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🏫桜美咲シリーズ【学校編】第2話 笑顔だけが取り柄やから それでも、みんなのために声を出した日

    優等生の成績が下がっても、
    みんなのために動いた生徒の話。

    📢お知らせです。


    桜美咲シリーズ〈学校編〉は、第3話までは【完全無料】で公開します。

    前書き

    ※本作はフィクションです。
    登場人物・学校名・団体名・場所などは、すべて架空のものです。実在の人物・団体・地域とは一切関係ありません。

    この回は、派手な出来事も、大きな事件もありません。
    あるのは、
    「しんどい」と言えなかった一人の生徒の小さな勇気だけです。

    井川沙耶は、クラスではいつも明るくて、空気を和ませる存在です。
    悩みがなさそうで、元気で、前向きで。
    だからこそ、成績が落ちたことも、教室のしんどさも、
    誰にも言えませんでした。

    「私が悪いんやろな」
    「成績が悪い私が言う資格なんてない」

    そう思いながら、
    それでも沙耶は、静かに声をあげます。

    自分のためだけではなく、
    教室で苦しそうにしていた誰かのために。

    この物語で描きたかったのは、
    問題のある生徒でも、注意される側の生徒でもなく、
    そのすぐ横で、黙って耐えている子たちの存在です。

    そして、
    その声を「なかったこと」にしない大人たちの姿です。

    誰かを切り捨てることで解決する問題よりも、
    壊れかけている教室を、どう守るのか。

    第2回は、
    沙耶の小さな一歩と、
    美咲たち大人の葛藤を中心に描いています。

    静かな回ですが、
    この学校編の中で、とても大切な回でもあります。

    🏫学校

    私立神戸摩耶学園高校


    神戸市内にある私立の進学校。
    創立90年の伝統校で、進学実績にも定評がある。

    一方で、

    生徒数が多く、
    教職員の業務量も多い。

    「落ち着いた学校」という外からのイメージとは裏腹に、
    現場では常に小さなトラブルと判断が積み重なっている。

    👩‍💼 主な登場人物

    ■ 桜 美咲(さくら・みさき)

    • 年齢:30歳
    • 所属:総務課
    • 役職:主任(※管理職ではないが、実質の責任者)

    性格・人物像
    責任感が非常に強く、周囲からの信頼も厚い。
    感情をあまり表に出さないタイプだが、困っている人を放っておけない面倒見の良さがある。
    仕事では冷静で判断が早く、現場の調整役として自然に中心に立つ存在。

    「主任」という肩書き以上に、総務課を実質的にまとめている人物。

    ■ 西野 花音(にしの・かのん)

    • 年齢:25歳
    • 所属:総務課
    • 神戸摩耶学園 卒業生

    性格・人物像
    妹気質で無邪気な一面があり、生徒と間違われそうなほど若く見える。
    場の空気を読むのがとても上手で、自然な笑顔と軽いツッコミで人間関係を和ませるタイプ。
    職員室でも話しかけやすい存在。

    ■ 井川 つむぎ(いがわ・つむぎ)

    • 年齢:23歳
    • 所属:総務課
    • 神戸摩耶学園 卒業生
    • 新採用職員

    性格・人物像
    落ち着いていて丁寧、年齢より大人びて見える。
    人の話をよく聞き、感情を表に出しすぎない慎重派。
    実は芯がとても強く、静かに努力を積み重ねるタイプ。

    妹は井川沙耶。
    ただし校内では、姉妹関係は基本的に公にしていない。

    ■ 伊藤 真央(いとう・まお)

    • 年齢:25歳
    • 役職:養護教諭
    • 神戸摩耶学園 卒業生
    • 新採用(つむぎと同期)
    ※花音とは本校の同級生

    性格・人物像
    穏やかで聞き上手。
    相手の立場を考えて言葉を選ぶ、とても丁寧な人柄。

    小さな子どもを育てているママ教諭で、生徒にも同僚にも自然に寄り添えるタイプ。

    ■ 藤崎 愛菜(ふじさき・まな)

    年齢: 37歳
    役職: 1年学年主任

    真面目で厳格な性格。
    曲がったことが嫌いで、ルールや筋を何より大切にする教師である。

    感情に流されることは少なく、
    常に「学年全体として正しいか」「現場が回るか」を基準に判断する現実派。

    途中採用で神戸摩耶学園に着任し、
    新人時代には、自分より7歳年下である桜美咲から研修を受ける立場だった。

    当初は年下の職員に指導されることへの戸惑いもあったが、
    美咲の現場力と調整力を冷静に評価し、
    現在は学年運営においても信頼を置いている。

    厳しさの裏には、
    「生徒を守るためには、教師が甘くなってはいけない」という強い信念がある。

    ■ 井川 沙耶(いがわ・さや)

