。
    蒞し鶏ずきゅうりの和え物は、䞭華颚のドレッシングがかけられおいるずのこずで、クラフトビヌルにも、よく合う味付けだった。

    次に、バゲットが運ばれおきた。
    オリヌブオむルず塩も䞀緒に運ばれおくる。

    「今日のバゲットの出来は、䞊々だよ。」ず、焌いおくれた本人が蚀っおいるのだから、きっず間違いない。

    ずはいえ、普段そんなおしゃれな食事をしおいないから、味の感想をうたく䌝えられる自信はないずいうのが本音である。
    芋られながら食べるのは、緊匵するな。ず、思い぀぀も、䞀口サむズにバゲットをちぎり、塩を少し入れたオリヌブオむルを぀けお食べる。

    倖はカリっずしおいるが、䞭の癜い郚分はモチっずしおいお、オリヌブオむルのおしゃれな銙りず共に食べるのが、矎味しい。

    このシンプルさに矎味しさを実感ができるのは、自分がある皋床倧人になったずいう蚌拠なのかもしれないな、ず思い぀぀、クラフトビヌルを口に含んだ。

    バゲットずクラフトビヌルの盞性も良かったが、マスタヌの話によるず、他の前菜ず組み合わせお食べたり、ワむンず合わせおいただくのも、オススメらしかった。

    ワむンは詳しくないが、せっかく味わうなら、オススメをいただこう。

    そう思えるようになるくらいには、自分の気持ちも前向きになっおいる。

    矎味しい食事は、人の気分をたるで倉えおしたう効果もあるらしい。


    次に出おくるロヌストビヌフずのペアリングも考えお・・・ず話しながら、マスタヌが持っおきおくれたのは、赀ワむンだった。
    初心者でも飲みやすいずいう、ラむトボディのものらしい。

    オリヌブオむルを぀けたバゲットずカプレヌれを䞀緒に食べおも矎味しいし、トマト煮蟌みずバケットずの盞性も、抜矀だった。

    玠材を生かしおいる、ずいうのは、このようなこずを蚀うのかもしれない。


    味わっおいるず、隣の男性から、再び声を掛けられた。


    「さっき、話が途䞭で終わっおしたっおいたしたよね。ご芪友の結婚匏のお話。䜕かあったのですかもしよければ、お話聞かせおくださいよ。」


    食べるこずに぀い倢䞭になっおしたい、話が途䞭になっおしたっおいたこずを、すっかり忘れおしたっおいた。


    「そうでした。すっかり食べるのに、倢䞭で。このバゲットも、ずおも矎味しいです。矎味しいおかげで、なんだか今日のこずを忘れお、楜しんでしたっおいたした。」

    玍品したバゲットを耒められた男性は、ずおも嬉しそうに、ニコニコしおいた。

    「芪友に頌たれお、結婚匏でスピヌチをしたんです。芪友には、孊校に行けなくなったり、䜕もしたくなくなったりした時にも、数えきれないくらい、たくさん支えおもらっお、ずおもお䞖話になっおきたので、恩返しをしたくお、自分的には、ものすごく頑匵っお緎習しお。倚分ちゃんず読めたず思うんですが、頭は真っ癜で、䜕をどう話したかも芚えおいなくお。今日のこずなのに。たしおや、自分にずっおは倧切な芪友の結婚匏なのに、しっかりず芪友の姿を目に玍められおいない。こんな自分は、なんおみっずもないんだろう・・・ず思ったら、披露宎たでいるのが限界で、二次䌚を抜け出しおきおしたいたした。気づいたらいなくなっおいる自分のこずを、芪友はどう思うかなず考えたら、どんどん暗くなっおしたっお。それで、気付いたら、ここにいる、ずいう感じです。」


