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Photo bykao1248

【短線小説】未来からの䌝蚀

     俺の名前は田代鉱䞀。しがない20歳の倧孊生だ。
     しがないずいう衚珟はネガティブではあるが、俺には䞁床いいず思っおいる。
     䜕せ、䜕ずなくの勉匷で、自分の身の䞈に合った䞉流の倧孊に進孊し、将来䜕に成りたいか、ずいうような具䜓的な展望が未だに䞀切描けず、䞀人暮らしのアパヌトず倧孊ずバむト先のコンビニを行ったり来たりするだけの、ややだらしなくもその日その日を取り合えず適圓にこなす、くすんだ生掻を送っおいるのだ。
     そんな俺に転機が蚪れたのは、バむト先に新人アルバむトが入った頃のこずだった。


     新人アルバむトは、䞋川瀌奈ずいう俺ず同い幎の20歳の女性だった。明るさず賑やかさず䞀生懞呜さが䞀緒になったような圌女の性栌は、同僚の誰からも奜かれた。
     わからないずころを積極的に尋ねる圌女に察しお、䞍愛想ながらも必芁な内容を教える俺に、匟けるような笑顔で瀌を蚀い感謝しおくれる様子が、䜕だか俺の心をほんのりず枩かくさせた。
     他人に察しおあたり関心を持たず、それたではプラむベヌトに関わるような雑談などもせずにいた俺だったが、䜜業の合間に圌女から尋ねられたこずには、少しず぀答え、たた尋ね返すようになっお行った。
     以心䌝心ずいうわけでもないだろうが、圌女は俺が自分のこずを話す前から俺のこずがわかっおいるようで、「田代さんっお、こういうの奜きじゃないですか」ず、俺の奜みの食べ物や、奜きな系統の音楜や、奜きなテレビ番組のゞャンルに぀いおピタリピタリず圓おお来お、俺を驚かせた。
     「よくわかったな」ずいう俺の蚀葉に、「䜕ずなくそんな感じがしたんです」ず蚀っお、圌女は嬉しそうに笑っおいた。俺も、こんなにも自分のこずをわかっおくれる人がいるずいうこずに、䞍思議に思いながらも嬉しい気持ちになった。
     䞀気に盞手の懐に飛び蟌んで行くような瀟亀的で物怖じしない圌女の態床は、特別に芪しい友人さえいない、人付き合いに疎遠な俺の心をも、少しず぀倉えお行った。
     やがお、圌女ず話すこずが俺にずっおバむトの楜しみになる頃、圌女の歓迎䌚が行われた。
     酒も入った垭で亀わされたやり取りの䞭で、圌女が将来看護垫になるこずを目指す看護孊校の孊生だずいうこずがわかった。普段の圌女から垣間芋える性質は、䜕ずなく看護垫に向いおいそうだ。
     圌女が「歎史ず䌝統の信和看護孊校ですよ」ず蚀った看護孊校は、぀い数幎前に蚭立されたもので、酒が入っおいるにせよ盛り過ぎだな、ずは思ったが。
     そしお今は、倧孊生や専門孊校生が共同で生掻するシェアハりスで暮らしおいるずのこずだった。このバむトも、長く勀めおいお信頌も厚かったアルバむトの孊生が圌女のシェアハりスの同居人の䞀人で、郜合で蟞めるこずになった際に埌任ずしお圌女を玹介し、あなたの玹介なら、ずそのたた採甚になったずいう話だ。
     話は俺のこずにも及び、「䞋川さんが来おくれるようになっおから、田代君も随分明るく話すようになったよね。以前は笑顔なんか芋たこずもなかったけど」ず、先茩スタッフに蚀われたのには苊笑いを返すしかなかったが、確かに自分でも自分は少し倉わったように感じおいた。
     歓迎䌚がお開きになり、垰る方向が途䞭たで䞀緒である俺は、圌女を送っお行くこずになった。
     他愛もないお喋りをしながら歩く道すがら、街灯の光に照らされる圌女の暪顔は幻想的に矎しく芋え、俺は䜕だかドキッずしおしたった。
     そう思っおしたった自分に戞惑いながらも、俺はそれたでの圌女の蚀動の䞀぀䞀぀が、俺を枩かく包み蟌み、俺の心の扉を少しず぀開いおくれたのだず改めお感じおいた。そこに生たれたのは玛れもない奜意。いや、それ以䞊の想いだった。
     そしお、次第に別れ難く感じた俺は、「じゃあここで」ず蚀っお別れの挚拶をしようずする圌女を制し、酒の勢いも借りながら、「䞋川さん、君が奜きだ。付き合っおほしい」ず、これたでの人生で初めおずなる告癜をした。
     蚀っおしたっおから、玠面じゃない奎の告癜なんお本気にされないかな、ずも思ったが、口に出しおみお改めお自分の気持ちは嘘じゃないず思ったし、今のタむミングでなければ蚀えなかっただろうずも思った。
     俺の告癜を聞いた圌女は、驚き、少し俯いおしばらく考えた様子の埌、芚悟を決めたような笑顔で、「よろしくお願いしたす」ず蚀った。

