メインコンテンツへスキップ
見出し画像

僕とニャンゴスターが結んだ悪魔のトレード 第7話「ニャッシュレス決済」【全10話】

    🎧 サントラ小説
    再生できる方は、本文と一緒にお楽しみください。

    【僕とニャンゴスターが結んだ悪魔のトレード】
    第7話
    ニャッシュレス決済


    世の中の子どもたちが待ちわびる夏休み。

    梅雨明け早々に北茨城の海へ旅立ったことは、僕の中で初めての「夏の思い出」になった。

    僕だけ特権の、一足早い夏休み。

    夏の太陽は眩しい。
    まるで地上のものすべてを焼き尽くすみたいに。

    雨が降らない日が何日か続くと、地面がカラッカラに乾いて、土が割れて小さな砂漠みたいになる。
    カラカラ砂漠をニャンゴ君が歩くと、黒い肉球が砂漠色に染まる。
    屋根瓦やマンホールが熱を貯めて熱したフライパンみたいだ。
    肉球が火傷しそうな夏休み。

    僕はこの夏に人工物で敷き詰められた街並みは人間の都合だけで作られているってことを知ってしまった。
    夏休みの自由研究を「野良猫と地球温暖化」ってタイトルにしたら担任の先生が僕の自由研究を一番にしてくれた。

    9月になっても生き物たちを焼き尽くす暑さは変わらない。

    ニャンゴ君は猛暑が苦手らしく、昼間はずっと家の中にいて、早朝と夜にお散歩へ行く。
    もちろん僕もおともする。

    モフモフの毛は夏毛に生え変わって少しだけスッキリしたけど、それでも暑い。
    散歩は三十分が限界だった。

    だから京都へは、涼しくなってから行くことにした。

    画像

    夏といえば花火。

    でもニャンゴ君は、花火が打ち上がると腰を抜かして、雷が鳴っても動けなくなる――クソアマタレの腰抜け野郎だ。
    僕が呆れていると、無愛想に、

    「夏はキライニャ」

    って文句を言った。

    僕は夏がキライでもスキでもない。
    だけど秋は大好きだ。

    いよいよ僕の大好きな季節がやってきた。

    十一月の水曜日。晴れの日に、第二作戦を決行する。

    今回の目的地は、京都の東福寺。

    東福寺の奥にある龍吟庵というお寺を目指す。
    なぜ東福寺かって?

    理由は、京都駅から遠くないこと。
    それから龍吟庵が一般公開されていないから、人が少ないと予測した。

    しかも二種類の枯山水があるらしい。
    一度で二度美味しいってこと。

    あとは個人的に、僕の大好きな真っ赤な紅葉が有名なお寺だったから。

    もちろん情報は、インターネットで調べ尽くした。段取りは完璧だ。

    しかも今回は新兵器を導入した。

    なんと、キャッシュレス決算ができるスマートウォッチ。

    僕のスマホが近くになくても使えるように新規でLTEを契約して、スマートウォッチに電話番号を入れた。
    目的は二つ。

    ・時間管理(リアルタイムで「今、何時何分か」を確認できる)
    ・非接触決済(ニャッシュレス)

    スマートウォッチに個人情報も登録した。

    もしニャンゴ君が人間に捕まって袋叩きの刑にあってしまっても、
    もし僕が意識不明で救急車に運ばれてしまっても、
    お母さんに繋がるように設定した。

    「そんな高いの、小学生が買うのはムリにゃろ」

    ってニャンゴ君は心配してくれた。

    でも僕には、ずっと貯めてきたヘソクリがあった。

    出どころは、長年もらったお小遣いとお年玉。
    お母さんの実家はお金持ちで、おじいちゃん、おばあちゃん、オバサンからもらってきたお金だ。

    半分はお母さんが僕の口座に貯金して、半分は僕の好きなことに使っていい。
    でも僕なんかに、お金を使うところなんてなかったから、着々と増えていった。

    LTEの契約は子どもの僕にはできないから、お母さんに頼んだ。
    細かい仕組みはたぶん分かってないのに、迷わず手続きを進めてくれて、あっという間に準備が整った。
    メカ音痴なお母さんで、本当に良かった。

    新兵器のスマートウォッチで、前回の失敗の改善を試みるのが狙いだ。

    どこにつけると思う?

    さすがに猫の腕にはつけられない。

    だから僕は男性用の細長い皮の時計ベルトを見つけて、スマートウォッチのベルトと交換した。

    ニャンゴ君は「すこぶる邪魔ニャロ」って目を細めた。

    僕のお手製の、スマートウォッチ首輪だ!

    さっそくニャンゴ君の首にスマートウォッチを装着し――

    さぁ、いざ秋の京都へ……出陣だ!

