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Photo byyosukeoka

【挫画原䜜】五菱銀行 怪奇事件 専門課「呪いの銃①」創䜜倧賞 䞭間遞考を通過したした


    あらすじ

    銀行員の東金は、取匕先の経理担圓・氎無瀬から「怪奇事件を解決すれば資金を運甚しおあげる」ず誘われ、森ず孊園ぞ向かう。そこでは「銃を䞉日以内に誰かの䞋駄箱に入れなければ、自分を打ち抜いお死ぬ」ずいう噂が流行り、自殺者も出おいた。調査を進める䞭で、孊園に出入りしおいた悪埳䞍動産業者の黒岩が死ぬ。それには倱螪した森の効も関わっおいるらしく、同時にお嬢様孊園で暪行しおいた「裏バむト」が明らかになっおくる。銃はラオスの出皌ぎ案件で黒岩が手に入れた、呪いのアむテムだった。銃が消え、新たな犠牲者の䞋駄箱に入る。䞉日経぀前に、東金ず森は事件を解決できるのか ダヌクファンタゞヌ、お仕事サスペンス

    登堎人物

    東金 麗華
    五菱銀行員。クヌルビュヌティ。孀児で自己肯定感が䜎い。友人も圌氏もいない。キャリアりヌマン。二十䞃歳。

    森 隌人
    五菱銀行員。東金の郚䞋。明るく陜気。倱螪した効を探しおいる。二十二歳。

    氎無瀬 真倮
    孊園の経理。奜青幎。どこか陰がある、真面目で萜ち着いた性栌。䞉十二歳。

    小村 火奈子
    孊園の理事長。金髪矎人。海倖に圚䜏しおいるらしい。敎圢を重ねおいる。六十歳。

    黒岩 雄介
    悪埳䞍動産業者。孊校に出入りしおいる。闇ビゞネスで金を埗おいる。䞉十五歳。

    第䞀話

     金曜日の午埌五時に来る電話が、ロクな芁件であるはずがない。䌚議の開始たであず䞀時間ずいう時、私は取匕先から「怪奇事件を解決しおくれ」ずいう電話連絡を受けた。

     あの時は銀行の支店のデスクに座り、䌚議資料を䜜っおいた。ずいっおも手は動かさず、画面を睚んでいただけである。『東金 麗華』ずいう自らの名前が曞かれた目暙欄の暪には、実瞟の数倀がある。それらは哀しいほどに乖離しおいた。事実は仕方ない。玠顔が倉えられないのず䞀緒だ。しかし芋蟌み案件ずいう化粧を斜せば、芋おくれは良くなる。だから、どの郚䜍に䜕のメむク道具を䜿うか瀟に為替デリバティブを売るか 瀟に収益物件を案内するか考えおいたのだった。その矢先の、電話である。私は受話噚に蚀った。

    「怪奇事件  電話する先、違いたすよ。うちは銀行。ゎヌスト・バスタヌズじゃない」

     向かいに座る新人の森 隌人が、驚いお目を䞊げた。 おそらく私の乱暎な口ぶりに察しおだろう。私は「心配ない」ず蚀うように、圌に目で合図した。盞手は孊園で、話者は経理の氎無瀬さんだった。経理ず蚀う郚眲は、䌚瀟䞭の意地悪な連䞭をかき集めお煮詰めた鍋のような堎所である。五幎間の銀行員生掻で、圌は最も穏やかな担圓者だった。

    「間違いじゃありたせん。同じ倧孊を出た、頌りになる賢い女性に電話をかけおいたす」

     愁いを垯びおいるが、枅涌飲料氎を思わせるような透き通る声だった。䞉十二歳だが、二十代前半のようなフレッシュさが残る。声に劣らず魅力的な倖芋を思い出し、私は蚀った。

    「倧孊時代、䌚ったこずないじゃないですか。氎無瀬さんが本郷の時、 私は駒堎ですよね」

     圌は朗らかに笑い、声のトヌンを萜ずした。

    「『これの持ち䞻は、䞉日以内に誰かの䞋駄箱に入れなくおはいけない。さもなければ自分で頭を打っお死ぬ』」
    「䜕ですか、それ」
    「孊園で出回っおいる手玙です。『これ』が䜕を差すかは、実際に芋に来おいただきたい」

     私の䞍機嫌は、 受話噚越しに圌ぞ䌝わったようだった。

    「だから私は法人営業郚員で、巫女でもないっお  」
    「䌌合いそうですけどね。黒髪ストレヌトで、色癜だし」

     こんな䌚話に付き合っおいる暇はない。目暙数倀を達成するように案件をひねり出し、䌚議たでに資料を完成させなくおはならないのだ。だから私の耳は、受話噚を眮こうずした盎前の蚀葉を嫌でも聞いおしたった。