    • 年齢:15歳
    • 所属:神戸摩耶学園高校
    • 学年・クラス:1年3組

    性格・人物像
    明るく礼儀正しく、人懐っこい性格。
    先生や大人に対しても物怖じせず、きちんと挨拶ができるタイプ。

    素直で前向きだが、実はかなりの努力家。
    中学時代は成績はクラス1位。

    姉は総務課職員の井川つむぎだが、
    校内では姉妹関係は教職員以外には知られていない。

    養護教諭の伊藤真央をとても信頼しており、
    ほぼ毎日のように保健室に立ち寄って話をしている。

    この学校で、沙耶がいちばん安心できる場所は、
    真央のいる保健室である。

    ■ 中川 康一(なかがわ・こういち)

    • 年齢:45歳
    • 役職:1年3組 担任

    性格・人物像
    気難しい性格で、生徒からも近寄りにくい印象。

    もともとは、優しく温かい教師だったが、
    クラスの荒れた授業態度に心をすり減らし、
    次第に投げやりになってしまっている。

    ■ 野球部監督

    • 年齢:55歳

    人物背景
    もともとは大阪の甲子園常連校を率いた有名監督で、
    全国制覇の経験もある。

    5年前に神戸摩耶学園へ招聘された。
    しかし就任後は、県大会優勝は一度もなく、最高成績はベスト8。
    近畿大会にも出場できておらず、強いプレッシャーを抱えている。

    非常に厳しい指導で、
    感情的になり選手を叩いてしまう場面もある。


    本文

    5月下旬。
    中間考査が終わった頃、
    1年3組の井川沙耶は、元気をなくしていた。

    クラスでは、仲良し4人グループのムードメーカー的な存在。

    「あかん、このままやったら留年してしまう…」

    中学時代は、常にクラストップ。
    学年でも2位くらいの、超優等生だった。

    それが

    今回の中間考査の成績は、
    仲良し4人組の中どころか、クラスで下から2番目。

    生まれて初めて味わう挫折だった。

    「こんなん…誰にも言えんよ。どうしよう…」

    部屋にこもった沙耶は、机に頭から突っ伏していた。

    それでも沙耶は、家では明るく振る舞っていた。

    母
    「沙耶ちゃん、テストの成績返ってきた?
    高校でも上位かな?」

    沙耶
    「う、うーん…」

    母
    「沙耶ちゃんも、お姉ちゃんと一緒の学校でよかったなぁ」

    沙耶
    「ほんまや。お姉ちゃんもいるし、困ったら相談できるわ」

    沙耶とつむぎの母は、教育熱心で、名門校にこだわるタイプだ。
    それに引き換え、父は

    「自分の進路なんやから、自分で決めていいよ」

    と、あまり口出しはしない。
    ただ、相談すれば、いつもきちんと話を聞いて、アドバイスをくれる優しい人だった。

    母は心配性なだけで、
    名門校に入ってほしいという思いが強いだけ。

    考え方の違いはあっても、
    二人とも愛情はたっぷりで、夫婦喧嘩などはほとんどない。

    つむぎも沙耶も、以前、
    「お母さん、ちょっと押し付けてるんちゃう?」と父に相談したことがあった。

    そのとき父は、こう言ってくれた。

    父は小学校の先生ということもあり、説明がとても上手だった。

    父
    「お母さんな、押し付けてるんちゃうねん。
    心配してる方向が、ちょっと勉強とか学校に向いてるだけや」

    少し笑って続けた。

    父
    「沙耶も、つむぎもな、
    ちゃんと自分で考えてるのは、お父さんは知ってるで」

    父
    「せやから、進路は二人が決めたらええ。
    でもな、迷ったときに選べる道が多いほうがええと思って、
    お母さんは今、必死になってるんやと思うわ」

