
北斎に喧嘩を売り続けた結果、本人に呼び出された話 - 北斎忌 -
数あるnoteの中から
こちらのnoteに遊びに来ていただき
ありがとうございます。
今日は北斎にまつわる
ちょっと不思議なお話。
北斎ぎらいです
どうやらもう
これはご本人にもバレているようなので(笑)
隠さずお話ししてしまうと
私は「北斎ぎらい」です。
北斎展などにも足を運んでおりますので
決して
浮世絵を見る機会や
鑑賞している作品数が
少ないわけではないと思います。
でも。
浮世絵の黄金時期の歌麿も広重も、
そして時代の黄金期から少し外れている
鈴木春信や月岡芳年も。
どの絵もいいなぁと思う反面
北斎だけは
上手には描けているなと思っても
良い絵なら必ずもっているはずの
「声」を、受け取れない。
北斎の絵は最近も
さまざまな展覧会で
お目にかかってはいるのですが
その度に「別にうまいと思わない」「声が聞こえない」と、
気のおける仲間にだけは
伝えていました。
世間では北斎って大大大人気ですので。
「アンチ北斎(小声)」を叫んできたわけです。
90歳まで生きて
描けないものはないと言われた北斎。
そんな彼が聞いたら
説教されるだろうな、というくらい
失礼なことを言ってきたと思います。
そんな折、
北斎に完全敗北。
アンチを取り込む
器のデカさを
目の当たりにさせられました。
お墓参りにて
北斎のお墓は
台東区かっぱ橋(田原町駅)近くの
誓教寺(せいきょうじ)にあります。
どなたも訪問できますので
ご興味のある方はぜひ行ってみてください。
前に何回か伺ったことがあるのですが
ちょうど前を歩いたので
立ち寄ってみました。
(詳しくは書きませんが
これも私の意思ではありません)
私は、お恥ずかしながら
墓前でもブレずに図々しいもので
「あなたの絵がずっと理解できないので
わかるようになりますように」
とお願いしました。
相変わらず失礼なのですが。
帰ろうとした時に
突然女性から呼び止められました。
お寺の関係者の方でした。
北斎忌でした
北斎がなくなったのは90歳、
嘉永2年4月18日(1849年)です。
私が訪れたのはその4月18日。
偶然にも北斎の命日だったのです。
お寺の方に呼び止められたのは
「本日は北斎忌で
中で北斎の絵なども飾っていますので
みていかれませんか?」
とのお誘いでした。
しまった。
命日に
すごく失礼なことを言ってしまったな、
とすぐに思いました。
北斎忌には
きっととびきり北斎のファンが集まりますので
そんな日に「あなたの絵はいいと思いませんけど」なんて。
北斎からしたら
なんちゅうやつがきてるんだ、と
すごく目立ったに違いありません。
お宝展示、ぞくぞく
そんな私のようなものが
お邪魔して良いのかな。
と迷いつつも伺うと、
二つの和室が通しで開かれていて
北斎の絵の展示部屋になっていました。
北斎忌にだけ展示する貴重な絵なのだそうです。
写真撮影禁止になっておりましたが
同じく行かれた方の記事で
(以前は撮影OKだったのかも)
展示されているものが
写真入りでご覧いただけます。
北斎漫画。
展覧会では開いた状態のものが
ガラスケースに入って
丁重に展示されているものですが
全15巻、すべて手にとって読むことができました
「骸骨図」は晩年に描かれた肉筆画で
お部屋の一番奥にかけられていました。
森アーツセンターギャラリーのときにも
肉筆画は貴重だということで
話題になった記憶があります。
今回拝見できたのは
最晩年の肉筆画。
これまた、大変貴重な絵です。
ぜんぶ、北斎のしわざ
そんな展覧会の名前がありましたが。
お部屋に入った時にわかったのです。
「ああ、そういうことか」と。
「ぜんぶ、北斎のしわざ」だったのです。
ペーペーの小童が
「うまさがわからない」と
わめくものだから
「仕方がないから
ちゃんと俺の絵を見ていけ」と。
呼ばれたのです。
仕組まれていました。
北斎って、、、。
いろんな逸話が残されていますが
気難しい人なんだろうな、と思っていました。
絵自体も、自己主張の強い絵で
絵の美しさそのものよりも
「俺ってこんなのも描けてすごいだろう」が
全面に出ているものですから、
どうしてもそこが苦手で。
声が聞こえない、よりも
声を聞かないようにしていたのは
私自身だったように思います。
でも、そんな私に、
命日に失礼なお参りをしたにもかかわらず。
北斎は、招き入れて
絵を見せてくれる人だったのです。
実際呼び止めてくださったのは
そのお寺の女性ですが。
仕組んだのは北斎でした。
嫌いだと言っている相手でも
お構いなしに家に招き入れて絵を見せる。
なんとも、北斎らしいやり方だなと
口元が緩んでしまいました。
大きな器で受け入れる姿勢。
人として、絵師として
惚れないわけがありません。
北斎の絵との対峙
北斎に
こうまでされてしまっては
「食わず嫌い」するのは大変失礼です。
私はなにがなんでも
北斎の絵がわかるようにならなければなりません。
ただ、肝心の北斎は
「見ていけ」とは言う割に、
絵のことは全く教えてくれません。
「俺のやってきたことを、見ればわかる」
といった態度で。
北斎漫画15巻を喰いるように読みました。
けれど、見ても、まだわからない。
声も聞こえない。
ただ、何もないわけではありませんでした。
北斎漫画をめくっていると
北斎は本当に、描けないものがないのだとわかります。
ありとあらゆるものを描いています。
そして、そのどれもを、楽しそうに描いている。
そこまでは、確かに届いたのです。
けれど、その先——
デューラーのような覚悟も
シーレのような内面の差し出しも、
フェルメールのような節度も
まだ受け取れていません。
北斎は広重より、ずぅーん、と重いので
絵の中(裏側?)に密度があるのに
それを全然見せてくれないのです。
彼の場合は、最初に聞こえたまま
「みればわかる」
これがメッセージです。
それ以上もそれ以下もないのです。
「わかるまで見続けろ」
という意味でもありますね。。
今後も北斎の絵にある機会は多分にあるでしょう。
その度に、今日のことを思い出し
彼のことばに耳を傾ける日々になりそうです。
きこえたら、
まっさきにnoteでレポートしたいと思います。
「あちらの声をきくアート鑑賞」のはずなのに
まさか
あちらさんに
こちらの声を聞かれてしまうとは。
今回はなんとも不思議な体験話、でした。
質問、聞きたいこと、ご感想等、
お気軽にコメントを書いていただけるとうれしいです。
記事をまとめてみました。
ご興味のある記事がありましたらぜひお読みください!
