
障がい者雇用支援で見えた、職場で安心して働ける関係の築き方
「障がいのある社員に、どう接したらいいんだろう」
「配慮は必要だけど、注意しなければいけないときはどうすればいい?」
障がい者雇用の担当になって、こんなふうに悩んだことはありませんか。
障がい特性について調べてみても、実際に一緒に働いてみると、思うようにいかないことがあります。
私は7年半、企業在籍型ジョブコーチとして47人以上のメンバーと関わってきました。定着率は95.7%です。
その中で、何より大切にしていたのが、一人ひとりとの信頼関係でした。
毎朝、自分から挨拶をする。いつもと様子が違うと感じたら、声をかける。
特別なことではないかもしれません。
でも、同じ言葉をかけても、相手によって受け取り方は違います。
だから私は、障がい特性だけでなく、その人がどんな人なのかを知ることから始めていました。
今回は、私が現場で実際に行ってきたことをお話しします。
障がい者雇用の担当者だけでなく、部下やメンバーとの関係づくりに悩んでいる方にも、参考にしていただけたら嬉しいです。
1. 障がい特性だけでは、その人は分からない
障がい者雇用に携わると、まず障がい特性を理解しようとする方が多いと思います。
もちろん、それも必要なことです。
でも、同じ障がいがあるからといって、性格まで同じではありません。
何でも自分から話してくれる人もいれば、こちらから声をかけないと、なかなか話せない人もいます。
気になることがあっても、すぐに気持ちを切り替えられる人もいれば、家に帰ってからもずっと考えてしまう人もいます。
私は、障がい特性以上に、その人の性格や生活環境を知ることを大切にしていました。
ただし、生活環境について、こちらから何でも聞いていたわけではありません。
本人が話してくれたときに、初めて知ることもたくさんありました。
仕事のことではないからと、話すのをためらうメンバーもいました。
でも、仕事と私生活は、いつもきれいに切り離せるものではありません。
家で気になることがあれば、仕事中もそのことが頭から離れないかもしれません。
反対に、職場で気になることがあれば、家に帰ってからも考え続けてしまうことがあります。
だから私は、本人が話してくれたことを、仕事に関係があるかどうかだけで判断しないようにしていました。
その人のことを知る。
言葉にすると簡単ですが、実際には毎日の関わりの中で、少しずつ分かってくることのほうが多かったように思います。
2. 信頼関係は、毎朝の挨拶から始まる
私が毎日欠かさずしていたことがあります。
それは、メンバーへの朝の挨拶です。
相手から挨拶されるのを待つのではなく、私から声をかけていました。
「おはようございます」
本当に、それだけのことです。
でも、毎日顔を合わせていると、何となくいつもと違うと感じる日があります。
「あれ? 今日はちょっと元気がないな」
「何か気になることでもあるのかな」
そんなときは、少し様子を見るようにしていました。
ただ、ほかのメンバーがいる前で、いきなり事情を聞くことはしません。
2人になれるタイミングを見て、声をかけていました。
「今日、何かあった? いつもとちょっと違う気がしたんだけど」
すると、すぐに話してくれる人もいました。
一方で、話そうかどうしようか迷っている人もいました。
こちらが気づいたからといって、必ず話してもらわなければいけないわけではありません。
話したくないときもあるでしょうし、まだ気持ちの整理がついていないこともあると思います。
私は、無理に聞き出そうとはしませんでした。
ただ、何かあったときに「あの人になら話せる」と思ってもらえる関係でいたかったんです。
3. 「仕事のことじゃないから」と遠慮するメンバー
あるとき、いつもと様子が違うメンバーに声をかけると、こんなことを言われました。
「こんなこと話したら、ほかの人に何を言ってるのって思われそうで……」
「仕事のことじゃないし……」