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どうか縛らないでください【アマノ文筆クラブ】

     今日も視聴者がかなり集まっている。まるでHIKAKINにでもなった気分だ。「ブンブン、ハローユーチューブ!」って感じ。

     配信内容は、「RPGを初期装備でクリアする」という、誰が得するんだという企画。それでも、こんぼう一本でも世界を救えるってことを証明してみせる。

     コメント欄には「がんばれ!」「マゾすぎるだろ!」「kwtk」といった言葉が並ぶ。とにかく、最初の村周辺でひたすらレベル上げ。それをやらないと、この企画は成立しない。

     そうしているうちに、配信を始めてから20時間が経過していた。それでも視聴者がいる以上、途中でやめるわけにはいかない。レベルが上がって強い呪文を覚えたが、いざ使うとコメントが飛んでくる。「使うな」「それじゃ誰でもクリアできる」「マゾはマゾらしく、魔法も縛れ」と。

     コンコン、と部屋のドアがノックされた。兄が怒った顔で立っていた。コメント欄には「兄貴凸」「ワロタ」「記念パピコ」と流れるが、私は急いで配信を切り、モニターの電源を落とした。

    「お前さ、毎晩毎晩何やってんだよ」
    「RPGの初期装備縛り配信だけど。今は強い呪文も覚えたから、そっちも縛れって言われてる」
    「そういう話じゃないんだよ。画面に向かって奇声上げたり、一人で騒いだりして、こっちは全然眠れないんだよ。隣に俺が寝てること、忘れるな」

     どうやらかなり迷惑をかけていたらしい。それも無理はない。セーブもせずに強敵のいるエリアに突っ込んで、ワンパンで全滅。数時間分のデータが飛んだのだ。そりゃ叫ぶって。
     もちろん視聴者のウケは抜群だった。人の不幸って何より面白いからね。

    「……すまんかった」
    「それにさ、なんでこんな企画やってんの? 動画配信ならもっと面白いことあるだろ」
    「FPSとか対戦系は弱いからさ。でも、RPGの縛りプレイなら、視聴者稼げると思って」
    「で、そのゲーム、初期装備でどれくらいやってんの?」
    「配信で20時間以上かな。テストも含めると、50〜60時間くらいにはなると思う」
    「はぁ……呆れるわ。もういいから、さっさと寝ろよ」

     そう言い残して、兄は自分の部屋へ戻っていった。
     翌朝、母が怒っていた。兄から昨夜の話を全部聞いたらしい。
    「毎晩、パソコンとエアコンをフル稼働させて、そんなことして、なに考えてるの?」
    「……」
     私は何も言い返せなかった。ゲーム配信のために、すっかり昼夜逆転の生活になっていた。
    「光熱費だってバカにならないのよ。あんた、一体何がしたいの?」
    「……ごめんなさい」

      母は私に喝を入れるように、はっきりと言った。
    「『どうか縛らないでください』っていうかさ、RPGくらい普通にプレイしなさいよ!」


    #アマノ文筆クラブ
    アマノ文筆クラブ様の企画に今回も参加させて頂きました。よろしくお願いします。

     
     
    北海道在住です。小説をメインに色々なことを書いたりする場所です。今は主に、北海道を舞台としたオリジナル小説シリーズ「休憩室にて」を書いてます。その他、各企画に参加しております。

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