メインコンテンツへスキップ
見出し画像

「受験者が死ぬのを、なんとも思っていないみたいだ」| 葬送のフリーレン

    私は『葬送のフリーレン』という世界の構造を「力による支配」対「人類」という構造で見ている。

    これについては、以前にも以下の記事に書いたとおりだ。

    物語全体を通して「力による支配」を象徴するのは魔族だととらえているが、人類側の社会にも当然、権威・権力構造は描かれている。

    その人類側の権威構造を浮き彫りにするのが、大魔法使いゼーリエが立ち上げたとされる大陸魔法協会だ。

    S1E18『一級魔法使い選抜試験』以降のエピソードでは、大魔法使いゼーリエの圧倒的な権力・影響力と共に、協会自体がまとう権威性について描かれる。

    S1E18『一級魔法使い選抜試験』で最初に権威の象徴として登場するのが、大陸魔法協会の、その荘厳な建物だ。

    一級魔法使いの選抜試験が始まるにあたり、受験生が一堂に会すその建物は、現実世界の中世ヨーロッパで絶対的な権力を誇っていた教会を彷彿とさせる。

    そう考えれば、中世ヨーロッパ的な世界観を醸し出す『葬送のフリーレン』で、大陸魔法協会という組織の名前が、「教会」と全く同音の「協会」である点もまた、示唆深い。

    魔法使いたちにとって、大陸魔法協会が絶対的な権威であることを、物語っているのだろう。

    受験者たちはこの選抜試験の一次で、自らの命を懸けるような競い合いを強いられる。

    結界をかけられた森の中に幽閉され、「シュティレ」と呼ばれる魔物の鳥を捕獲する課題を与えられる。

    試験の会場区域に住む魔物と戦い、参加者同士でも対人戦を行い、「シュティレ」を奪い合う。
    実際にこの一次試験で、何人もの魔法使いが命を落とす。

    S1E19『入念な計画』では、第13パーティに所属する三級魔法使いのラオフェンが、魔物に殺された受験者を目にした際に、このように言う。

    異常だね。
    こんな魔物がいる場所を、試験区域に選ぶなんて。

    受験者が死ぬのを、なんとも思っていないみたいだ。

    アニメ『葬送のフリーレン』S1E19 - ラオフェン


    これを聞いた同パーティのリヒターが、彼女に以下のように説明する。

    大陸魔法協会は、この程度で死ぬ魔法使いは、一級魔法使いに値しないと考えている。
    彼らは、魔王を倒した時代の誇り高き魔法使いに焦がれ、一級魔法使いの「質」を気にしているのだと。

    「一級魔法使いの称号に値するかどうか」ということと、「生きるに値するかどうか」ということは、本来、全く別の問題であるべきだ。

    しかし権威側は、命の価値さえも値踏みする。

    皮肉な話だ。

    自らを守り「力による支配」に対抗する目的で連帯し、組織を築いた結果、
    その内部に新たな権威構造が生まれる。

    人類が生み出した、この新たな権威によって
    「一級魔法使いに値しない者は生きるにも値しない」という破綻した論理が、正当化されてしまうのだ。


    🪄

    本コラムをおもしろいと思っていただけた方には、以下もオススメです。『葬送のフリーレン』の世界の支配構造を図解し、今まで書いてきた記事を要素ごとに振り分け、説明しています。

    『葬送のフリーレン』では、魔族が言葉を巧みに操り、人間を欺こうとします。現実社会にも存在する「言葉による操作」と対比しながら書いています。


    この記事が参加している募集

    あなたへのおすすめ