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【創作大賞2024応募作】 Marshall 4 Season #13

    【タイトル】
    奮エテ眠レ / スローバラード


    前回までのM4S


    雲のように奔放で、何にも縛られることの無い男、藤川 虎太郎コタロー。



    何故「ギターは触らない」と言うのに、若干の未練を感じさせるんだろう。きっと何かワケがある。

    Noobは、まだ客が居ない今のうちに、と意を決してもう一度聞いた。

    「あ、あの虎太郎さん。なんでギターはもう触らないんですか?」、「一曲4、5分だけでいいんです」


               *


    虎太郎は、朝のうちに仕込んでおいたアヒージョや、さっと塩茹でしたヤングコーン、バルサミコ酢のかかったローストビーフ二切れを白い皿に盛り付け、仕上げに桜の花びらをさりげなく皿の端に飾る。


    「ちょっと食べてみて」



    それが何故ギターを弾かないのか、という質問に対する彼なりの回答なのかは分からなかったが、16歳の青年に差し出された皿は、ギターやラップのことなどは一旦忘れて、このまま駆け落ちしてしまいたい程のロマンに満ち溢れていた。

     ──絶対美味しいやつじゃんこれ。


    「ローストビーフは桜の木のチップを使って燻製にした。旨いんだコレが!風味が逃げないうちにどうぞ」


    「待て」からの「良し!」で、一気に食らいつくゴールデンレトリバーのようにNoobは目を爛々に輝かせ手を合わせた。


    「い、いただきます!」

    レア気味に焼かれた肉の赤身目掛けフォークを突き刺し、「んあむっ」と、一口で頬張る。

    バルサミコ酢の甘酸っぱい匂いと、燻したチップの何ともいえない香ばしい風味が、口いっぱいに広がり、
         理屈抜きで美味い。美味すぎる。 肉の甘みと桜らしいフルーティな香りが、最高の余韻を残して鼻から抜けていく。

               *


    「んんん!美味しい!!」


    Noobは、自分でもびっくりしてしまうくらいの大きな声で叫んでしまった。

    そんな様子をカウンター越しに確認して、虎太郎がニコッと、はにかんでみせる。

    ビリヤードに興じていたユウキたちも、思わず「やっぱダメか」と笑っている。


    「俺は、ここをちゃんと自分の店にしたい。だから、今は、音楽も喧嘩もしない。
    この店を姉貴やユウイチくんからある程度任された時に約束したんだわ。
    とりあえず3年は料理や店のことに集中するって。」


    一点の曇りもなく、Noobの目を見てそう伝えた。
    そしてこう付け加える。


    「それに今のままでも十分楽しい。そりゃギター触りてえなって思うときもあるけど。中途半端になるじゃん全部が、今音楽にも手を出すと」


    それを訊いてNoobは、何も言えなかった。

    「夢を諦めるな」、「前に進もう」と、多くの歌や音楽は、人間を鼓舞するけれど、虎太郎は己の行動や覚悟だけで、みずからを前進させ、そして人生を楽しんでいるように思える。

    そんな人間になんと言って一緒に音楽やりましょう、と口説けば良いのかなんてNoobには見当も付かない。


    だから、いつも施設でやっているように手を合わせて「ごちそうさまでした」としか言えなかった。


    「Noobくん、初めてだわ。自分の作った料理にちゃんと手を合わせてもらったの」
    虎太郎は、とても嬉しそうな様子でそう言った。



     ──カラン。
    「あ、今ってもうやってますか?」

    お客さまご来店。
    これ以上長居すると、お店に迷惑をかけてしまうと思ったNoobは、「あ、あの、美味しかったです!お邪魔しました。」と、頭を深々と下げ、足早に店を出た。

    Sunnyの3人組も、そろそろ練習行くわ、という流れで、このまま皆、現地解散となった。

    「んじゃまた明日ね!」

    「うん、またね!」

                                          
      
