
残されたメモ 「さようなら」 拝啓文芸部
「さようなら」
残されたメモには、たった一言書いてあるだけだった。
出張から帰ると、君の荷物は全て運び出されていて、妙に部屋が急に広くなったように感じた。
なぜ、急にいなくなった。
1枚のメモだけ残して、俺の気持ちを考えもせずに。
大きく溜息をついて、ネクタイを緩めた。
冷蔵庫を開けると、いつものビールが5本冷やしてあった。
そして、俺の好物の肉じゃがとほうれん草のお浸しの作り置きがあった。
なぜ?
上手くいっていたと思っていたのは、俺だけなのか?
「さようなら」って、メモを1枚だけ置いて逃げちゃった。
彼がちょうど、3日間の出張でさ、
荷物を運び出して、さようなら~よ。
なんでって?
初めはね、素敵な人だなあ。
それなりに収入もあるし、
見た目も、あれじゃん。
いいじゃん。
「一緒に住もう」
と言われたから、一緒に住んだけど…
ドケチなの!
すっごく細かいの!
水道代・ガス代・電気代が、ぱんと上がるでしょ?
「使いすぎだろ」
て言うのよ。
女性が一緒に住みだしたら、
それなりにかかるでしょ?
それだけじゃないのよ。
料理の材料にしても、
スーパーの最低価格で買えとか、
もう、本当に細かい。
そのくせ、自分は家事をしないのよ。
私は、同じように働いているし、
生活費だって半々。
もう、あんな男、こりごりだわ。
ストーカーにならないかって?
それは、多分大丈夫。
私、本名・会社・戸籍とか、個人情報を伝えてないし。