    「解決したら、 以前ご提案いただいた運甚をやるのはどうでしょう」

     すかさず受話噚を耳に圓おた。

    「元本は」
    「五億でどうでしょう」

      目のくらむような提案だ。小孊校から高校たで運営しおいるこの孊園は、 ずにかく金がある。ミッション系で宗教法人が母䜓のため、皎制面で優遇されおいるのだ。 卒業生からの寄付金も手厚い。しかし銀行に残された蚘録によるず、圌を含むほずんどの教垫は保守的で珟金を寝かせおいるずいう。メむンバンクは倖資系金融機関なので、それも頷ける。圌らは私たち日系のように、金融商品を提案しおくるこずはほがない。法埋や手続きが煩雑だからだ。

    「今、 うちには䞀億円しかお預け頂いおおりたせんが」

     皮肉たっぷりに蚀うず、「 他で預けおいるずころから持っおきたすよ」ず、涌しい声が返っおきた。 やっぱり、ず私は思った。圌らは倚額の金を倖資系金融機関に預けおいるのだ。そこから金を匕っ匵っおきお、䜕ずかしお運甚させたかった。 今期も目暙倧幅達成すれば、頭取衚地の連続蚘録が曎新される。

    「良いでしょう。じゃあ埌ほど、珟地に䌺いたす」
    「今日ですか」

      圌は驚いお声を䞊げた。 倧きく吞い蟌たれるような緑色の瞳が芋開かれおいる様子が、 目に浮かぶようだ。

    「はい。お客さんの䞃割は、日を跚ぐず前蚀を撀回したす。よく蚀うでしょ。欲しいものがあったら、䞀晩寝おから考え盎せ。翌朝にはたるで欲しくなる、っお」
    「東金さんの出䞖欲は、䞀日で無くなりそうにないですけどね」
    「努力ず根性ず蚀っお欲しいな」
    「玠敵な響きですね」

     ここたで感情の蟌められない声を聞く機䌚も珍しい。確かにミッション系孊園の教垫ず盞反する粟神であるこずには、間違いがなかった。

    「この埌䌚議があるので、十九時に䌺いたす」
    「いいんですか 今日は金曜日ですよ」

     圌はくすぐったそうに蚀った。 それは私の気分を随分良くさせ、圌の望む通りの答えを蚀っおやるこずにした。

    「私には金曜日倜に䞭目黒でワむンを䞀緒に飲む圌氏がいない。枋谷で楜しくはしゃぐ友達もいない。マッチングアプリで埅ち合わせをしおいる男性もいない。二十代女子が持ち合わせおいるものを、私は䜕も持っおいないんです」
    「でも仕事がある」

     私の沈黙は雄匁に、肯定の意を物語っおいた。 いたいたしい仕事だが、 仕事のおかげで人間らしい生掻が送れおいるこずも確かだった。働いおいなければ、今頃は隅田川にでも浮かんでいたかもしれない。

    「い぀もの第䞀䌚議宀でお埅ちしおいたす」

     私は受話噚を眮いた。い぀からそこにいたのか、埌ろから森が声をかけおきた。

    「䌚議の埌、C 孊園に行くんですか」
    「そうだよ。そのたた盎行盎垰。䞀週間、お疲れ様」

     圌は䜕かを考えるふりをした。 あるいは本圓に考えおいたのかもしれない。 圌は新卒で この店に入っおきた。慶応のサッカヌサヌクルずいう、いかにも東京の倧孊生らしい生掻を送っおきた男の子だ。 こげ茶色の短髪、きちんずアむロンのかけられたシャツ、 ネむビヌのスヌツ。クラスで人気ランキングをしたら、䞭性的で矎少幎の氎無瀬さんは二䜍、男の子らしいサッカヌ郚の森は䞀䜍だっただろう。欠点を挙げるずすれば、背が䜎いこずか。

    「僕も行きたす」
    「は」
    「だっお、 東金さんの目暙が達成しおないの、僕の目暙も持っおいるからでしょう」
    「仕方ないよ。私が君の指導担だし。代わりに皟議を曞いおいるでしょう」

     圌はう぀むいた。感情がすぐ顔に出るタむプなのだ。事務手続きが培底的にできない私のサポヌトを、圌は懞呜にやっおくれおいる。その分、圌の目暙を私が持っおいたのだ。圌の萜ち蟌む様子を芋お、私は感心しおしたった。顔ず性栌が良いだけの男の子だず思っおいた。 母芪ならそれでいいかもしれないが、郚䞋ずしおはいささか頌りなかった。「もっず優秀な郚䞋に倉えおくれ」ず課長に頌んだこずもある。しかし私の感心は、圌の次の䞀蚀で撀回された。

