買収2回・売却2回の経営者に聞く無料セミナー
M&Aナビが東京・大阪で無料セミナーを開く。今この話題を取り上げる理由はシンプルだ。実際に会社を買って、売って、また買って、また売った経営者の話を直接聞ける機会は、意外と少ない。
> ひと言で言うと、M&Aは経験者の失敗談にこそ価値がある。
この記事のポイント
・なぜ買収2回・売却2回の経験者が選ばれたのか
・M&A仲介の構造的な問題が同時に噴き出している
・セミナー乱立の裏にある中小企業の後継者不足
何が起きたか
RBB TODAYが報じたところによると、M&Aナビが買収2回・売却2回を経験した経営者に質問できる無料セミナーを東京と大阪で開催する。マッチングプラットフォームを運営するM&Aナビは、群馬県の高崎信用金庫とも事業承継分野で業務提携を結んでいる。中小企業の後継者不在問題を背景に、こうした無料セミナーが全国で急増している。
なぜ「経験者に直接聞く」形式が選ばれたのか
M&A仲介会社の内部では、売り手と買い手の両方から報酬を得る構造がある。この構造自体が、中立性を保ちにくくしている。
日本M&Aセンターでは、仲介担当者が買い手側の不利な情報を売り手に正しく伝えていなかった疑いが報じられた。成功報酬の見積もりを書面で示さなかった点も、業界団体の自主規制ルール違反の疑いがあるとされている。
請求された報酬は 6千万円超 だった。売り手が事前に聞いていた「2千万円程度」から大きく膨らんだ。
こうした不祥事が表に出るたびに、仲介会社を介さず当事者の生の声を聞きたいというニーズが強まる。M&Aナビが「買収2回・売却2回」という具体的な実績を持つ経営者を前面に出したのは、仲介業者の説明ではなく、実際に修羅場をくぐった人間の言葉を求める市場の空気を読んだ結果だと見ている。
業界全体では今、中小企業庁が中小M&A資格試験の創設を検討している。受験資格はまだ未公表だが、士業であっても試験免除なしという案が出ている。業界の質を底上げしようという動きと、セミナーで経験者の生の声を届けようという動きは、根っこが同じだ。情報の非対称性をどう埋めるか、という課題に業界全体が向き合い始めている。
この構造、キャリアの判断軸に読み替えると
私がコンサル時代にM&A案件のデューデリジェンスに関わったとき、資料に書かれた数字よりも、実際に買収を経験した現場の人間の「ここで詰まった」という一言のほうがよほど役に立った。教科書的な説明では、失敗の匂いまでは伝わらない。
一つ目の気づきは、経験者の話は失敗の順番を教えてくれるということだ。買収2回・売却2回という回数は、単なる実績アピールではない。何度も意思決定を重ねた人間だけが語れる「ここで判断を間違えた」という具体的な順序がある。
二つ目の気づきは、無料セミナーが乱立する背景を見ると業界の焦りが見えるということだ。船井総研あがたFASや日本M&Aセンターホールディングス系のAtoG Capitalなど、各社が次々に無料・有料のセミナーを打ち出している。これは需要の裏返しであり、同時に競争が激しくなっている証拠でもある。
三つ目の気づきは、プラットフォームの中立性は自分の目で確かめるしかないということだ。バトンズがAIによる「ディープマッチング」を始めたように、技術は進化している。それでも最終的に信頼できるかどうかは、生の経験談と自分の判断力に依存する。私はそう割り切って動いている。
経験者の失敗談は、仲介業者の説明より先に聞く価値がある。
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