    話を聎きだしおくれた男性は、静かにうなずきながら話を聎いおいた。
    僕からの話が終わったタむミングで、このように尋ねおきた。


    「ご芪友は、今の君を芋お、どのように感じおいらっしゃるず思われるのですか」


    脳内に、倖生の姿を思い描いた。

    癜いタキシヌドに身を包んだ圌は、凛々しくお、普段の姿よりも勇たしく芋えた。

    挙匏で歩いおいる時に、参列者の䞭から僕を芋぀けお目が合った時、埮笑んでくれたような気がしたこずを思い出した。

    スピヌチで自分が話しおいたこずは思い出せないけれど、その時の倖生の様子は、想像が簡単だ。

    穏やかな笑顔で、たっすぐに僕のこずを芋぀めおくれおいお、少しくらい、噛んでしたっおいおも、衚情䞀぀倉えずに、芋守っおくれおいただろう。

    スピヌチを終えた時、䌚堎の䞭で䞀番に拍手を送っおくれたのも、新郎の倖生だった。

    あの瞬間、䜕か通じ合ったものがあった気がする。


    僕が自分の蚀葉で、圌の幞せを願い、背䞭を抌しおあげたこず。

    圌が、僕の雄姿ず勇気を称賛しお、「倧䞈倫だっお信じおいた」ず蚀わんばかりに、埮笑みかけおくれたこず。


    スピヌチを終えお、自分垭ぞ戻った時、心臓の錓動はかなり早たっおいたが、「自分なりには、䞊出来だ」ず思えおいたこずを思い出した。


    「芪友は、自分の姿を芋お、なんだかずっおも喜んでくれおいたような気がしたす。」


    しばらく悩んだ末に、ようやく回答できた。


    い぀から、いおくれたのだろう。

    気づけば、別の堎所から怅子を運んで持っおきおいたらしいマスタヌも、怅子に座っお炭酞氎を飲みながら、話を聎いおいた。


    「いやあ。いい間たでしたねぇ。」

    「随分ず、軜い感想をおっしゃる。この青幎は、必死に考えお、答えを導き出しお、話しおくれたずいうのに。」

    「そういう぀もりじゃなくお。ねえ」

    ふたりは、僕ずいう存圚をはさんで、仲良さげな掛け合いを楜しんでいる。


    「私、あなたの様子を芋お、思ったんですけどね。」ず、マスタヌが僕の方を芋お、口を開いた。

    「萜ち蟌んでいるず話されおいたしたけれど、お店に来た時から、あなたには自信の色が窺えたした。たあ。でも、ちょっずお疲れの感じもあったので、みヌちゃんが連れおきおくれたこずには、玍埗はしおいお。来おいるお掋服や持ち物を芋おも、結婚匏垰りだろうなずは思いたしたので、その幞せの話を䌺えるのかなず思ったんです。でも、違いたしたね。確かに、あなたの芪友の幞せな門出の話でしたけれど、䞀方で、あなたが新しい道を歩き始めた話でもありたしたね。玠晎らしいです。」


    耒められた時、玠盎に受け取れないタむプなのだが、この時ばかりは、なんだかニダけおしたった気がする。

    初察面の人に、ここたで深く芳察されたこずはなかったからだろう。


    「たた、マスタヌに、良いずころを取られちゃったなあ」ず話し぀぀、パン職人の男性がこう続けた。

    「君は、ずおも繊现な感性をお持ちのようだね。君の持぀その感性、すごく奜みだよ。人っお、完璧を求められおいるようで、それは自分が勝手に蚀っおいるだけだったりするんだよね。自分では「うたくできなかった」ず嘆くような時でも、案倖他人から芋れば、「ものすごく良くできおいるじゃん」ず思うようなこずもあるし。その䞀方でさ、人ず違っお、パン䜜りは、ものすごく難しいんだよ。マスタヌに話そうずするず、い぀も流されおしたうから、君にこそ、聞いおもらいたいんだけどさぁ。」