    そして、静かに、こう付け加えた。

    父
    「正解を押し付けたいんやなくて、
    後で困らんようにって思ってるだけやで」

    だから、つむぎも沙耶も、
    直接母に反抗したことはない。

    何かあれば、いつも父に相談してきた。

    でも。

    沙耶は今、迷っていた。

    成績が悪かったことを、父に相談するべきか。
    母に言えば、きっと余計に心配させてしまう。
    お姉ちゃんにも、迷惑をかけたくない。

    「…そうや」

    沙耶はふと、思いつく。

    「明日、保健室の真央先生に相談してみよう」


    次の日の昼休み。

    事務員の三人組と、保健教諭の真央が、食堂で一緒にご飯を食べていた。

    美咲
    「今日、仕事終わったらスタボコーヒー行かない?」

    つむぎ
    「いいですね。またグルアイ談義ですね」

    美咲
    「そうや。ほんま癒されるねん。
    急に言ってごめんな。
    真央さんはお子さんいるし、無理でもいいで。
    花音も急やったし…」

    真央
    「大丈夫です。保育園近いし、迎えに行ってから寄りますね」

    花音
    「私も行くよ」

    そこに、沙耶が、笑顔でこっそりとやってきた。

    沙耶
    「神戸摩耶の美人三人組ですね」

    つむぎ
    「沙耶ちゃん、どないしたん。
    それより、美人一名足らんで」

    沙耶
    「お姉ちゃんは外れてもらいます(笑)」

    美咲
    「沙耶ちゃんも、明るい子やな」

    花音
    「沙耶ちゃんは、悩みごとなんてないでしょ?」

    その瞬間、
    沙耶の顔が、ふっと寂しそうになる。

    沙耶
    「あっ、はい。
    私、バカやから、いつも笑ってますよ。
    これしか取り柄ないんです」

    そして、少し間を置いてから、

    沙耶
    「真央先生、保健委員のことで話がありますので、
    食事のあと、保健室に行ってもいいですか?」

    真央
    「保健室でいいの?
    応接室でもいいよ」

    沙耶
    「じゃあ、応接室でお願いします」

    真央
    「12時30分に来てくれる?」

    沙耶
    「ありがとうございます」

    そう言って、沙耶は席を離れた。


    美咲
    「沙耶ちゃん、どうしたんやろ」

    花音
    「私も気になる。
    私が悩みごとないよねって言ってから、
    一瞬、寂しそうな顔したよね」

    つむぎ
    「なんか…沙耶ちゃんらしくなかった。
    明るい子やけど、無理して話してきた感じで」

    そして、つむぎは真央に向かって、静かに言った。

    つむぎ
    「真央さん、話、聞いてあげてください。
    私や母が、すぐ心配するから……
    家では、悩みごとは言わへんのです」

    真央
    「うん、わかった」

    沙耶の初めての挫折は、
    誰にも気づかれないようでいて、
    確かに、静かに周囲に伝わり始めていた。

    昼休みが終わり、
    真央先生が応接室の前へ向かうと、すでに沙耶が廊下で待っていた。

    沙耶
    「真央先生、ありがとうございます」

    真央
    「沙耶ちゃん、何か悩みごとあるの?」

    沙耶
    「わかります?」

    真央
    「うん。ここ最近の沙耶ちゃん、いつもの元気と違うなって思ってたんよ。
    それで、沙耶ちゃんと話できたらなって思ってたとこやってん」

    沙耶は少し間をあけて、ゆっくり口を開いた。

    沙耶
    「実は私、成績が悪くて…中間考査でクラスでも下から2番目でした。
    学年でも下から2番目です。
    名前出して失礼ですけど、1番下の子は、最近学校に来ていない子だと思います」

    真央
    「それで悩んでたんやね」

    沙耶
    「それと…もう一つ悩みがあって」

    沙耶は視線を落としながら続けた。

    沙耶
    「1年3組は、授業に集中できる雰囲気ではないんです。
    成績の悪い私が言うと、人のせいにしてるって言われるかもしれないですけど…」

    少し言葉を選ぶようにして、沙耶は続ける。

    沙耶
    「野球部の子らが、授業中に私語とかうるさくて、
    勉強に集中できないんです。
    学校に来なくなった遥菜さんも、すごく嫌そうにしてましたから…」

    真央は静かにうなずいた。

    1年3組は、少し特殊なクラスだった。

    女子生徒が25人、
    男子生徒は15人。

    そしてその男子生徒15人は、
    全員が野球部の推薦入学組だった。

    真央
    「昼休みも、そろそろ終わるしな。
    一旦この話は持ち帰って、
    学年主任の愛菜先生と、私と、沙耶ちゃんの三人で、
    放課後に話できる?」

