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📚32【アルプス席の母】に熱くなる 806

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    アルプス席の母

    早見和真(1977年神奈川県生まれ、日本推理作家協会賞•山本周五郎賞など受賞)
    小学館 351頁
    2024/3/20初版



    高校野球を書いた物語は数々あれど、その母親が主人公というのはかなり珍しいのではないのかな?
    あるのかな?
    私は初めて読んだけど……


    主人公は看護師で、夫を亡くしたシングルマザーで、息子は神奈川県のシニアリーグのエースで、将来を嘱望されている。
    甲子園への出場経験はないが、成長中の在阪私学高にスカウトされ息子は寮へ、主人公はアパート暮らしを始める。


    主人公はプライベートでは職場に恵まれ、看護師として働き、息子が同じチームに所属する医師と仲良くなる。
    反面、野球部では馴染みのないことが頻発し、なかなか打ち解けられない。


    父母会の掟、監督と父母会の関係、父母会内の上下関係と虐め、役員の役割りと負担、裏金問題、息子の故障と手術、戦線離脱……
    主人公の日常は、息子の目と鼻の先に住みながらも「高校球児の母」であることが優先される。
    それも「甲子園初出場をかけた」である。


    私が4月末に退職した職場には2人の「高校球児の母」がいた。
    どちらもシングルマザーでどちらの息子(年齢は違う)も遠方の高校の寮に入っていた。
    しかもどちらも大卒後就職した会社を辞めて警察官になった。
    凄い偶然‼︎
    ひとりは私の部下さんだったし、もうひとりは息子が進(仮名、次男)と中学の同級生でママ友だったので、「高校球児の母」の実態はまぁまぁ知っている。
    卒業してからも寄付を集められちゃうとかね。


    それにしても父母会は理不尽で過酷だ。
    主人公の職場は理解があって時間の捻出はできるが、経済的な余裕はない。
    そして何より良心の呵責に耐えられないようなことが起きる。
    父母会の真実を、果たして球児自身は知っているのかな?
    球児に知られても、親達は平気でいられるのかな?


    息子は、シニアでエースだったときに温存した肘の不調に苦しむ。
    高校では手術を選択し、ピッチャーを諦め、レギュラーも外されてしまう。
    重圧がなくなったからか、野球を心から楽しみ、大きな声を出してチームのムードメーカーとなっていく。
    主人公は息子の成長に励まされ、他の父母や監督に働きかけ信望を得ていく。


    父母会や監督とのあれこれ、スカウトの裏側など、「ううむ……」と考え込むところもあるけれど、合間に白熱のゲームがさし挟まれ、重くなりすぎないし退屈しない。
    息子がこれまた良い子なんだ。
    自分の息子なら、たとえ嫌がってもハグハグしちゃう。
    息子でなければ惚れてしまう。
    年の差も何のその、片恋は大好物なんだ……

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    これは高校野球の物語だし、父母会の物語だし、球児の成長物語だし、親子の物語だし、親の成長物語でもあると思う。
    どの立場で読んでもきっと熱くなる。
    「学校が休みの日に保護者当番なんてよくやるよ」という人も、部活にお金なんてかけられないわという人も、野球なんか興味ないしという人も、恐らく燃えるし萌える。


    いつの間にか、母子の大阪弁が馴染んでいるのが微笑ましい。
    この親子、既に次のフェーズに進んでますよ‼︎








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