    画像

    松戸駅から品川まで、上野東京ライン品川行きのグリーン車で品川駅に到着した。

    今回の一番の課題は、新幹線乗り場だ。

    新幹線の線路は普通の線路と地続きじゃない。
    東京駅も品川駅も京都駅も、新幹線に乗るには――人間たちと同じルートをたどらなきゃ、ホームにたどり着けない。

    だから僕たちは、東京駅より乗り換え客が少ない品川駅を選んだ。

    捕まってしまうかもしれないリスクを負って、僕たちは常磐線が到着する品川駅11番線から、新幹線ホーム23・24番線まで――無法地帯をダッシュすることにした。

    いよいよ常磐線上りの終点、品川駅に到着した。

    僕たちは同じ車両の乗客が全員降りたのを確認してから、一気に走り出した。

    品川駅の11番線は、下り東海道線も停車する人気ホーム。
    人混みと、人間がゴロゴロ鳴らして持ち歩くスーツケースの間を縫って走る。

    ごった返す人間たちは、まだニャンゴ君の存在に気づいていない。

    階段付近に到着したとき、一人目が叫んだ。

    「猫だ!」

    雑踏にまぎれながら、階段を駆け上がる。
    階段の終わりが見え始めたころ、別の人がまた言い出して、人間たちの足元が止まり始めた。

    「猫だ!」

    一人、二人、と人間の動きが戸惑いで鈍る。

    ニャンゴ君は余裕な様子で言った。

    「好都合だニャ」

    僕は息も絶え絶えで叫ぶ。

    「ニャンゴ君、左だ!」

    広いコンコースを左に曲がる。
    駅弁屋さんを横目に、新幹線構内の改札へ。

    「猫がいる!」という声が止まない。

    何を言われようと、振り返れない。
    前方ではスマホを向けて写真を撮っている人も見えた。

    でも僕たちはスピードを緩めず、そのまま新幹線乗り場――南改札口を抜けた。

    新幹線改札の中は、さっきほど人が多くはない。
    でも、かくれんぼできそうなスペースがない。

    僕は弱気になった。

    「どうしよう……このままだと、飛び乗る瞬間を見られて新幹線が止まっちゃうかもしれない。隠れられそうな場所がないよ……」

    そのときだった。

    ニャンゴ君が、構内に設置されている燃えるゴミの穴に飛び込んだ。

    レシート。
    飲み終わったコーヒーくさい紙コップ。
    食べ終わった弁当の容器。

    「うわぁ……なんだよここ。最悪の環境じゃん!」

    「つべこべ言うなニャ!ここしかなかったニャロうが!」

    ラッキーなことに、ゴミ袋もゴミ箱も半透明で、外の様子がうっすら見えた。
    ――ってことは、向こうからも見えるってことだ。

    僕たちは息を止めて一時停止。
    ゴミ箱の中の雑巾柄になりきった。

    「こりゃ、しばし休憩ニャね」

    目撃情報が入ったらしく、駅員さんが何人もウロついている。
    大きな網を持ってる人もいた。

    「ネコ探し? 冗談だろ……」

    小声の愚痴まで聞こえた。

    でも、やる気のない駅員さんたちは、五分もしないうちに捜索場所を変えて消えていった。


    問題は、下りホーム23・24番線へ降りるエスカレーターだった。

    ひっきりなしに人が降りていく。
    僕らが降りられる隙なんて、いつまでも来ない。

    するとニャンゴ君が、次の手に出た。

    人が少なくなった瞬間を見計らい、京都方面とは反対側――
    21・22番線の上りエスカレーターを確認する。

    「上がってくる人がいない……よし」

    ニャンゴ君は、逆走し始めた。

    「なにしてるの!?こっちは逆だよ!」

    でも――逆走は正解だった。

    僕たちは人間に見つかることなく、ホームへ出られた。

    22番線へ到着する次の東京行きは、まだ来ない。

    僕たちはすかさず22番線のホームドアを飛び越え、線路側に避難した。

    反対側――名古屋・大阪方面のホームは、下りの新幹線を待つ人でいっぱいだ。

    そのとき、アナウンスが流れた。

    「まもなく、のぞみ65号広島行きが23番線に参ります」

    僕は急いで言った。

    「京都行きの新幹線が、向こう側のホームに来るよ!」

    ニャンゴ君は22番線の線路から、23番線の線路へダッシュした。
    そしてホームドアの内側へ、よじ登る。

    そのままホームドアを越えるのかと思いきや――
    ニャンゴ君は、ドアの内側で止まった。

    そこには四角い突起物がある。
    ホームドアの土台みたいなやつだ。

    でも、ギリギリ。
    本当にギリギリ。

    シッポを内側に丸め、ニャンゴ君は身を低くした。

    地鳴りみたいな低音が、線路から響いてどんどん迫ってくる。

    新幹線が、近づいてくる!

    つづく🐾

    ↓↓↓ 第8話「#猛ダッシュにゃんこ」



    ーモフモフ🐾余談ー

    このシーンを思いついたとき…
    スマートウォッチが猫の首に装着できるのか!?実験しました(笑)

    画像
    ニャッシュレス決済🐾


    ニャンゴ君…ちょっぴり苦しそうでしたが
    このベルトを細いのに変えられたらスマート首輪だぞ!!!って(*ノωノ)きゃー♡

    画像
    スマートウォッチは
    モッフモフの襟足に埋もれてしまいます💦
    画像
    すこぶる邪魔ニャロ…
    夏はキライニャ🥵

    次回…第8話ニャンゴスターの誕生🐾

    このスマートウォッチがどんなトラブルを引き起こすのでしょうか!?
    いよいよニャンゴ君が、世界のニャンゴスターに進化します♡ふっふっふ|ω・)♡

    この記事が参加している募集

     
     
    アッʕ°ᴥ°ʔ!? 🐢は小説家でした。 小説を読んでもらう為にnote始めて早1年。 うっかり忘れ去られる前に一句。 雨上がり 望む秋晴れ 冬支度 小説、詩、エッセイ、AI記事 飯泉ひろみ は小説ペンネーム✒️ 「言葉の魔法使いミルア」の世界へようこそ──🐾♾️

    あなたへのおすすめ