はじめに01 -絵の声を聴く、アート鑑賞について- 好きな画家さん一覧
https://note.com/killamaru/n/n0cb504116a87
書き始めた経緯やこのNoteの説明など
はじめに02 -アートの声を聴く鑑賞について-
https://note.com/killamaru/n/n3b42879699f8
「はじめに」の続きですが、私のNoteの中では、♡率が高くて、ありがたいです。
はじめに03 -審美眼は何年で身につくもの?
https://note.com/killamaru/n/ne9792bc439fe
<ドイツ旅2026>
ドイツから戻ってきました -2026.01.13 近況報告-
https://note.com/killamaru/n/nce677f79afbc
デューラーと話したくて家に2回おしかけた話 - デューラーズハウス -
https://note.com/killamaru/n/n681100d72660
フェルメール報告会 - ドイツ旅で鑑賞した絵のレポート -
https://note.com/killamaru/n/n9509726b7b11
フェルメールに隠された法則 - 嫌いだったフェルメールが好きになれた秘密 - [ディープ]
https://note.com/killamaru/n/nab3fbbd02386
<若冲>
若冲からはじめて呼ばれた話 -泉屋博古館東京-
https://note.com/killamaru/n/n79a61287feed
若冲は、今日も私を呼ぶかしら - 三井記念美術館「円山応挙」展 -
https://note.com/killamaru/n/na07051e46676
若冲は、もう1人の天才にためらう、の話 - 東京藝大美術館 -相国寺展
https://note.com/killamaru/n/n85b940e93ef9
<ゴッホ>
[ディープ]ゴッホのひまわりって、おいしいの? - 西洋美術館 ロンドン・ナショナル・ギャラリー展
https://note.com/killamaru/n/n69330619f156
「あなたはどんな鑑賞タイプ?」と「ゴッホの死相」について ゴッホ展 -東京都美術館-
https://note.com/killamaru/n/na3e315c32ca0
ゴッホ美術館(アムステルダム)に行ってきた -美術館レビュー(絵多め)-
https://note.com/killamaru/n/n4e65dea66a63
おいしそうな絵はここにも(ピエール・ボナール) -「ひまわり」異変の後日談-
https://note.com/killamaru/n/n32920ae6c2de
<美術展>
ブラックホールを作りだせる画家 -仙厓展@出光美術館- [ディープ]
https://note.com/killamaru/n/n576fe4a903b7
絵から音がしない理由 -ユトリロ展(SOMPO美術館)-
https://note.com/killamaru/n/nd086f4b57077
定家にきゅんきゅん -国宝熊野御幸記と藤原定家展レポート(三井記念美術館)-
https://note.com/killamaru/n/ne15a8591b9e4
伊勢物語展 -根津美術館- 岩佐又兵衛に感じるもの
https://note.com/killamaru/n/n522358cdf891
僧侶の背中には、実は何があったのか -特別展「運慶 祈りの空間―興福寺北円堂」-
https://note.com/killamaru/n/nb87fb034c08e
マチュピチュの展示じゃない?!けど、興味深い -マチュピチュ展-
https://note.com/killamaru/n/n5dd9d6de4666
<岡本太郎とウォーホル>
岡本太郎の絵をめくってバックヤードをのぞいた話[ディープ] - ウォーホルの続き -
https://note.com/killamaru/n/ndd21dc5e0255
アンディ・ウォーホル「SERIAL PORTRAITS」展(ルイヴィトン) - 岡本太郎のために力をお借りします -
https://note.com/killamaru/n/ndd1a969b04ba
<ランキング>
[異変の起こった美術展ランキング]2025年行った美術展の中から)
https://note.com/killamaru/n/n853c88ce272c