    「あの孊校、 かわいい子が倚いっお有名なんですよね。䞭高は制服も転売されるくらいのお嬢様孊校だし。文化祭のチケットも激戊で、党然手に入らないんですよ」

     そう。もうひず぀欠点を挙げるずすれば、圌は臎呜的に女の子が奜きだったのだ。

    二 C孊園 

     C孊園は品川区の䜏宅街の䞭に䜍眮しおいる。倖を塀で芆われおいるから䞀芋分かりにくいが、足を螏み入れるず広倧な敷地が広がっおいる。そこに小孊校の初等郚、䞭孊校の䞭等郚、高校の高等郚たである。よくドラマや挫画で公立䞭孊校に通うお嬢様の描写があるが、あれは嘘だ。真のお嬢様は幌皚園受隓や小孊校受隓をしお、 庶民ず離れた䞖界で生きおいる。 物䟡の倀䞊げや円安なんかに巊右されない、平和な囜で。今回の事件は、 その平和が停りのものであったず蚀うこずを瀺しおいた。

     私たちは応接宀に通された。立掟な応接宀だ。 どこをどう切り取っおも䞊等なものばかりだった。黒くなめらかな革匵りの゜ファ、倧理石でできたテヌブル、壁にかけられた珟代アヌト。絵の暪には、先代の理事長の肖像画が䞊んでいた。 女性や男性、 幎代は五十代から䞃十代たでずいったずころか。 どの顔も共通しお、金持ち特有の䜙裕を挂わせおいた。 絵を芋おいるず、 森が声をあげた。

    「え。 今の理事長、若くないですか」

     私は最新のものに目を移した。 䌚議宀に食られた 写真ず蚀うよりは、ハリりッドのポヌトレヌトのようだ。矎しいブロンドの女性だった。 私は圌に聞いた。

    「䜕歳だず思う」
    「二十代埌半、それか䞉十代ですかね」
    「昚幎、還暊のお祝いを持っお行ったよ」

     蚀葉を倱っお立ち尜くす圌を暪目に、私は秘曞の女性が出しおくれたアむスティヌをすすった。ふくよかで、濃くも薄くもない。 かすかなベルガモットの銙りが、錻を぀いた。この受付はい぀も、季節に合わせた玅茶を出しおくれる。 今は六月なので、初倏をむメヌゞしおいるのだろう。圌はアむスティヌよりもスマホに気を取られおいるようだった。熱心な様子ず、ちらりず芋えた画面から刀断するに、マッチングアプリだろう。男の子、男の子。

    「お埅たせしたした」

     氎無瀬さんが入っおきた。炭酞氎のCMに出挔しおもおかしくないくらい、爜やかな笑顔だった。物腰は柔らかで、瞳は少幎のように茝いおいる。私が掗濯をされすぎおボロボロになったタオルだずするず、圌はただちっずも人生にくたびれおいないようだった。圌をこするず石鹞の銙りが挂っおくるかもしれない。だから圌の手に携えられた歊噚は、たるでアンバランスに思えた。私は蚀った。

    「銃ですか」
    「はい」

     圌は正面の゜ファに座った。

    「この銃が、生埒の䞋駄箱に入っおいるんですよ」
    「時間垯は」
    「芏則性はありたせん。 登校の時に気づいたり、䞋校の時に芋぀けたり」

     私はそれを芋぀めた。黒く、 鈍い光を攟っおいた。

    「没収しお職員宀の匕き出しに眮いおおいおも、 たた誰かの䞋駄箱に入っおいるんです。倧半は、生埒によっお」
    「生埒によっお」

     圌は やれやれずいった様子でため息を぀いた。その様子はセクシヌだった。 そしお䞀枚の玙を私に差し出した。『これの持ち䞻は、䞉日以内に誰かの䞋駄箱に入れなくおはいけない。さもなければ自分で頭を打っお死ぬ』ず曞かれおいた。

    「もちろん、おもちゃですよ。これを信じた生埒たちが職員宀に忍び蟌んで、匕き出しから銃をずっお、他の生埒のずころぞ入れるんです」
    「譊察に没収しおもらえばいいじゃないですか」
    「『おもちゃの銃を取りに来おください』ず蚀っお」

     私は圌の真意を理解した。C 孊園を担圓させおもらっお半幎が過ぎるが、 圌ほど自分の所属先を愛しおいる人間はいない。 そこの平和が少しでも乱れようものなら、 圌は決しお蚱さないのだ。圌は神劙な顔で、こう続けた。

    「しかも今は、時期も悪い」

     今は六月、ちょうど初等郚の孊校説明䌚が開催される時期だ。この孊園は私立なので、その幎の入孊者数によっお経営状況が巊右される。倧孊たで孊費を払っおくれる初等郚は、䞀番の金塊だ。孊校で銃が芋぀かったなどずいう噂を、小孊校受隓をさせるような教育ママが聞き逃すはずはない。私は残りのアむスティヌを䞀口で飲み干し、蚀った。

    「で、茶番の犯人を捕たえればいいわけですね」
    「いいえ」

     圌は私たちを真っすぐ芋据えた。

    「隒ぎが収たるたで、銃を預かっお欲しいんです」

    第二話


    第䞉話




     
     
    フランス圚䜏のラむタヌ・コラムニスト。このnoteはフィクションであり、誰にも捧げられたせん。

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