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「具体と抽象」を行き来したら、DXとAIのつき合い方が見えてきた

    はじめに

    こんにちは。

    最近、細谷功さんの

    『具体 抽象トレーニング』 思考力が飛躍的にアップする29問

    という本を読みました。

    ページをめくりながら、

    「私がBIMやDXの仕事で無意識にやってきたことって、まさにこれだったんだ」

    と、頭の中がすっと整理される感覚がありました。

    書店でこの本を手に取ったきっかけは、AIの師匠の存在です。

    師匠はセミナーの中で、「具体的に洗い出したことを、一般化する。そして、AIに情報を渡すためには情報を構造化する」という説明をよくしていました。いろいろなたとえや言い換えでわかりやすく伝えてくれるので、そのときは理解したつもりになっていました。

    「でも、自分のこの理解は本当に合っているのだろうか……」

    そんな疑問の答えが載っていそうだと感じて、手に取ったのがこの本です。

    私はコンサルタントではありません。設計部のサポートをしながら、BIM導入やDXのお手伝いをしてきた、現場の一人です。(現在は、設計部に異動)

    だからこそ、現場で感じてきたことを、この本の考え方を借りて言葉にしてみたいと思います。

    この記事でわかること

    • 「具体」と「抽象」を行き来する考え方と、DXでいう「全体最適」とのつながり

    • 約100人へのヒアリングで見えた、現場の「部分最適」のリアル

    • AIが得意なことと、人間にしかできないこと

    • 4年前の業務棚卸しデータが、AIを使い15分でアプリになった実例

    • ノウハウを会社の資産にする、AIとの付き合い方のヒント

    「具体」と「抽象」ってなに?

    この本の中心にあるのは、物事を「具体」と「抽象」の2つのレベルでとらえ、その間を行ったり来たりしよう、という考え方です。

    ざっくり言うと、こんなイメージです。

    • 具体:目の前の一つひとつの事実や作業(例:この図面のこの寸法、Aさんのこのやり方)

    • 抽象:いくつかの具体から共通点を見つけたり、「何のため?」と目的を考えたりして、一段上から見たもの(例:会社全体での図面の流れ、そもそも何のための作業か)

    たとえるなら、

    具体は「地上を歩いている状態」

    抽象は「ビルの上の階から街を見下ろしている状態」

    です。

    地上にいると、一軒一軒のお店はよく見えます。でも、街全体の道のつながりは見えません。

    上の階に上がると、道のつながりは見えます。でも、お店の中までは見えません。

    しかも、具体と抽象は「何と比べるか」で入れ替わります。「会社全体での図面の流れ」も、経営方針から見れば具体です。何階から見るかで、景色が変わるのです。

    どちらが偉いという話ではなく、両方を行き来できることが大事。

    私は、この「行き来」こそが、DXでよく言われる「全体最適」の正体なのだと思っています。

    具体:100人に聞いて、初めて知ったこと

    以前、BIM導入支援の一環で、約100名の方にお話を聞かせてもらいました。

    社員だけでなく、協力業者さんやツールの販売会社さん。さらに、知り合いの一級建築士さんの設計事務所や、先行してBIMを導入していた関連会社の建築部にも、お話を伺うことができました。

    知り合いの経営コンサルタントの方に、「そんな大勢に聞いて嫌がられなかった?」と言われてしまいました…当時の私は、社内にBIMのことを知ってもらいたい一心で、気づきませんでした。どうだったのでしょう!?