    沙耶
    「はい。大丈夫です」

    真央はその場で、愛菜先生に連絡を入れた。

    真央
    「放課後、ここに来てくれる?」

    沙耶
    「ありがとうございます。
    ……あの、お姉ちゃんには、内緒にしてもらえますか」

    真央
    「うん。担任と、つむぎさんには、内緒にしとくわ」

    沙耶はほっとしたように頭を下げる。

    沙耶
    「ありがとうございます」

    そう言って、沙耶は教室へ戻っていった。


    真央は、保健室へ戻る前に、そのまま愛菜先生のところへ向かった。

    愛菜
    「1年3組の態度が悪いのは、何度も学年会議で上がってるんよ」

    真央は黙って話を聞く。

    愛菜
    「中川先生に確認しても、悪い生徒を突き放してる感じで、
    注意すらしないの。
    だから生徒も直そうとせえへん」

    少し語気を強めて続ける。

    愛菜
    「野球部の監督にも相談したけど、
    『それはあなたの仕事でしょ』って言われてな」

    愛菜
    「1年の教科担当の先生は注意してくれてるけど、
    そのたびに授業が止まってしまうのよ」

    真央は一呼吸おいてから言った。

    真央
    「放課後、美咲さんにも来てもらっていいですか?」

    愛菜
    「そうやな。美咲に連絡しとくわ」

    真央
    「ありがとうございます。
    それと…沙耶ちゃんが、つむぎさんには内緒でって言ってました」

    愛菜
    「うん、わかった。それも美咲に伝えるわ」

    真央は頭を下げて、その場を離れた。


    保健室に戻った、ちょうどその直後。

    保健委員の沙耶が、クラスの生徒を一人連れて、保健室に入ってきた。

    その生徒は、体調が悪いわけではなかった。

    授業にならず、教室にいられなくなって来たらしい。

    担任には
    「体調不良」と言って、保健室に来たのだという。

    真央は、その様子を見ながら、静かに思った。

    沙耶自身が悩みを抱えながら、
    それでも、誰かのために動いている。

    1年3組の問題は、
    もう、個人の問題ではなくなっていた。


    放課後。
    応接室。

    沙耶と真央と美咲は、愛菜先生の到着を待っていた。

    少し遅れます、という連絡が入り、
    愛菜は美咲に直接電話をかけてきた。

    愛菜(電話)
    「美咲、悪いけど…15分だけ待ってくれる?」

    美咲
    「うん、わかった」

    電話を切ったあと、
    美咲は、沙耶がいつもより少しだけ肩に力が入っているのを感じ取った。

    空気をやわらげるように、自然に雑談に入る。

    美咲
    「沙耶ちゃんも、グルアイ好きなん?」

    沙耶
    「はい。お姉ちゃんの影響です」

    美咲
    「去年の舞洲ドームのライブは、つむぎさんと行ったん?」

    沙耶
    「はい。
    ……初めてのライブやったんです」

    美咲
    「そっかぁ。ええ思い出やなぁ」

    少し間をあけてから、美咲がふっと笑って言った。

    美咲
    「なぁ、沙耶ちゃんもチームアイドル入る?」

    沙耶
    「えっ?
    それって、何ですか?」

    真央
    「つむぎちゃんから、聞いてなかった?」

    美咲
    「あ、まぁええか。
    つむぎさん、ちょっと恥ずかしかったんかな?」

    美咲は照れたように笑ってから、沙耶の方を向いた。

    美咲
    「私と、真央先生と、つむぎさんと、花音さんの
    4人組グループやねん」

    沙耶
    「やっぱり…
    神戸摩耶のアイドル4人組ですね(笑)」

    美咲
    「はは、よう言われるわ」

    真央「聞いたことないですよ(笑)」

    そして、少しだけ真面目な顔になった。

    美咲
    「でもな、
    キラキラしたアイドルちゃうんよ」

    沙耶
    「……?」

    真央が、沙耶の目線に合わせるように、やさしく続けた。

    真央
    「チームアイドルっていうのは、
    誰かに見せるためのアイドルではないよ」

    沙耶
    「見せる…ためじゃない?」

    美咲
    「せやで」

    美咲は、ゆっくり言葉を選びながら話し始めた。

    美咲
    「しんどいときに、
    一人で抱え込まんでええ場所をつくるグループ、って感じかな」

    沙耶は少し驚いたように目を丸くする。

    美咲
    「仕事でも、学校でも、家庭でもな、
    『頑張ってるのが当たり前』って思われること、多いやろ?」

    沙耶
    「……はい」

    美咲
    「でも本当は、
    誰でもしんどい日もあるし、失敗もするし、
    元気なふりしてる日もあるやん」

    真央
    「チームアイドルは、
    そういう弱ってる自分を隠さなくていい場所やねん」

    沙耶
    「……」

    美咲
    「元気出して、前向いて、って言う場所でもないで」

    沙耶
    「え……?」

    美咲
    「今日はしんどいって言ってもええし、
    うまくいかへんって言ってもええし、
    泣いてもええし」

    少しだけ笑って続ける。

    美咲
    「ほんでな、
    誰かがしんどい時は、
    他の誰かがちょっと支える」

    真央
    「助ける、っていうよりも、
    一緒に立ってる感じやな」

    美咲
    「せやせや」

    沙耶は、静かにその言葉を受け止めていた。

    美咲
    「だから、アイドルって言ってもな、
    ステージに立つんちゃうで」

    沙耶
    「じゃあ、何をするんですか?」

    美咲
    「生きるのを、続けるだけや」

    沙耶
    「……え?」

    美咲
    「しんどくなっても、
    自分の場所をなくさへんように、
    誰かと繋がったまま生きる」

    真央
    「それが、チームアイドルやね」

    沙耶は、しばらく黙っていた。

    そして、ぽつりと小さく言った。

    沙耶
    「……私、
    入れるんですか?」

    美咲
    「もちろんやん」

    沙耶
    「私、成績も悪くなって…
    クラスでも下の方で……」

    美咲
    「成績、関係あらへんで」

    真央
    「ほんまに」

    美咲
    「むしろな、
    今日ここに来て、ちゃんと話そうとしてる時点で、
    もうチームアイドル向きやと思うけどな」

    沙耶は、少しだけ笑った。

    その時、応接室のドアが、軽くノックされた。

    愛菜
    「遅くなってごめんな」

    ようやく、
    本題の時間が始まろうとしていた。

    愛菜
    「遅れてすみません。
    早速ですが、始めます。井川さん、もう一度説明してもらえる?」

    沙耶は、昼休みに真央先生に話した内容を、もう一度、順を追って説明した。

    成績のこと。
    クラスで下から二番目になってしまったこと。
    そして

    1年3組が、授業に集中できる雰囲気ではないこと。
    野球部の生徒の私語が多く、勉強に集中できないこと。
    学校に来なくなった遥菜の様子も含めて、正直に話した。