    Noobは一人、なんとなくこの街の活気を感じたくなって、大津通りから若宮大通りに出て帰ることにした。

    パルコ前のスクランブル交差点は、仕事終わりの人々や、これから夜の街に繰り出すであろう若者たちでごった返していた。

    若宮パークのバスケットコートでは、のんびりチルタイムに浸っている。

    みんなそれぞれの時間を過ごしているんだな。


    「作戦を練り直そう」
    Noobは、折を見て、Marshallに相談してみることにした。


               *


    2024年4月9日。

    その日は、Sunnyのチーム練習があるということで、ユウキ・美穂・ごっつんの3人とは合流せず、下校後は真っ直ぐ施設に帰った。


    Marshallは、小学校低学年の子どもたちと戯れていた。

    といっても、小さな怪獣たち相手に一方的に追いかけ回されているようにしか見えないが。


    「おいNoob、なんなんだコイツら!もう1時間はこんな調子だ!どうにかしてくれ!」

    Noobは思わず、「ぷっ」と吹き出す。

    「笑ってる場合か!」


    Marshallがここに来て3ヶ月、今ではもうすっかり名物職員になっていた。

    子どもたちの笑顔が増えたと評価も高い。

    施設長曰く、アニマルセラピーの臨床例として、行政の支援やクラウドファンディングで、資金調達も検討していきたいそうだ。


    「まーしゃる!」、「にげるな!」、「まーしゃる!」、「まてってば!」


    とはいえ、人間よりも猫の体力は格段に少ない。
    流石に、このペースを放っておくのは可哀想だ。

    「Marshallはみんなのオモチャじゃないんだよ?もう疲れてるからね。ちょっと休憩させてあげて」

    いよいよNoobも心配になる。

    「いやだー!」、「おいでよー」、「ねえ!まーしゃる、一緒に遊ぼうよー!」

    Marshallは、本棚から窓枠、窓枠から配電盤、配電盤からエアコンの排気ダクト、そこから吹き抜け天井の梁…と、ネコ科の運動能力をふんだんに駆使し、子どもたちから逃れる。

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    「ずるい!」、「おい、降りてこい!」
    子どもたちはいよいよ、むきになって怒ったりしているが、Marshallは遂に手に入れた自由を存分に見せびらかし、高みから見下ろしている。

    「はっはっはっは!どうだ小僧ども!お前らの都合なんて知ったこっちゃねえよ。ばーか!」

    全く、どっちが子どもなのやら。

    でも安心した。

    小さな身体を揉みくちゃにされたり、尻尾を掴まれ振り回されるMarshallなんて見たくない。

    出来るだけ自由に過ごして欲しい。


    虎太郎さんもきっとそういう事なんだろうな、と相談する前から憂鬱な気持ちになった。


               *

    子どもたちが、夕方のアニメを観に行く頃、ようやく話をしても良さそうな時間がやってきた。


    「で、なんだ話って」

    Marshallはよほど疲れたのか、背中側だけこちらに向け、尻尾をパタンパタンと上下に振って会話をしている。あまり機嫌が良くない。


    「9月の文化祭で、ラップすることになった」


    パタン。尻尾の揺らぎが止まる。


    「それで、ギタリスト候補の先輩に共演できないか直談判してみたんだけど、断られて困ってる。元々有名なインディーズバンドでやってたギターの名手なんだ。YouTubeにもあるよ」

    パタンパタンパタンパタンパタンッ!
    また尻尾を振り始める。

    しかも先ほどよりテンポが速い。
    BPMは恐らく100。

    「その人、飲食店でバイトしてて、"将来ここを自分の店にしたいんだ"って理由で、仕事に専念させてくれって言うんだよ」

    パタン。またBPMがゼロになる。


    「ねえ、どう説得すれば良いと思う?」


    ふぅ。とMarshallがようやく口を開く。

    でも背中はこちらに向けたままだ。

    顔は窓の外を眺めている。


    「何故そいつじゃなきゃダメなんだ」


    Marshallの問いは、Noobの問いでもあった。


    「なんでって、そんなの分かんないよ…」
    わかっている。自分でも情けないことは。


    しばらく沈黙が続く。

    この猫は、この問題の解き方を知っている。

    ただいつも、魚の釣り方を教えるまでで、魚を釣るのはボク自身だ。


    「"彼を知り、己を知れば、百戦危うからず“
    そういう事なんじゃないのか?」
    長い沈黙を経て、この猫はそう言った。

    Marshallの云わんとすることは、わかる。
    ただ、わかったところで結果が変わらないかもしれない事をNoobは危惧している。


    「どうせ今、“そんな事わかってるよ“って思ってるんだろ。甘いな。お前はわかっちゃいない。真のミュージャンやアーティストは、そう易々と手放せないのさ、音楽や芸術を」