    社員や協力業者の方とは、

    「BIMってこんなツールです」

    「皆さんの仕事なら、どんなところで使えそうですか?」

    という、勉強会を兼ねたヒアリング会にしました。普段ゆっくり話す機会のない社員とも話せる、貴重な時間でした。

    「自分の業務なら、こんな使い方ができないかな」と具体的なアイデアが出てきたり、今でも「BIM活用、楽しみにしているよ」と声をかけてもらえたりしています。

    まだまだ部分的な活用ですが、
    今まで見えなかったもの、わかりにくかったものが、BIMで可視化される。そんな現場の皆さんからの期待を感じています。

    採用活動をサポートしていた時期の音声やメモも、大切な情報として手元に残っています。


    私の扱う図面は、基本的には、1枚から数枚の図面で1つの建築用の製品をつくります。

    しかし、同じ図面なのに、担当によって見ている場所が違います。

    本当はこういう書き方のほうが、自分の持ち場では助かるんだけど……

    そんな声も、聞いてみて初めて知りました。

    1枚の図面から、それぞれが自分に必要な情報を拾って使う。これは私の働く組織に限らず、建設業界では一般的なことなのだと思います。

    立場や担当が変われば、ものの見方もツールの使い方も違う。そして皆さん、目の前の仕事でいっぱいです。

    隣の人がどんな仕事をしているのか知る余裕がないのは、会社の大小に関係ないのかもしれません。


    実は、私自身もそうでした。

    小さな会社なのに、隣の席の人がどんなツールでどんな仕事をしているのか、話を聞くまで知らなかったのです。

    私は5年前から、BIM導入支援を中心に設計部のサポートをしてきました。ずっとBIMツールを使ってきましたが、2D CADでの設計は初めての経験です。

    だからこそ、ベテランの皆さんが当たり前にやっていることに、「どうしてそうするんですか?」と素直に聞けたのかもしれません。

    今も同じCADを使って隣に座っていても、仕上がりは同じなのに、途中の手順は人それぞれです。その一つひとつの工夫を教えてもらいたくて、毎日のように質問しています。

    抽象:一つ上の階から眺めると、つながりが見えてくる

    100人分の「具体」を聞いたあと、

    「じゃあ、BIMをどう活かしたらいいんだろう?」

    と考えたとき、自然と一つ上の階から眺めるクセがつきました。

    一人ひとりの「こうだと便利」は、その人の持ち場ではどれも正解です。

    しかし、BIMやDXは、ある業務から次の業務へとデータがつながっていく仕組みです。

    自分にとって便利なやり方も、他の業務とつなげようとした瞬間に、どこかで破綻したり、結局手作業が残ったりしやすいのです。

    • 部分最適:自分の持ち場がうまく回ること

    • 全体最適:会社全体の流れがうまく回ること

    この違いを意識するようになりました。


    スモールスタートも同じです。

    小さく始めるのはとても大事ですが、最終的にどこへ向かうのか(ゴール)を決めずに進めると、1つ目の課題をクリアしたあと、次のステップでやり直しが出てしまうかもしれません。

    思い返すと、私が教わってきた師匠たちは、ツール、設計、マーケティング、AIと分野はばらばらでも、みんな「トップダウン」で考える人たちでした。

    マーケティングの師匠には、こう教わりました。

    PDCAのPの前には、G(Goal)がある。

    AIの師匠は、ゴールや成果物の形を先に決めて、そこへ導いていく「ゴールシークプロンプト」の生みの親です。

    ゴールを決めるというのは、いちばん上の階から全体を見ること。

    そこから地上に降りて、今の状況を具体的に把握し、整理する。

    そして、ゴールに向かう具体的な一歩を決めていく。

    ツールの師匠は、AutoCADや3D設計ツールに精通されている方。
    この方も、トップダウン設計の考えを大切にされている方でした。

    そして、さらに

    「新しい業務フローを考えるときは、作って壊す!を最低3回はやりなさい。」

    という教えでした。この「作って壊す!」は、AIの師匠も同じようなことを言っていました。

    そして、新しいことに挑戦するときは、自分の中で最適解だと思っていても、実際に作って・検証して・改善して…と繰り返していると、当初の設計とは全然違う良いものが生まれることが多いですね。