    一通り話し終えると、美咲が静かに口を開いた。

    美咲
    「つむぎさんの名前は出さずに、まず担任と話します。
    そして、そのあと、担任も含めて、野球部の監督とも話しましょう。
    この件は、教頭にも報告しますね」

    沙耶
    「あの……私の名前、出してもらっていいです」

    愛菜
    「いいの?」

    沙耶
    「誰の話をしているか、わからなくなってきません?」

    少し迷いながらも、沙耶はまっすぐに言った。

    美咲は、やさしく首を振った。

    美咲
    「大丈夫やで。
    今回は沙耶さんの名前は出さない。
    クラス全体の問題として扱うから」

    沙耶
    「ありがとうございます。
    でも、お姉ちゃんには言ってください。
    私からも説明します」

    美咲
    「うん、わかった」

    沙耶は、ほっとしたようにうなずいた。

    沙耶
    「はい。
    チームアイドルに入れてもらえて、よかったです」

    愛菜
    「……えっ、何ですか?」

    沙耶
    「しまった……」

    思わず口に出してしまったことに、沙耶は慌てて口を押さえる。

    美咲
    「あはは、そうやね。チームアイドルやもんね」

    そして愛菜に向かって説明した。

    美咲
    「愛菜さんが来る前に、
    沙耶ちゃんが緊張してたから、
    ほぐれるようにグルアイの話してたんです。
    それで、あなたもグルアイの仲間やなって話してたんよ(笑)」

    愛菜
    「井川さん、かわいいから、
    ほんまにアイドルになるんかと思ったやん」

    真央
    「沙耶ちゃんなら、なれそうやけどな(笑)」

    沙耶
    「お姉ちゃんは、美咲さん推しですよ」

    美咲
    「私は花音推しかな。
    それで、花音は真央さんとつむぎさん
    推しやね」

    真央
    「じゃあ、私は沙耶ちゃんで」

    沙耶
    「じゃあ、私は…愛菜先生です」

    美咲
    「空気読めてる。さすがや」

    愛菜
    「若い子には、ついていけんね(笑)」

    応接室に、ふっと小さな笑いが広がった。

    けれど、その空気が落ち着いたあと

    1年3組の問題は、
    本格的に協議されることになった。

    美咲
    「今日は帰り、遅くなりそうやし…スタボコーヒーは延期にしてもらうわ」

    つむぎ
    「もちろんです。
    …沙耶ちゃん、大丈夫かな?」

    美咲
    「だいぶ元気になってきてたよ」

    つむぎ
    「それなら、よかった」

    美咲
    「じゃあ、行ってきます」

    つむぎ
    「お願いします」

    美咲は、静かに立ち上がり、応接室へ向かった。


    応接室には、すでに
    愛菜と、1年3組の担任・中川が揃っていた。

    愛菜
    「学年会議でも、何度も注意を受けていますが、
    1年3組の授業態度は、改善されないのですか」

    中川
    「授業に参加しない生徒については、
    当然、しかるべき対応を考えています」

    愛菜
    「どういう対応ですか」

    中川
    「全員、単位は付けません。
    落第になります」

    愛菜
    「えらい無責任ですね」

    空気が一気に張りつめる。

    美咲
    「愛菜先生、いったん落ち着きましょう」

    そのとき、応接室のドアが静かに開き、
    つむぎがコーヒーを持って入ってきた。

    美咲は一瞬で悟った。

    愛菜は、1年3組の件で、相当ストレスを抱えている。
    今日は最初から、かなりイラついている。

    一方の中川先生も、腕を組んだまま、むすっとした表情を崩さない。

    このままでは、話にならない。

    美咲は、空気を切り替えるように口を開いた。

    美咲
    「後日、野球部の監督と、教頭を含めて、
    五人で話し合いの場を設けます。
    今日は、いったん中止にしましょう」

    中川
    「わかりました」

    そう短く答えると、
    中川は、そのまま応接室を出ていった。


    美咲
    「愛菜さん。
    今日は、話にならなさそうやから、止めたわ」

    愛菜
    「美咲……ごめんな。
    私も、他の先生から、いっぱい相談受けてるんや。
    だから……イラついてしまった」

    美咲
    「『2年に上げへんからええ』っていう考え方は、あかんやろ。
    でもな……」

    少し言葉を選んで続ける。

    美咲
    「それだけ、中川先生も、追い込まれてるんやと思う」

    愛菜
    「そうやな。
    学年会議でも、中川先生、ほんまに疲れてる。
    他の教科担当は、誰一人、味方にならへん。
    ……私も含めて、助けてあげてないな」