    Marshallは正面を向き、そう告げる。

    「でも…」
    Noobの"でも・だって"がはじまる。

    「いいか、重要なのはまず、"己を知ること"だ。
    お前は本当に、ラップがしたいのか?
    本当にそいつと組みたいのか?話はそこからだ」

    ピシャリと、Marshallが諭す。


    「お前は、お前の歌を唄いたいんじゃないのか。
    お前の歌を聴かせたいんじゃないのか。

    …そこに迷いが生じるようじゃ、

    マイクなんて握る資格は、無いのかもな」



    言われっぱなしである。

    Noobは悔しかった。
    何も言い返せない自分が、悔しい。


    「アーティストの本質は、強烈なエゴだ。
    心の底から沸き立つマグマみたいなエゴが、
    身を焦がすほどの自己表現となって溢れ出した時、
    自ずと何をすべきか見えてくる」


               *


    その日の夜、Noobはなかなか眠れなかった。
    Marshallに言われたことが頭から離れず、
    ずっと考え込んでしまう為だ。


    ボクは何故、ラップをしたいと思った?
    母さんに聴かせたいから?

    …それは間違いじゃないけど、それが全てじゃない。
    何故ラップじゃなきゃいけないんだ?

    何に惹かれたんだ?
    Marshallが言ったのは、そういう事なんだきっと。

    懐中電灯でリリック帳を照らしながら読み返してみたり、Apple Musicのプレイリストを遡ってみたりもする。

    2024年、2023年、2022年、2021年、2020年、2019年…
    膨大な数の楽曲たちが年代ごとに分かれている。


    …あっ!
    そういう事なのか!

    ボクが中学2年の時初めて聴いた曲。
    いじめられっ子のボクが食らったあの曲。

    カッコイイからっていうより
    刺さってしまったんだ、あの時、確かに。

    初期衝動ってヤツを
    呼び起こしてしまったんだ。

    そこにヒントがあるはずだ。
    そこに原点があるはずなんだ。

    Noobは再生ボタンを押した。

    ZONE THE DARKNESS(ZORN)『奮エテ眠レ』 
    作詞・ラップ:ZONE THE DARKNESS
    作曲・Prod:Michita
    レーベル:F.i.V.E. Records(2010年リリース)

    引用:https://youtu.be/EggplZC8bM0?si=5sEHObDrEfhW3Y0p


    そうだ、これだ。
    この滾たぎるような情熱が、ボクの原点だ。

    見返したい。
    振り向かせたい。
    ボクも、彼らみたいに
    自分という存在を証明したい。
    だからペンを握り描き続けてきた。
    いつかステージに立つ日を夢見てきた。
    いつかマイクを掴み、未来をこの手で…