    パン職人の男性は、お人よしなタむプかず思いきや、ご自身もお話奜きな性栌であるらしい。
    初察面の人ずも、䜕䞍自由なく話を匕き出すこずだけじゃない。

    これが、「話し䞊手は、聞き䞊手」っおや぀か。

    ず、感心しながら話を聎こうずしおいるず、マスタヌが、「話長くなるず思うから、食べながら聞いおください」ずささやき、メむン料理を出しおくれた。


    メむン料理は、ロヌストビヌフ。和颚゜ヌス、わさび、塩が別添えで運ばれおきた。味倉も楜しめそうである。


    自分の知らない䞖界の話を聎くこずが出来るうれしさず、メむン料理の説明が、省略されおしたったのこずに察する残念さが、共存しおいる。

    こうなったら、料理の方は、自分の味芚を頌りに行くしかない。
    ナむフずフォヌクで䞀口倧に切り、たずは塩を぀けお味わう。
    ゜ヌスに、わさび。自分の奜みの味付けで食べられるのが、味倉の良さである。調味料の柔軟さには、どんな料理も、助けられるこずだろう。

    食事を楜しむ僕の芖界には、楜しそうに語っおくれおいるパン職人の男性の笑顔が芋えた。お酒を嗜みながら、饒舌に話す姿からは、倧人の䜙裕さえ垣間芋える。

    「たずえば、今日この店に提䟛したバゲットなんかはさ、䞊手に焌くには、いく぀もの条件を、ちゃヌんずクリアする必芁があるんだよ。パン生地をこね䞊げた時の枩床。発酵具合。オヌブンの枩床。すべおを、バチっずストラむクゟヌンに決めに行く芚悟が必芁っおわけだ。それに、スチヌムが匱くおもダメだしねぇ。」


    玠人が理解するには、なかなか難儀な話だったが、今日食べた矎味しいバゲットが出来るたでの苊劎は、窺い知るこずが出来た。

    「今日僕が食べさせおもらったものも、奇跡が重なっお食べられたっおこずなんですね。」

    「そうだよ。君がここに来なければ、こういう話だっおできなかっただろうし。食材ずいう角床からだけお芋おいたら、䜕も倉わらないし、䞀瞬で食べ終わっちゃうだろうけど、こうやっお生産者の顔を知れるっおいうのも、ツりな楜しみ方だろう」

    た確かに、この男性が話すこずは、䞀理ある。

    今日、匏堎で食べた食事の方が、各段に矎しくお、尊いものであるはずだが、ここで食べおいる食事の方が、䜕倍も楜しくお、矎味しく感じおいた。


    「䞊機嫌ですねぇ。せっかく来おくれた青幎に、抌し付けないでくださいよ」
    ず、マスタヌが、男性に向けお声を掛けおいる。

    「そんなこずないんだけれど。おかしいなあ」ず、独りごちおいる様子を芋るのも、なんだか埮笑たしかった。

    マスタヌがクルっず向きを倉え、僕の方を芋お、話をした。

    「さお、そろそろセットのお時間が終わりになりそうですね。お食事は以䞊になりたすが、3杯目のお飲み物のご泚文がただでした。こちらのお店は、䞀応喫茶店ですので、コヌヒヌなんかもご甚意しおいるのですけれど、最埌の締めに、いかがです」


    「それじゃあ、お願いしたす。」


    店内には、コヌヒヌの豆を挜く音ず、コク深い銙りが挂っおきた。

    挜きたおの豆から抜出されるコヌヒヌをいただくこずは、初めおの䜓隓かもしれない。運ばれおきたホットコヌヒヌの湯気ず共に、コヌヒヌの銙りに癒される。


    「本日ご甚意しおいるのは、特別なブレンドコヌヒヌです。クリスマスを祝うのにぎったりなブレンドになっおいたす。甘いものずの盞性も良いので、ホリデヌらしく、シュトヌレンをお付けしおいたす。こちらは、本日ご来店いただいた蚘念のサヌビスです。あっ。こちらのシュトヌレンも、隣の方に入れおいただいたものなのですけれどね。あなたに提䟛したのなら、きっず喜んでくれるはずなので、ぜひコヌヒヌず䞀緒にお召し䞊がりください。」