    美咲
    「野球部を切り捨てる、って話やなくてな」

    少し声を落として言った。

    美咲
    「もうすでに、他の生徒が壊れかけてる。
    そこが一番、心配やな」

    愛菜は、静かにうなずいた。

    美咲
    「野球部に、何か問題がないか、
    一度、監督に聞いてみるか……
    それとも、生徒にヒアリングするかやな」

    愛菜
    「両方やな」

    美咲
    「うん」

    少し間があいてから、愛菜が言った。

    愛菜
    「正直な、
    遥菜さんのことも、ずっと気になってる」

    美咲
    「沙耶ちゃんが言ってた子やね」

    愛菜
    「そう。
    学校に来てないっていう事実だけが、
    先にひとり歩きしてる」

    美咲
    「担任は、問題行動のある生徒ばっかり見てしまう。
    でもな、
    静かに壊れていく子ほど、誰も気づかへん」

    愛菜は、ぎゅっと唇を結んだ。

    美咲
    「まずは、野球部の監督と話す前に、
    沙耶ちゃんが言ってた授業にならない空気が、
    本当に教室で起きてるのか、
    別の先生にも、もう一回見に入ってもらお」

    愛菜
    「授業観察やな」

    美咲
    「せや。
    正式な指導に入る前に、
    現場を、もう一回、見直そう」

    愛菜
    「わかった。
    私、時間割確認して、
    明日から誰か入れるように調整する」

    美咲
    「それともう一つ」

    愛菜
    「うん?」

    美咲
    「沙耶ちゃんが連れてきた、
    授業にならへんから保健室に来た子おったやろ」

    愛菜
    「あ……いたな」

    美咲
    「あの子にも、
    あとで個別に話、聞いたほうがええ」

    愛菜
    「確かに」

    美咲
    「うるさい子の話だけやなくて、
    耐えてる子の話も集めよ」

    愛菜は、深くうなずいた。

    愛菜
    「ありがとう、美咲。
    今日、止めてくれて正解やった」

    美咲
    「ううん。
    止めるのも、仕事やからな」

    その言葉に、
    愛菜は、少しだけ力を抜いたように笑った。

    こうして、
    1年3組の問題は、
    ようやく誰かを切る話ではなく、
    教室を立て直す話として、動き始めた。

    次の日応接室。

    美咲、愛菜、中川、教頭、そして野球部の監督がそろって座っていた。
    重たい空気の中、最初に口を開いたのは中川だった。

    中川
    「これ以上、このクラスの状態を放置するのは無理です。
    正直に言います。野球部は、いったん廃止すべきだと思っています」

    その言葉に、教頭がすぐ反応する。

    教頭
    「中川先生、それは現実的ではありません。
    生徒十五名を一度に切ることになります。
    そんなことをすれば、理事長や校長から、私が叱責されます」

    すると今度は、監督が強い口調で割って入った。

    監督
    「あなたの指導力がないからでしょう。
    授業中に私語を許すから、クラスが崩れるんです。
    練習中に雑談なんかしたら、私は叩きますよ」

    一瞬、空気が凍りついた。

    美咲は、視線を外さず、静かに言った。

    美咲
    「それは、体罰ですよ」

    監督
    「……は?」

    美咲
    「監督さんの指導で、選手たちはかなり萎縮しています。
    ずっと緊張状態で、ストレスも溜まっている。
    その影響が、教室にも出ているんです」