              *


    「虎太郎さんにも、そんな日があったはずだ。
    HIPHOPに、ファンクに、ブルースに、ジャズに、ソウルに、ロックに、人生を塗り替えられた夜が」

    その日、Noobは結局寝付けなかった。
    奮えて眠れなかった。

              *
              *
              *
             

    2024年4月10日。

    Noobは、明らかに寝不足で、朝方になってようやく睡魔がやってきた。でも朝だ。辛いが起きなきゃ。

    Marshallは、居間で子どもたちと朝の占いランキングを観ている。

    「てんびん座のあなたは、何をやってもダメ!怒られてばかりの1日になるでしょう。ラッキーアイテムは、『たこ焼き』です」

    バッカじゃねえの?と、思って眺める。

    Marshallに至っては、画面の端でチラチラ動く目覚まし時計のキャラクターに狙いを定めている。

    猫の本能だ。


    「おはよう、Marshall」


    一瞬ビクッとして、我に返るMarshall。
    「ふふふ。一晩眠れなかったのか」

    「おかげさまで。でもわかったよ。ボクがラップしたい理由が」

    「よかったじゃねえか。 
     ──で、こっからどうする」

    「今日もし会えるなら、虎太郎さんにまた会って話をする」

    「勝算はあるのか?」

    「うーん、何とも言えない。ただ、今日ダメだったらまた明日会って話をする」

    Noobは、きっぱりそう言い切った。



    ──そうか。
    少しだけ間を開けて、Marshallは返事をした。

    どうやら本気で覚悟を決める事が出来たようだな。
    そんな安堵と、若干の寂しさを含む返事をする。

    親心だ。

    「じゃあ、頑張れよ。ラッキーアイテムは『たこ焼き』らしいぞ」

    「占いなんか信じてないくせに。『手相?あんなもんただのシワだ!』とか言ってたじゃん」

    「うるせえガキだな。とっとと学校行きやがれ!」

    「"天運我に有り"でしょ?行ってきます!」

    青年が、朝の喧噪に向かっていく。

    「生意気言いやがって」 


     ──青年の背中を、いつまでもいつまでも、見届けるエメラルド色の瞳が、より一層輝いてみえた。


               *


    その日は、新学期オリエンテーションで、昼頃学校は終わった。

    ユウキたちにも話をして、今日また虎太郎さんに会いたい旨を伝えた。

    これにはユウキもびっくりしていたが、快く応援してくれた。

    「じゃ、また何か進展があったら連絡する」

    「おうNoob。虎太郎さん今日も店みたいだから、なんか差し入れでも持ってってやんなよ」

    「オレら、若宮パークで練習するから、何かあったらすぐ動くし」


    「あっ!たこ焼き!」Noobのおかしな発言に思わずユウキたちは「急に何だよ!」と笑い出す。

          
               *

    名古屋市中区大須にある『たこいち』
    一ノ瀬 雫のバイト先。
    Noobは差し入れのたこ焼きを購入しにやってきた。


    「ハイじゃあこれ、"おまけ"」

    「ちょ、ちょっと!"おまけ"って。こんな量のたこ焼き食べきれないよ!」

    「こっちがねぎ焼き10個、で、ソースマヨ10個、これが醤油マヨ10個で、んでコレは食べるラー油トッピングねぎ焼き10個、これは白柚子しょうゆ10個」

    「物価高騰が嘆かれる昨今の社会情勢を考えると、雫がやってることは、アルバイトの職権を大きく逸脱し、横領罪や窃盗罪にあたる可能性が…」


    「あるわけ無いでしょこの頭でっかち。これはアタシの奢り。食べきれない分は、ユウキ君たちに持ってってあげれば良いの!ホントに昔っからそう…。
    でも最近のNoobは、今までのNoobじゃないみたい。だからそれは奢り!頑張れ、MC!」