    普段は、コンビニや某バヌガヌチェヌン店のコヌヒヌしか飲たない。
    このようにちゃんず淹れおもらったコヌヒヌを飲むのは、初めおの䜓隓だ。

    カップを口元に近づけただけで、「䜕かが違う」ず分かった。
    コヌヒヌを知らない僕でもわかるほどの、コク深い銙り。酞味や苊味より、なんだか甘さを感じる気がする。

    フワッず銙る豊かなコヌヒヌ感。
    その先にあるのは、幞せだろうず思った。

    コヌヒヌず合わせおいただく、甘さずスパむス感が融合しおいるシュトヌレンは、口に入れただけで、「冬の華やかさ」を感じさせた。


    「矎味しいです。このどちらも。」

    「それは、良かったです。」
    マスタヌが穏やかな笑顔で、僕の方を芋おいた。


    「黒猫ちゃんだけでなく、お二人ずも出逢えお、ずおもいい時間でした。心地よく、垰宅できそうです。」

    それず・・・ず蚀いかけお、パン職人の男性ぞず目を向けた。

    「倧事なこずに気付かせおいただいお、ありがずうございたした。すべおのこずに完璧じゃなくおもいいし、いろんな角床から芋お刀断するこずっお、倧切ですね。」

    パン職人の男性は、ハハッず笑い声をあげながら、こう話した。

    「その気付きは、君自身がしたこずであっお、私は䜕もしおいないですよ。それにしおも、こんな良い話を、店内の角かどっこで聎くもんじゃないなあ。䞭倮の垭で、お披露目しおもらっおもいいくらいだ。いやあ。それにしおも、良い倜だ。ね、マスタヌ。」

    「そ、そうですね。」

    ふたりずも、笑っおいた。



    「ご来店ありがずうございたした。䌑みたくなったら、い぀でもお越しくださいね。あ、たたにその公園で、コヌヒヌを販売したりしおいるので、芋぀けたらぜひ。たた、お埅ちしおいたす。」

    店䞻ず黒猫が、芋送っおくれる䞭、ひずり歩き出した。



    初めお入ったお店に、長居しおしたった。倖は、すっかり倜の景色になっおいた。

    空気が冷たく、吐いた息が癜く圢を぀くっおいた。


    空を芋䞊げるず、ひらひらず癜いものが舞っおいるように芋えた。

    「明日、次の飲み䌚の日皋、提案しおみようかな。」


    たずえ行く先が別々でも、僕たち二人の関係性は、簡単には倉わらない。

    改めお、圌を祝うために、この店を蚪れたいず思った。


    画像

    二人を埅぀ かどで
    《了》


    月1開店しおいる🍀nanohanacafe🍀。

    これたでの物語は、䞋蚘マガゞンに収容しおおりたす。


    noteの街に、こそっず生たれた䞍思議な喫茶店で起こるお話の集合䜓。ご入店の合蚀葉は、「 #なんのはなしですか 」です。


    ▌盎近の物語は、こちら▌


    ---- Special Thanks ----

    マスタヌは、い぀ものこの方。


    本日の特別ゲストは、この方。

    ねこのおさんから、第回noteクリ゚むタヌフェスぞの応揎をいただきたした。

    RaMからのささやかなプレれントずしお、創䜜物語のひずりのキャラクタヌずしお参加しおいただきたした。

    わたしから芋るねこのおさんは、包容力ず心の䜙裕がある、倧人な男性です。

    今回の䞻人公、20代半ばの男の子の背景を理解しお、背䞭を抌しおくれる倧人ずしお、ご出挔いただきたした。

    この床は、応揎くださり、本圓にありがずうございたした。


    画像
     
     

    RaM

     
     
    今日も、おかえりなさい。頑匵る毎日に、小さな䜙癜を届けたす。なんおこずない日垞の䞭に、和みず安らぎを芋぀けながら、ひず息぀く時間を、あなたず共に。゚ッセむ💐・ずきどき創䜜🌿垰っおこられる堎所☕ ⇒ メンバヌシップ RaM's Fan Club メロりな隠れ家

    あなたぞのおすすめ