    監督
    「なんだと、この野郎」

    美咲は一拍置いて、淡々と返す。

    美咲
    「今の言葉遣い、聞きましたか。
    指導者として、その口調なんですね」

    愛菜も、すぐに続いた。

    愛菜
    「話になりませんね」

    教頭が慌てて止めに入る。

    教頭
    「監督、今の発言はまずいですよ」

    美咲は教頭のほうを向いた。

    美咲
    「教頭先生。
    この件は、校長先生と理事長に報告してください」

    愛菜
    「今のやり取り、完全にパワハラでしたね」

    美咲
    「今日の会議の内容は、報告書にまとめるため、録音していますから」

    教頭の顔色が変わる。

    教頭
    「さ、桜さん……。
    今の発言は、こちらからお詫びしますので、
    どうか取り下げていただけませんか……」

    愛菜は、静かに問い返した。

    愛菜
    「なぜ、教頭先生が謝るんですか。
    監督は、謝罪されないんですね」

    監督
    「いや……そういうつもりで言ったわけでは……。
    少し誤解があっただけで……」

    美咲は、はっきりと言った。

    美咲
    「いいです。
    いくらでも説明してください。
    そのまま、報告書に載せるだけですから」

    愛菜は席を立ち、はっきり告げた。

    愛菜
    「今日は、ここで会議を中止します」

    監督は、小さく頭を下げ、そのまま部屋を出て行った。

    残された教頭は、深く頭を下げる。

    教頭
    「桜さん、本当に申し訳ございませんでした」

    美咲
    「報告書は、予定どおり提出します」

    愛菜
    「私も、このまま見過ごすわけにはいきません」

    そのとき、中川が小さく手を挙げるようにして口を開いた。

    中川
    「……私も、今のやり取りはすべて聞いていました。
    必要であれば、証言します」

    美咲
    「ありがとうございます」

    教頭は、もう一度深く頭を下げ、応接室を後にした。

    静かになった部屋で、
    中川はしばらく俯いたまま動かなかった。

    中川
    「正直に言うと、
    私はずっと、野球部さえいなければと思っていました」

    中川
    「クラスを壊しているのはあの子たちだ、と」

    ゆっくり顔を上げる。

    中川
    「でも今日の話を聞いて……
    問題は、教室の中だけじゃなかったんですね」

    愛菜は、小さくうなずいた。

    愛菜
    「そうやね。
    子どもだけの問題やない」

    美咲も、穏やかな声で続ける。

    美咲
    「中川先生。
    クラスを立て直すのは、これからです」

    中川は、力なく笑った。

    中川
    「……井川さんや、登校できなくなっていた遥菜さんの顔が、
    頭から離れません」

    中川
    「もっと早く、気付くべきでした」


    中川は、深く息を吐いてから、小さな声で口を開いた。

    中川
    「……正直に言います。
    もう限界でした」

    二人は何も言わず、黙って中川の言葉を待った。

    中川
    「野球部の生徒が授業中に私語をしても、注意すれば反発される。
    部活のことで頭がいっぱいで、授業なんて誰も聞いていない。
    注意を続ければ、学年からも
    トラブルを増やすなと言われる」

    中川
    「かといって、放っておけば、
    真面目に授業を受けたい生徒が壊れていく……」

    中川は、ぎゅっと手を握りしめた。

    中川
    「だから……極端なことを言いました。
    単位を出さない、落第させる。
    それしか、思いつかなかったんです」

    愛菜は、ゆっくり首を振った。

    愛菜
    「中川先生が追い込まれてたのは、分かる。
    でもな、それを一番しんどい立場の子に背負わせたらあかん」

    美咲も、静かに続ける。

    美咲
    「問題を起こしてる側と、
    我慢してる側を、同じやり方で切るのは違うと思う」

    中川は、視線を落とした。

    中川
    「……井川さんの話を聞いて、
    初めて気付きました」

    中川
    「授業を壊しているのは一部でも、
    壊されている教室の中に、
    声を出せずにいる生徒がたくさんいたことに」

    そのとき
    応接室の扉が、そっと開いた。

    さきほどとは別人のように、
    野球部の監督が、深く頭を下げて立っていた。

    監督
    「この度は、本当に申し訳ありませんでした」

    監督
    「生徒の授業態度が悪くなったのも、
    部内の空気が荒れていたのも、
    すべて私の指導の問題です」

    監督
    「井川さんと、登校できなくなっていた遥菜さんにも、
    直接、謝罪に伺います」

    愛菜と美咲は、思わず顔を見合わせた。

    監督
    「正式な対応は明日発表になりますが、
    野球部は三か月間、練習を停止します。
    その後は、週に二日は必ず休養日を設けます」

    監督
    「今年の夏の大会は辞退します。
    部内で上級生によるいじめがあったこと、
    そして私の体罰についても、高野連へ報告します」

    監督は、苦しそうに言葉を続けた。

    監督
    「責任を取って、私は辞任するつもりでした」

    美咲は、首を横に振った。

    美咲
    「監督さん。
    プレッシャー、相当あったんですよね」

    美咲
    「大阪の甲子園常連校から来られて、
    この学校で結果を出さなあかん、
    そう思い続けてきはった」

    監督
    「恥ずかしい話です。
    結果が出ない苛立ちを、
    選手にぶつけてしまいました」

    美咲
    「それでも、お正月以外ほとんど休みもなく、
    ここまで部を引っ張ってきたのは事実です」

    美咲
    「立派やと思います。
    ただ、やり方を間違えただけです」

    監督の目に、涙がにじんだ。

    美咲
    「高野連の判断は受け止めてください。
    でも、辞めて終わりにはしないでほしい」

    監督
    「私が、残ってもいいのですか」

    美咲
    「はい。
    その代わり、これからは勝ち星やなくて、
    生徒の顔を見てあげてください」

    美咲
    「笑顔で。
    一人ひとりの名前を呼んで、
    授業も、様子も、ちゃんと見てあげてください」

    監督
    「本当に、申し訳ありませんでした」

    そう言って、監督は深く頭を下げた。

    その後
    高野連からの処分は、

    ・三か月間の対外試合および練習禁止
    ・監督への厳重注意処分

    となった。

    部内で体罰が確認されたこと、
    上級生によるいじめがあったことは重く受け止められたが、
    該当する部員が三年生であったこと、
    重大なけが人が出ていなかったことから、
    学校側の判断で夏の大会辞退をもって処分は確定した。

