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頼れる人がいる職場ほど、なぜ危ういのか

    困ったときは、あの人に聞けばいい。どの職場にも、そう言われる人がいる。頼られる本人も、まんざらではないかもしれない。だが、その安心がいちばん大きな危うさを隠していることがある。

    インシデント管理の仕組みを提供するPagerDuty株式会社が、10月9日に調査結果を公表した。従業員1,000名以上の企業で、システム障害の対応を担う316名に聞いたものだ。

    まず、現場の余裕のなさが際立つ。障害対応に余裕がないと答えた人は、「対応しきれていない」を含めて93.7%。今の体制のまま続けるのは難しいという人も77.4%いた。

    目を引くのは、知識の偏りである。障害対応の判断や知識が「3人以下」に集中している職場は39.9%。中心となる担当者が不在になると、68.0%が「同じ水準の対応は難しい」「対応が遅れる」と答えた。

    では、なぜ偏りは解消されないのか。手がかりは、後回しにされた業務の顔ぶれにある。システムの改善が50.3%、手順書の整備が44.9%、再発防止策が40.5%。いずれも、知識を個人から仕組みへ移すための仕事だった。目の前の対応に追われるほど、偏りを減らす仕事が先送りされる。その間にも、頼れる人への依存は深まっていく。

    しかも、この状態は上に届きにくい。障害対応の裏で止まっている業務を経営層が「把握していない」という回答は、47.5%にのぼった。

    これはシステム運用に限った話ではない、と私は考える。営業にも経理にも、あの人がいないと回らない仕事はある。上司にできることは三つある。

    一つ目は、後回しにしている仕事を書き出し、見える場所に置くこと。見えない積み残しは、誰にも優先されない。

    二つ目は、頼れる人に二番手をつけること。本人の負担を減らすためだけではない。知識を一人の頭の外へ出すためである。

    三つ目は、忙しい時期にこそ、手順を書く時間を予定に入れること。余裕ができたら書く、では手順はいつまでも書かれない。

    頼れる人がいるのは、職場の強みである。ただし、その人がいない日にも回るようになって、はじめて強みは組織のものになる。

    (出典: PagerDuty株式会社調べ「AI時代のシステム障害対応に関する現場実態調査」第1回、従業員1,000名以上の企業で障害対応を担う316名、2026年8月13日〜18日調査・10月9日公表 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000035.000101675.html)

     
     
    東京藝術大学声楽科卒業後、一橋大学MBA、コンサルティングファームを経て、CONVERGENCE株式会社で企業向けAI・DX研修に登壇。声楽家として演奏活動も継続中。研修現場で見たこと、考えたことを書きます。

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