
未開封の段ボール #拝啓文芸部 #ショートショート
「家賃未納のまま行方不明になられてですね、こっちも困ってるんですよ。家賃と残った物の回収をお願いできませんかね」
音信不通になって10年。訪ねていっても玄関のドアさえ開けない息子のアパートの大家からの電話だった。
アパートのドアを開けると、そこには段ボール箱が1つ置かれているだけだった。
「なんだよ。ぬけの殻じゃないか」
仕方なくダンボール箱を持ち上げた。妙に軽い。揺らしてみると、ゴトゴトとは言っている。中身があるにはあるらしい。
テープをはがして開けてみた。そこにはもう1つの段ボールが入っていたが、なぜか目の前に幻影が浮かんだ。
産婦人科の廊下の長椅子にオレはかけていた。そして、分娩室から看護師が出てくる。
「おめでとうございます。男の子さんですよ」
そこで幻は消えた。
次の箱を開けた。またその中に箱がある。そしてまたイメージが浮かんできた。
小学校の入学式。元気に校門に入っていく息子を見送るオレ。。。
次の箱。
中学でバレー部に入った息子の試合を応援するオレ。
「キャプテンなんて務まるのだろうか?」
次の箱。
高校受験に失敗し、滑り止めの私立に入った息子。勉強もせずに小学校低学年向けの漫画ばかり読んでいる。腹が立ってそれをオレはビリビリに破っていた。
次の箱。
大学受験でなんとか底辺の私立の理系に入った息子。なんとお金がかかることか。
次の箱。
遠方の都会に就職した息子を駅まで送る。息子は一言も発さない。それ以降、電話をかけても、手紙を出しても音信不通だった。
次の箱がどうやら最後らしい。揺らしても音はしない。それを開けると、目の前が真っ暗になった。。。
ふと目を開けると、オレは産婦人科の廊下の長椅子に座っていた。