    そして

    応接室の片隅で、
    ずっと黙って聞いていた中川が、静かに口を開いた。

    中川
    「……私も、変わります」

    中川
    「壊れかけている教室を、
    見て見ぬふりは、もうしません」

    美咲は、ほんの少しだけ微笑んだ。

    教室は、まだ元に戻ったわけではない。
    けれど確かに、
    ここから、やり直せる場所になり始めていた。

    その日の夜
    井川家のリビングは、いつもより少しだけ明るい空気に包まれていた。

    父が新聞を畳みながら言った。

    「野球部の監督って、大阪の学校で甲子園に出てた、有名な人やったんやろ」

    沙耶がうなずく。

    「そう。家に謝罪に来はるみたい」

    少し緊張したように言う沙耶の横で、つむぎがぱっと顔を明るくした。

    「美咲さん、ほんまにすごいわ。
    やっぱり、私の推しやで」

    「そうそう」

    沙耶は嬉しそうに続ける。

    「私、美咲さんからチームアイドルの入会許可、おりたんよ」

    「それ、ほんまにびっくりしたわ」

    つむぎは笑いながら言った。

    「でも、歓迎やで」

    「嬉しいけどな、ライブ限定にするわ」

    沙耶は少し照れながら言う。

    「学校帰りに、他の生徒に見つかったらあかんやろ」

    その言葉に、つむぎがくすっと笑った。

    「じゃあ、研修生やね」

    「私も、美人三人組の中に入れてもらえて嬉しいわ」

    沙耶がそう言うと、つむぎは首をかしげる。

    「……だからさ。
    もう一人、美人おるやん」

    「えっ、花音さん?」

    「私、入ってたん?」

    「うん、入れてたで」

    つむぎは思わず笑ってしまう。

    「じゃあ、花音さんは?」

    沙耶は少し考えてから答えた。

    「綺麗っていうより、かわいい人やな。
    今いちばん人気やで」

    「どこにそんなランキングあるん?」

    「この前のことがあってから、野球部の子たちも態度改めて、めっちゃ緊張しててな。
    休み時間に、参考までに聞いてん」

    「なんか、よう分からんけど」

    つむぎは小さく肩をすくめて、やさしく笑った。

    「沙耶が楽しそうでよかったわ」

    すると沙耶が、少しだけ声を落とす。

    「その花音さんな…
    最近、物語にあんまり出てへんから、元気なくしてたで」

    つむぎは、迷いなく言った。

    「それは大丈夫や」

    沙耶の目を見て、はっきりと続ける。

    「この物語はな、チームアイドル全員が主役なんよ。
    花音さんも、すぐに出てくるから」

    沙耶はほっとしたように、小さくうなずいた。


    作者ゆうのあとがき


    今回の「1年3組の問題」は、
    実はかなり現実に近いテーマとして書きました。

    授業を乱す生徒がいると、
    どうしても目はその子たちに向きます。
    でも現場では、
    本当にしんどいのは、
    何も言わずに我慢している側であることがとても多いです。

    沙耶は、強い子ではありません。
    むしろ、弱くて、不安で、怖くて、
    それでも笑ってしまう子です。

    それでも彼女は、

    「クラス全体の問題として扱ってほしい」
    「でも、お姉ちゃんにはちゃんと伝えたい」

    と、自分なりに考え、選びました。

    大人たちも完璧ではありません。
    愛菜も、中川も、
    それぞれ追い込まれています。

    正しさよりも、疲労が勝ってしまう日。
    冷静さよりも、苛立ちが先に出てしまう瞬間。

    それでも美咲は、
    「今日は止める」という選択をしました。

    何かを前に進めるだけが仕事ではなく、
    止めることも、現場を守る大切な仕事だと、私は思っています。

    そしてこの回の裏テーマが、
    さりげなく出てきた「チームアイドル」です。

    特別な人が集まる場所ではなく、
    弱っても、失敗しても、居ていい場所。

    沙耶が
    「チームアイドルに入れてもらえてよかったです」
    と、思わず口にしてしまったのは、
    彼女がこの日、はじめて
    自分の居場所を実感できたからだと思っています。

    次回から、1年3組の問題は、
    少しずつ現場を動かしていく段階に入っていきます。

    でも、その一番最初のきっかけは、
    教室の後ろで笑っていた一人の女の子の、
    小さな勇気でした。

    ここまで読んでくださって、
    本当にありがとうございます。


    チームアイドル
    美咲・花音・つむぎ・真央・沙耶

    桜美咲シリーズ
    © Yuu & Sakuramisaki Project

     
     
    日々の中にある、うまく言えない気持ちを書いています。 がんばれない日や、少ししんどい朝も、そのままでいいと思えるような場所でありたいです。 静かに読めて、少しだけ気持ちが軽くなるような言葉を置いています。 そんな場所になれたらうれしいです。

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