
アマノ文筆クラブ 『降られちゃった』
なんでだよ。
なんでさっきまで降ってなかったのに、俺が家を出た途端に降ってくる?
俺って雨男だっけ?
いや、ホントにそんな存在がいるとは思わない。
一人の人間に、自由に雨を降らせる力があったら、それは超能力じゃないか。
干ばつが続く場所では、きっと神として崇められる。
……だけど違うって、今はこの雨を止ませる力が欲しいんだって。
俺が向かうのは、彼女との初デートで、待ち合わせの場所。
そこは、広い公園にあるモニュメントの下で、屋根のあるような場所ではない。
しかも、俺は寝坊して20分の遅刻。
朝の天気予報では雨マークなんてひとつも無かったから、彼女が傘を持っていないことも大いに考えられる。
そしたら、彼女は今頃、びしょ濡れで公園の真ん中に立ってるかも……いやさすがにどこか別の場所に避難するか。
それでも、広い公園だ。
屋根のある場所に避難するまでに、かなり濡れることになるだろう。
20分も待たされた上に……。
とにかく今は、急いで彼女のもとへ。
このままじゃ、突然の雨のせいで彼女に振られちゃった、なんてことにもなりかねない。
彼女は、びしょ濡れで公園の真ん中に立っていた。
駆け寄る俺を見つけて、安心したように微笑む。
「降られちゃった。天気予報に騙された。傘持ってくればよかったよ」
「ええと、どこか屋根のあるところに移動とか……」
「そう思ったんだけどね。周り見渡しても屋根は見当たらないし、こんな広い公園で待ち合わせ場所を離れたら、会えなくなっちゃうんじゃないかなって」
いや、あとから電話でもすればいくらでも……。
「それにさ、きっとあなたもこの雨の中、びしょ濡れになって走ってるんだろうなって思ったから」
確かに、傘を取りに帰る時間なんて無かった。
それに遅刻してるから、走った。土砂降りの雨の中を。
「ゴメン。全部俺が悪い。遅刻したのも、この突然の雨も。謝るよ。土下座でも何でもする」
「遅刻は仕方ないけど、雨はあなたのせいじゃないよ。あなたが雨を降らせてるとでも言うの?」
「いや……そんな力はないよ」
「でしょ?そんな力があるなら、今すぐ雨が降らなくて困ってる国に送り込むよ。それは私も誇らしい」
「なんで……笑い飛ばせるの?」
「えっ……そーだね、今日のところはさ、来てくれないかもって思ってたけど来てくれたからかな。ホッとしたもん。でももう、これからはそうはいかないよ。ちゃんと気を引き締めて、遅刻しないように」
いつの間にか、雨は上がっていた。
天気のことは自然に任せて、俺が今欲しいのは、この娘を笑顔に出来る力、それだけだ。
こちらの企画に参加させていただきました。
よろしくお願いいたします。