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あの日の光(首吊り部屋PartⅡ)

    わたしは20代前半に人生最大級のピンチを迎える。
    場所は通称「首吊り部屋」。東横線沿線の、古くて狭いアパート。

    その不穏なネーミングは何なのか?

    ロフト付きの部屋の構造が、首吊りにあまりにもぴったりだった。ロフト部はかなりの高さがあり、縁には、転落防止のための頑丈なバーがあり。

    そのために作ったのではないかと疑うくらいの雰囲気……。

    わたしがそういう精神状態だったから、そう見えたのだろうか。

    当時のわたしの心は「そういう精神状態なわけではない」と明確に否定していた。今思えば、強く否定するところがかえって怪しい気もするが、真実はわからない。

    精神の変調はそのころにはじまったわけではなかった。調子を崩してから7年が経過し、もはや病んでいること自体に疲れているような状態だった。

    しんどい内容になってきたので、ちょっとBGMでも。
    この話でイメージする曲は、Pink Floydの ”Shine on you crazy diamond” よけい不穏な感じですか?


    今でも日付を思い出せる。あれは4月9日だった。「四苦」八苦と語呂合わせをして記憶をつないできた。

    この記憶は未来につながなくてはいけない。そう思うくらい不思議な出来事だった。

    ◆ ◆ ◆

    場所は、もちろん首吊り部屋。
    現象の理屈がまったくわからないので、起こったことをそのまま話す。

    なんでもない普通の夜だったと思う。ちょうどそのころメールでやりとりをしていた異性がいたのだが(※今に置き換えると、SNSで気になった人とやりとりしている感じ)、わたしは相変わらずひとりだったし、自分の状態に悩んでいたし、仕事もうまくいっていなかった。

    そんな代り映えのない夜なのに、なんの前触れもなく、頭の上からすーーっと光が差し込んだ。邪が去っていくような感覚があった。

    わたしは宗教的なものやスピリチュアルな考え方とは距離を置いているが、長年とり憑いていた悪霊が去るとしたら、きっとああいう感じだろう。

    あの悪霊は、高校時代のこいつじゃないかなあ……と思わなくもない

    こんな感覚はあとにも先にもない。パラダイムシフトが起きたとしか言いようがなかった。光の前と後で世界がまったく変わってしまったような感覚があった。

    数日後、メールの相手に「自分は変わってしまったので、もうこれまでの自分としてやりとりを続けられない」ということまで書いた。

    ◆ ◆ ◆

    いったい自分はどう変わったのか? うまく言えないが、変化はポジティブなものだった。力があふれてくるのを感じた(これは自分の備忘のために書くのだが、ペ〇スまで大きくなった)。

    当時の会社を5月15日に辞めた。退職には、4月9日の体験が明らかに影響している。

    しかし、心が元気になったのはいいのだが、就職先がない。前回の記事(首吊り部屋PartⅠ)で書いたとおり、当時は就職氷河期のピーク。

    社会から隔絶され、ひとりで首吊り部屋にいることしかできず、せっかくMAXになった精神がどんどん削られていった。

    急上昇からの急降下。ジェットコースターのような時期だった。幼児がはじめて見る外の世界に右往左往するのに似ている。もしかすると、わたしはあの光で本当に生まれ変わったのかもしれない。

    精神が削られるたび、首吊り部屋の存在感が高まった。わたしは外の世界にあまりにも無防備に飛び出してしまった。

    社会からの隔絶。世界に独りきり。この恐怖に耐えられる人間はいない。

    やがて死が舞い込む。実行者はわたしではなかった。

    もうひとつのエピソードがある。

    ◆ ◆ ◆

    あれは、6月の終わり頃だっただろうか。誰もがうらやむ有名企業に入った大学の同級生から、突然「泊めてくれ」と連絡があった。

    何があったのか聞くと、社員寮で同期が首を吊って自殺したらしいのだ。そんな場所で今日は眠れないと。

    その亡くなった方には失礼だろうけど、そのときわたしはこう思った。

    「死んだら負けだ。わたしは死んでないのだから負けていない。少なくとも、生きていれば負けたことにはならない」

    その気持ちにどれだけの効果があったのかはわからないが、わたしは人生の「首吊り部屋編」をなんとか乗り切ることができた。

    精神的にこの辺が潮時だと判断し、あまり気乗りのしない転職先ではあったが、唯一内定を出してくれた神戸の会社へと向かうことにした。

    首吊り部屋とはここでお別れ。

    新たな伝説の物件へ……

    今考えると、「首吊り部屋」は、本当の首吊り部屋ではなかったのだと思う。そんなに首を吊るのに適していたら、実行者が出てしまって、あんなに高い家賃になるわけがない!

    首吊り部屋は、わたしを救ってくれた光の部屋だった。

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    楽器を持たずにロックスターを目指している者です。お金を愛し、創作を愛し、音楽もちょっと好き。転職に失敗しすぎてFIREの精霊になりました。投資と創作の力で自由を手に入れます。自分に似た誰かのために戦略の書「ロックスターになりてえなぁ」を運営中!

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