メインコンテンツへスキップ
見出し画像

妄想日報 6月27日「勧進帳」

    8:48出勤。
    生きていると、ヒトには変わった趣味や関心があるものだなあと驚かされることしきり。今日のテルさんなんかマサにそれ。昼休憩時、熱心に語り出したその内容は
    「ボクずっと見てますよ。指名手配犯の顔写真。だって見つけたら懸賞金スゴイもん!ほら!この物件なんて800万円!コッチは少し落ちますけど600万円ですから!」
    皆が「がめついなあ!」「『物件』って言うところがイヤラシイ」「なに?テルさんって勤務時間外はバウンティハンターやってんの?」とナカバ呆れる。
    「だいたい、もし見つけたところでコワイじゃない?わたしソウイウのダメ!アンタ気をつけなよ!」と心配する姉貴のようなキリさん。それに応える弟のようなテルさんは
    「捕まえないですって!安心シテ!ボクもコワイもん。通報だけ。でも、賞金って通報するだけでもらえるんですよ!
    あの整形して逃亡した福田和子の『松山ホステス殺害事件』。公訴時効ギリギリに賞金が懸けられて、同じおでん屋の常連客だった一般人が通報して捕まったんですから。
    おかげで、のちに『捜査特別報奨金』って制度が正式に設けられて。過去60件くらいのうち10人以上がまさしくゲットしたそう!
    だから、八田に見立に小暮/小原 上地/宮内 又吉/菱川!ボクがコイツら、かならずゲットだぜ!賞金首ゲットだぜ!あはは!」
    と、まるでお気に入りのモンスターの名前のように指名手配犯を数え上げ、こころなしか目もガンぎまり。
    そんなおり、お隣の弁慶課長が部下の強力(ごうりき)さんを連れ、部長のもとへとやって来た。先日来、不調法のあったプロジェクトについて、改めて自分たちに任せてくれないかとの進言。
    ひとしきり弁慶課長の流れるような、まさに「勧進帳読み上げ」さながらの見事な上申を聞いた部長は
    「いや、でもあの失敗はサ、アナタのトコの義経くんの不手際だったわけだよね?そのへんウヤムヤにしたままで雲隠れして、またぞろアナタが別の部下とやりたいってナ。どうにもヒトをケムに巻いてるっていうかサア。
    …というより、ソチラ強力さん?あれ?義経くん…じゃないよね?ナンカお顔が…」
    「いや!…コレは義経じゃありませんね」と弁慶課長。
    「…そおう?なんだか、とっても似てる。…パーマの感じはちがうけど、目元なんかソックリ、っていうか」
    「いえ!似ていませんね。コラ、お前!かっ、お前のせいで。部長さんに自分の口で言わんか!かっ、コイツ!まったく、オマ!」
    けっきょく首をひねりっぱなしの部長からの一応の承諾をもぎ取るがはやいか、弁慶課長は強力さんを匿うようにソソクサ自分の席へと戻っていった。
    そんな課長たちを、特に強力さんのほうを時折うかがうテルさんとキリさんの眼差しは、なぜか異様に妖しくギラギラと輝いていた。

    #創作 #短編小説 #ショートショート #日記 #3行日記 #勧進帳 #弁慶 #源義経 #強力 #指名手配犯 #なんのはなしですか

    この記事が参加している募集

     
     
    都内某動物園に在住のきりんです。 ランチタイムの枝つきの葉っぱを待ちわびて、つれづれに妄想しています。 妄想の中では、ヒトとして働いています。 ヒトとして暮らしています。 ヒトとして確定申告もしています。 ヒトとしてnoteに投稿もはじめました。 首によりをかけて妄想します。

    あなたへのおすすめ