    準備は整った。あとは、思いを伝えるだけだ。

               *


    Noobは、待ち合わせ時間より10分早く着いたのにも関わらず、虎太郎は、ベンチに腰掛け、ヘッドホンで音楽を聴きながらくつろいでいた。

    しかも、今どきなかなかお目にかかれない、"ポータブルCDプレイヤー"だ。だいぶ年季も入っている。

    こちらもなかなかお目にかかれない量のたこ焼きを引っ提げ登場する。

    「すいません急に!あっこれ、友達のたこ焼き屋で…良かったらどうぞ!」

    「ハッハハハッハッハ!!いやーNoobくん。キミはアレやな。アホや。嗚呼ぁおもろ」

    「…いやいや、あっ。何を聴いてるんですか?」

    「あーコレは韻シスト。日本の生音系ヒップホップの先駆けかな」


    「韻シストお好きなんですか!?…ボ、ボクも大好きです」

    「カッコイイよなあ。よくコピーしたもん」

    「へえ。やっぱり音楽には色々思い出があるんですね。にしても、CDで音楽聴いてるんですね!珍しい」

    「うん。なーんかね、今どきのアレは好かん。スマホも好かん。だからCDで聴くかなオレは」


    そこから2人はベンチに腰掛けたまま、たこ焼きを食べ、CDで曲を聴いた。


    「レッチリも、レイジも。あとジミヘンとかツェッペリンとか色々。結構古いのが好きかな。あ、エアロスミスも好きだよ。だからラップも好き。」


    画像
    RUN DMC × AeroSmith 『Walk This Way』

    Japan Billboard
    『【第62回グラミー賞】ランDMCとエアロスミスが名曲「Walk This Way」で会場をロック』
    から引用。

    画像引用元:https://www.billboard-japan.com/d_news/detail/84321/2


    虎太郎が、自分の音楽ルーツを語りだしたところで、Noobは意を決して伺う。


    「じゃあ、虎太郎さんが一番最初に、心に刺さった曲は何ですか?」

    今回の最重要ポイントである。



    しばらく、考えた後、何かに想いを巡らせるかのように、虎太郎はこう答えた。




    「清志郎の『スローバラード』かな」


              *


    その横顔には、薄っすら涙が見えたので、Noobは、ハッとしてしまった。

    「姉貴とよく、車の中で聴いてた。
    姉貴が、親代わりにオレを育てるって決めた日から。

    よく一緒に車ん中で聴いてた。

    あの人がキャバクラで金貯めて、『Free』をオープンさせた日、オレこの歌を唄ってやったんだ。

    泣いてたよ。"嬉しい"つってさ。

    そしたらあの人、二年後に死んじまった。

    ようやくコロナ禍乗り越えたって時に。

    急性白血病だったんだ。今から一年前。

    そっからオレは…ただ闇雲に強くなりたくて

    力が欲しくて

    先輩の誘いに乗ってセキュリティや

    用心棒みたいな仕事もした。

    誰かのせいにしたかった。

    この辛さを、誰かにぶつけて憂さ晴らししたかった。

    でも、なんか違ったんだ。

    ずっと姉貴に怒られてるような気がして。

    どうして良いかも分からず。

    高校も辞めて、音楽も辞めて、何もかも辞めて。

    人生も終わらせようかと思った。

    まあ、そんな事したら

    それこそあの世で姉貴にこっぴどくシメられそうだから意地になって今は生きてるけど。

    ていうかずっとオレはあの頃の、
    姉貴がまだ生きてた頃の世界を大切にしてる。

    それが良いか悪いかは、わからないけど」


    そこには、鬼喰い虎でも、雲みたいな存在でもなく、社会の中で抗い、それでも懸命に生きている

    藤川 虎太郎(18歳)の姿しかなかった。

    この人は、伝説のアウトサイダーなんかじゃない。

    ボクと同じく、運命に翻弄されてしまった過去を持つただの人だ。

    Noobはそう感じた。

    「虎太郎さん、実はボクも…」

    ──そこから、母親の事、父親の事、いじめの事、ラップとの出会い、今回のライブ計画に至った経緯等を話した。

    「虎太郎さん、ボクはあなたと一緒にステージに立ちたい。

    暴力じゃなく、あなたの勇敢で、お茶目で。

    誰よりも優しい生き方に魅せられた人たちを

    ボクは知っている。

    そんなあなたの奏でるギターが

    きっと天国のお姉さんにも届くって、信じてる。

    だからあなたと組みたい。

    あなたじゃなきゃ駄目なんです。

    お願いします。

    ボクと一緒に、新しい伝説作ってください!」


    あとは、野となれ山となれ!
    Noobは、全身全霊で己の気持ちをぶつけた。


    「店の営業に穴は開けたくない」
    虎太郎は真剣な眼差しで一言そう告げる。

    続けざまにこう付け加える。

    「だから、定休日の水曜に練習。後は、テレビ電話とかチャットで音の確認とか連絡は取り合う。そこしか一緒になんかする時間は無い。それでも良い?」




    奇跡は、起こすからこそ価値がある。


               *

    RCサクセション『スローバラード』
    作詞・作曲:忌野清志郎 & みかん
    プロデュース:多賀英典
    レーベル:東芝EMI

    動画引用元:https://youtu.be/Z1pWOLBHpc4?si=E22RMq6Dx90TcJYD



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