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【拝啓文芸部】『残されたメモ』【コメディ】


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    ようこそ、皆さま! セイウチです。

    先ほど淹れたてのコーヒーを片手に浜辺を歩いていたら、なんだかクスッと笑えるボトルメッセージを見つけちゃいました。

    ​これはある人物の、とある休日の記録——いわば「小さな漂流記」です。

    最初はミステリーかと思いきや……最後に待っていたのは、誰もが一度はヒヤッとしたことのある“あの絶望”でした。

    ​アナタのホッと一息つく時間に、小さなクスッとした笑顔を届けられますように。


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    ​ガンガンと頭の中で太鼓が鳴り響いている。
    二日酔いという名の拷問に耐えながら、僕は這うようにしてベッドから這い出した。
    喉がカラカラだ。

    ​ゾンビのような足取りでリビングへ向かい、冷蔵庫の麦茶をダイレクトに胃袋へ流し込む。
    ぷはぁ、生き返る……と、ふとテーブルの上に視線を落とした瞬間、ピタリと動きが止まった。

    ​そこには、裏紙の切れ端がポツンと置かれていた。
    ミミズがのたうち回ったような酷い字で、こう書かれている。

    ​『アレを買っといて』

    ​「……『アレ』ってなんだよ!!」

    ​思わず誰もいない部屋でセルフツッコミを入れてしまった。
    昨夜は会社の上司に捕まり、記憶をどこかの居酒屋に落としてくるほど飲み明かしたのだ。
    自分の字っぽい気もするが、酔っ払った自分が一体何の「アレ」を求めていたのか、サッパリ思い出せない。

    ​「まあ、顔洗えば思い出せるか」

    ​洗面台へ向かい、冷水をバシャバシャと浴びる。
    鏡に映るのは、目が死んでいる男が一人のみ。
    今日はせっかくの休日だ。
    部屋に掃除機をかけ、たまっていた洗濯物を干す。
    「アレ」の正体を探るべく、洗剤、歯ブラシ、マヨネーズ、果ては部屋の観葉植物まで点検してみたが、どれもしっくりこない。

    ​「まさか……高級寿司のことか……?」

    ​絶対違う。
    泥酔した自分を過信しすぎだ。
    諦めて冷凍パスタをチンして平らげ、ソファでゴロゴロとネットサーフィンを始める。
    「アレ」の謎は深まるばかりだったが、まったりした休日の空気にすっかり毒されていた僕は、まあいいかと脳の思考スイッチをOFFにした。

    ​その時である。
    キュルルルル……と、お腹の奥底から邪悪な警報音が鳴り響いた。

    ​「ぐっ……奴が来た……!」

    ​食後の腹痛だ。
    僕はスマホをソファに投げ捨てると、光の速さで廊下をダッシュし、トイレの扉を蹴破る勢いで飛び込んだ。

    ​〜〜〜

    ​無事に大仕事をやり遂げ、僕は「ふぅ……地球に生まれてよかった……」と感動的なため息をついた。
    お腹もスッキリ、頭もスッキリ。
    最高の休日じゃないか。

    ​爽快感に包まれながら、右手でトイレットペーパーホルダーを弄(いじ)る。

    ​ガラガラガラ……カランッ。

    ​軽快な音とともに、手に伝わってきたのは不吉なまでに「軽い」感触だった。

    ​「……ん?」

    ​横を見ると、そこにあったのはホルダーに鎮座する茶色い紙管——そう、ペーパーの「芯」だけだった。

    ​「…………あ。」

    ​その瞬間、僕の脳内でパズルのピースが「パチーン!!」と音を立てて組み合わさった。

    ​記憶の扉がバカーンと開く。
    昨夜、千鳥足でトイレに入り、最後のひと拭きで紙を使い切ったあの瞬間。
    「やべぇ明日買いに行かなきゃ……」と青ざめ、ふらつく足でリビングへ戻り、渾身の力でペンを走らせたあの愚かな僕の姿が、鮮明なハイビジョン映像で蘇ってきた。

    ​『……しまったぁぁぁぁ!! メモ書きは、これのことだったのかぁぁぁ!!』

    ​叫びたかった。
    だが、叫んだところで紙は生えてこない。

    ​手に伝わる固い紙管の感触。
    目の前に立ちはだかる冷たい壁。
    そして、下半身は完全に無防備なオープン状態。

    ​解けなかった謎が解けたアハ体験の爽快感と、これから訪れるであろう絶望。
    僕は便座の上で静かに天を見上げ、そのまま石のようにフリーズした。



    (了)
    ※この物語はフィクションです。
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    最後まで読んでいただきありがとうございます❗😭✨


    誰しも一度は「トイレットペーパーの芯だけが残されたホルダー」を見て絶望した経験があるのではないでしょうか。

    「解けない謎が解けてスッキリする快感」と「物理的に絶体絶命な状況」が同時に襲ってきたら一番面白いな、という思いつきからこのお話を書きました。

    ​ちなみにこの後、主人公がどうやってこの危機を脱出したのかは……皆様のご想像にお任せします(笑)。

    酔った勢いで残すメモには、もう少し具体的な情報を書くように気をつけたいものですね。


    【Mr.Q】さん、素敵な企画をありがとうございました!



    毎週火曜日に自分の作品を投稿、企画に参加させていただく時は不確定的に投稿しています!



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    寄せては返す波打ち際で、流れ着いたボトルメッセージを拾い集めるセイウチです。 ​ここに並ぶショートショートや日記は、すべて海が運んできた「誰かの漂流物」。 いつかあなたの心に届く言葉が見つかりますように。 ゆっくりしていってください。

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