
|一文だけ|犬の散歩 #ちゃんと文芸部
小学生の時、犬を連れて近くの小高い神社の階段を駆け上がり、ふと顔を上げると、向こうの玉垣に知らない男の人が斜めに腰掛けてこっちをじっと見ていて、まずこの狭い空間に人がいることに気づかなかったことと、自分と(犬と)男の人と2人きりだったことに本能的に危険を感じて、でも今目が合ったのに急に踵を返すと不自然だよな、追いかけられるかな、どうやったら自然な感じでこの場から離れられるかな、などと一瞬のうちに考えていたら、男の人が玉垣に腰掛けたまま、「犬、かわいいね、なんて名前」と話しかけてきて、もう恐怖はマックスで、とにかくこの場から逃げなくてはと、本当は境内を犬と走ってひとしきり遊びたかったけどもうそんなことはどうでもよくて、聞こえないふりをして、まるで犬の運動のために階段の上り下りだけしに来ました、みたいな感じでくるっと向きを変えて階段を駆け下り、一目散に走って帰った。
ちゃんと文芸部さんのお題、一文だけで書くというルールに挑戦させていただきました。