    そして、これこそが
    G-PDCA(達成したいGoalを決めて、Plan※計画、Do※実行、Check※測定・評価、Action※対策、改善)ですね。

    師匠たちがやっていたのも、この「具体と抽象の行き来」だったんだと、本を読んで腑に落ちました。

    AIが得意なこと、人間にしかできないこと

    AIを使っていると、「ちょっと伝えただけで、こんなものまで出してくれるの?」と驚くことがよくあります。

    AIは、具体と抽象の行き来そのものが、とても得意です。

    AIが得意なこと

    • まとめる(抽象化):バラバラの情報から共通点を見つけて整理する

    • 形にする(具体化):例を出す、文章にする、アプリにする

    • 道筋を引く:ゴールまでの道のりを、スモールスタートで進められるステップに分けてロードマップにする

    • とにかく速い:人が何日もかかることを、数分でやり遂げる

    人間にしかできないこと

    • やりたいこと・欲しいゴールを決める:何のために、どこへ向かうのか。それを知っているのは、AIではなく私たち人間

    • 全体最適を意識してゴールを置く:自分の持ち場だけでなく、会社全体がつながるゴールにする

    • 「うちの会社の具体」を伝える:部署ごとの業務、誰が何をしているか、誰が何に困っているか

    • 成果物を判断し、責任を持つ:AIが出したものが正しいか、本当に使えるかを最後に見極めるのは人間。その結果に責任を負うのも、私たち人間

    ゴールさえ決まれば、そこまでの道のりはAIが一緒に考えてくれます。

    しかし、どんなに賢くても、AIは私の職場の環境や仕事のルール、私が何をしたいのかまでは知りません。材料になる「うちの会社の具体」は、AIの中にはないのです。

    そして、AIがどれだけ立派なものを出してくれても、「これでいい」と判断して世に出すのは私たちです。AIは頼もしい相棒ですが、最後の判断と責任は、人間が持つ。ここは、どんなに技術が進んでも変わらないと思います。


    もうひとつ大事だと思うのは、AIは渡されたものの範囲で最適化するということです。

    自分の持ち場の情報だけを渡せば、自分の持ち場に便利なもの(部分最適)が返ってきます。

    会社全体の情報とゴールを渡せば、全体がつながる仕組み(全体最適)が返ってきます。

    つまり、AIに何を渡すかで、できあがるものが変わる。

    そして、何を渡すかを決めるのは、具体と抽象を行き来しながら全体を見ている、私たち人間の役目なのだと思います。

    実例:4年前のデータが、15分でアプリになった

    それを強く実感したのが、最近の出来事です。

    新しく入社した上司が、物件の対応で慌ただしい日々の中、こう声をかけてくれました。

    誰が何をしているのかわからない。知りたい!

    採用活動のサポートをしていた関係で、私の手元にはいろいろな部署の情報がありました。

    そのとき、「あのときのデータがある!」と思い出したのです。

    それは、BIMのヒアリングのあと、管理職の皆さんにお願いして入力してもらった、4年前の業務棚卸しの資料でした。

    業務は、大項目・中項目・小項目の3段階に分けてもらっていました。たとえば、こんなイメージです。

    • 総務の担当:労務管理(大)> 勤怠管理(中)> 毎月の勤怠データの集計・確認(小)

    • 設計の担当:図面作成(大)> 建築図面の作成(中)> 設計変更にともなう図面の修正(小)

    さらに、業務ごとに次のことを入力してもらいました。

    • 部署・担当区分

    • 定型業務か、非定型業務か

    • 頻度(日・週・月・年・都度)

    • 使っているツール

    頻度とツールは、選択肢を並べたマトリックスにして、当てはまるところに○をつけるだけにしました。書くのは業務名だけ。忙しい皆さんに、できるだけ負担をかけないための工夫です。

    実際に使ったシートそのものではありませんが、こんなイメージのシートを共有して、皆さんに書いてもらいました。


    その結果、回収率は100%。全員が提出してくれました。

    今回掲載しているのは、このときのデータをイメージしてもらうためのものです。社内のツールを全て記載し、協力してもらう人になるべく負担をかけない工夫をしました。
    このフォーマットでの提出以外に、詳細な情報をくれた方も多かったです。
    知らなかっただけで、皆さん、自分の業務をまとめていらっしゃいました!


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    以前から、「組織図と人と仕事がつながって見えるアプリがあったらいいな」とイメージしていました。

    そこで、AI(Claude)に次の2つを読み込ませました。

    • 各部署の担当業務

    • 社員情報テンプレートのデータ(項目名だけ本物で、中身はサンプルに書き換えたもの)

    社員一覧と業務を紐づけて、いろいろな角度から分析できるダッシュボード付きのアプリを作り、上司に共有しました。

    ↓ 実際の画面をもとにしたイメージです。組織名や構成は、実際のものから変更しています。

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    上司は「自分が覚えるために使いたい」とのことでしたが、私はよければそのまま社内の仕組みにできる形で渡しました。

