メインコンテンツへスキップ
見出し画像

あえて言おう! #青ブラ文学部 #風まかせ文芸部

    約900字・ショートショート


    「あえて言おう! カスであると!!!」

    それは、私がこの地下シェルターでの生活を始めてから毎日唱え続けた、呪文であり、楔だった。

    青白いLEDの光と、コンクリートの冷たい壁。

    私は十年もの間、地上を支配する「光の教団」が与える日光の欺瞞的な恩恵を拒絶し、ストイックな訓練で肉体を鋼の刃へと鍛え上げてきた。

    彼らは太陽の光にすがる、軟弱な存在だ。

    私は彼らの虚構を打ち破る戦士となるのだ。

    だが、近頃、身体は私を裏切り始めていた。

    全身の骨がきしむ。

    それはまるで、長年酷使した古木の幹が、内側から軋むような鈍い痛みだった。

    筋肉は絶えず痙攣し、床に敷いたゴムマットを踏みしめることすらままならない。

    軟弱の極みだ!!!

    しかし、私はこの痛みをこそ私を進化させる鍵だと信じた。

    この痛みは私の勝利への道標だ!!!

    立ち上がろうと力を込める。

    しかし、骨は意志に反してゴムのように柔軟にしなり、背骨と膝から悲鳴にも似た摩擦音が響き、堪えきれず壁を叩いた。

    このままでは戦うどころではない。

    最後の力を振り絞り、外部へと繋がる鋼鉄の扉を開けた。

    ギギィと金属が軋む音と共に、扉の隙間から眩い光がシェルター内に射し込んだ。

    私の眼球を焼く物理的な暴力だった。

    激痛に呻きながらも、私は地上の、あの偽りの世界へと這い出た。

    外には、光の教団員らしき真っ白なローブをまとった数人の人物が立っていた。

    彼らは私を哀れむような、形容しがたい眼差しで見つめていた。

    私が、喉を引き裂く渾身の力を込めて、「カスめ!!!」と叫ぼうとした瞬間。

    ローブの人物の一人が、その光に透けるような掌を差し伸べ、優しい、しかし絶対的な確信に満ちた声で静かに言った。

    「ああ、よかった。ついに出てきてくれましたね。あなたの身体は、長年の日光不足で重度の骨軟化症と診断されています。さあ、治療を始めましょう」

    「ど、どういうことだ!?」

    「つまり、長い間、太陽の光を浴びてないから、重度のビタミンD欠乏症になってるんです」

    なんということだ。

    私の十年の努力は無駄だったのか。

    『光の教団』、もとい、精神科の先生たちは患者の俺を車椅子に座らせた。

    ようやく俺はたった一つの真実にたどり着いた。

    人間は太陽の光を浴びなきゃ病気になる、と。


    画像
    眩しいにゃん


    この記事が参加している募集

     
     
    ショートショートとか童話とか落語とか声劇台本とかジャンルにこだわらずいろいろ書いてる猫。

    あなたへのおすすめ