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メガネ屋がメガネを販売しないとき

    メガネ屋で働いてると、ときどきこちらが購入を断ることがある。
    これってお客さんがカスハラしてくるとか、何かしらの問題があるからじゃない。
    そもそもメガネでどうこうできないからだ。


    「急に見えにくくなってなぁ」
    「だから度数を合わせてくれ」
    そう言われて度数を測定してみると、今のメガネとはかけ離れた数値。その度数のメガネをかけたとしても視力は0.5くらい。
    これ、運転免許の試験すらも通らない。
    ここまで来るのにも見えにくかったはずだ。よくぞここまで辿り着いたな勇者よ。

    結果をそのままお伝えし、メガネの度数を変えても改善はないこと、そして何か眼の中に疾患があってはいけないので眼科に行ってみるのを提案すると、
    「なんとかしてくれ!」
    「眼科は行きたくないんよ!」
    右手の渾身のアッパーカットでそのメガネごと目ん玉潰してや(自主規制)

    そんなわけにもいかないので、僕は穏やかにお断りする。


    眼の疾患というと様々あるけれど、メガネ屋では何があるのか、それとも何もないのか、それは判断できない。
    そんな機械はないしドクターでもないし。

    でもとりあえずメガネではどうしようもないから、眼科受診を勧めているのだ。
    そもそもメガネがあるのは眼の外だ。もしも眼の中に何か見えにくい原因があったとしたら、眼の外であれこれやったって何の意味もない。
    (そうとも限らないパターンもあるけれど)

    それにこっちは一応は商売なので、何か良さげな風にやってなんとか視力0.5が0.6になるかならないかくらいを探して、
    「これなら今より“見えやすく(あくまで今と比べたら)”なりますよ!」
    みたいに良い感じに言いくるめて販売に持っていくことだって、物理的にはできなくもないのだ。精神的にやらないけれど。

    つまりはメガネ屋が眼科受診を勧めるのは、売り上げも捨てて、その人のために言っているということ。
    そしてそれだけ早く行って欲しいということだ。

    それなのに、
    「度数上げたらなんとかならんのか!?」
    「いいから2回りくらい度数を強くしてくれ!」
    左フックも加えてそのメガネごと目ん玉吹き飛ばしてや(自主規制)

    というわけにもいかないので、僕はあくまで穏やかに説得する。
    「度数を2回り強くする」も意味がわからないけれど。2倍ということか?


    販売してる側が販売を止めるって、これはよっぽどだと思って欲しい。
    念のためという場合もあるけれど、取り返しがつかなくなってからでは遅いのだ。
    それにせっかくなら、見える状態で買ってよかったと思ってもらえるメガネを売りたい。

    「メガネじゃ無理かぁ〜」
    という言葉が出てきたらそれが試合終了のゴング。燃えた。燃え尽きたよ。


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