    実際に使うときは、社内のデータベースから社員情報をCSVでダウンロードして取り込むだけ。AIに渡したのはサンプルだけで、本物のデータは社内で扱う設計です。

    今はパソコンの中で動くシンプルなものですが、いつでもデータベースと連携させて、社内の標準ツールにできる状態にしてあります。


    ずっと貯めてきたデータと、ずっと考えてきたこと。

    それが、たった15分でたたき台になり、1時間ほどの調整で形になりました。本当にうれしかったです。

    新しい環境に来たばかりの上司も喜んでくれました。このアプリで社内が見えるようになって、少しでも不安が減ったり、仕事が楽になったりしていたらいいなと思っています。

    振り返ると、4年前に集めた「具体」がしっかりあったからこそ、AIはそれを整理して全体像を見せ、さらにアプリという具体的な形にまでしてくれたのだと思います。

    これから取り組むなら

    今は、口頭で話すだけでもAIがきれいにまとめてくれます。

    • 業務マニュアル

    • 業務の棚卸し

    • ベテラン社員のノウハウ

    • 退職時の引き継ぎ

    以前はハードルが高かったことが、ぐっと身近になりました。

    とはいえ、誰もが自分で話して、うまくまとめられるわけではありません。そんなときは、インタビュー形式にしてみるのもおすすめです。

    「業務のヒアリングをさせてください!」とお願いして、聞くべきことを事前に用意しておく。あとは話を聞いて、AIにまとめてもらうだけです。聞くべき質問のリストも、AIに相談すれば一緒に作ってくれます。

    そうすれば、ベテラン社員のノウハウも、あっという間に会社の資産として集まっていくはずです。


    一方で、「周りが導入しているから、とりあえず」で始まって、会社の方針や具体的なプランが見えないまま……ということも多いように感じます。

    個人で便利に使えても、部署や会社全体の効率化につながる仕組みは、まだこれからというところも多いのかもしれません。私たちも、まさにその途中です。

    まずやってみることは、とても大事です。特にAIは、触ってみて感覚をつかむのがいちばん。「怖いから使わない」が、いちばんもったいないと思います。

    そのうえで、一定期間試したら一度立ち止まる。

    使ってみて気づいた一つひとつのこと(具体)を持ち寄って、「組織としてどう使うか」「今の課題は何か」をまとめる(抽象)。

    この往復が、次の一歩につながるのだと思います。

    人同士のすれ違いも、「見ている高さ」のちがいかもしれない

    デジタル化が進んで、リモートやチャットでのやりとりが当たり前になりました。送れば読んでもらえる、とても便利な時代です。

    でも、受け手によって受け取り方は違います。

    ちょっとしたニュアンスの違いで相手に誤解を招き、傷つけてしまったり、意図が伝わっていなかったりすることもあります。世代も、経験も、物差しも人それぞれです。

    具体と抽象の考え方で見ると、こうしたすれ違いの多くは、お互いが違う高さから話していることで起きているのかもしれません。

    一方は全体の話をしているつもり。もう一方は、目の前の作業の話をしているつもり。

    チャットでやりとりしていたことも、直接顔を合わせて話してみると「そういうことだったのか」と気づくことがよくあります。

    自分の考えを伝えること。相手がどう思っているのかに、耳を傾けること。

    AIに対しても、人に対しても、結局そこが出発点なのだと思います。

    おわりに:AIを味方に、みんなでつながる会社へ

    BIMもDXも、担当者や一部の人だけで取り組むものではないと思っています。

    一人ひとりが、自分の仕事を一つ上の階から眺めてみる。それだけで、見える景色はずいぶん変わります。

    • 現状を知る:地上で、一つひとつの具体を集める

    • ゴールを決める:一つ上の階から、全体を見て決める

    • みんなで進める:個人ではなく、部署や会社全体で話し合いながら進める

    遠回りに見えて、それが結局いちばんの近道なのだと、100人の声を聞いて感じました。

    AIは、具体と抽象を行き来する頼もしい相棒です。

    でも、何を渡し、どこへ向かうのかを決めるのは、私たち人間。

    具体と抽象を行き来しながら、AIを味方に、強い会社をつくっていきたい。

    現場で働く一人として、そう思っています。

    最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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    「具体⇄抽象」トレーニング  思考力が飛躍的にアップする29問
    (PHPビジネス新書)   細谷 功(著)

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    電子部品メーカーでCADとPMを約10年。建設業界でBIMの導入支援を経て、現在は設計の現場でAutoCADとAIを活用した自動化や、3Dを活用したDX・業務効率化に取り組んでいます。「人も機械も読める図面」を目指し、AIと自動化で手作業を減らす方法を、試行錯誤ごと発信中。

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