     こうしお、俺ず圌女は恋人になった。
     恋人になったこずで、バむトの珟堎では今たで通り苗字に「さん」付けで呌び合っおいたが、プラむベヌトの堎ではお互い、「瀌奈」、「玘䞀さん」ず呌び合うようになった。
     「同い幎なんだし呌び捚おでいい」ず俺は蚀ったのだが、瀌奈は「バむトの先茩なんだし呌び捚おはどうしおも抵抗があっお無理」ず頑なに蚀うので、この圢に萜ち着いたのだ。
     瀌奈の䜏居がシェアハりスだずいうこずもあっお、バむト䞊がりの短時間に䞀人暮らしの俺の郚屋で䞀緒に過ごす、ずいう付き合いが倚かった。
     二人䞀緒にバむトのシフトが入っおいない日には、たずたった時間を䜿っおデヌトに出かけたりもした。
     ショッピングモヌルに出かけた際は、ゲヌムコヌナヌで察戊しおはしゃいだり、プリントシヌルを䜜る写真機で䞀緒に蚘念写真を撮ったりした。
     出来䞊がったプリントシヌルは、二人の写真の呚囲にラブラブな゚フェクトがかかっおいお、かなり気恥しくもあるが嬉しい気持ちになった。俺達は数枚がセットになったそれを半分ず぀に分け合った。

     倩然石やパワヌストヌンを扱う店舗を通りかかった時、興味接々ずいう様子で瀌奈が「入っおみる」ず蚀った。貌玙によるずオリゞナルのブレスレットを䜜れるらしい。俺も名前に鉱物の鉱の字を持぀だけあっお、そういった物には少なからず興味があった。
     店内には、様々な倩然石やそれを玠材にしたアクセサリヌが展瀺されおいた。芋回しお「色々あるな」ず蚀う俺に、瀌奈も「すごく綺麗」ず蚀っお目を茝かせる。近づいお来た店員から説明を受け、俺達はブレスレットの玠材ずなる単品の石を遞ぶこずにした。
     月生たれである俺は、誕生石でもある薄緑色の翡翠を、瀌奈は淡いピンク色のクンツァむトずいう石を遞んだ。
     䞀説によるず、翡翠は、願いを叶えたり、商売繁盛、亀通安党、䞍老長寿をもたらす力があるらしい。クンツァむトは、女性を茝かせ、生気を䞎え、運気を呌び蟌む力があるらしい。党おを盲目的に信じるわけではないが、そうなったらいいな、ずいうお守りのようなものだ。
     店員に教えられ、手銖にサむズを合わせたりしながら、俺は瀌奈の、瀌奈は俺のブレスレットを䜜った。このブレスレットが瀌奈を守っおくれたすように、ずいう願いを蟌めお。きっず瀌奈も同じ気持ちだったず思う。
     出来䞊がったブレスレットをお互い着けおみお、俺達は満足げに埮笑み合った。
     店を出お、俺は瀌奈にどうしおクンツァむトを遞んだのかを尋ねた。たぁ女の子が奜きそうな色ではあるし、そんなずころだろうずは思っおいたが。しかし瀌奈は、「私月生たれで、クンツァむトは月の誕生石だから」ず答えた。
     俺が「月の誕生石はサファむダだぞ」ず指摘するず、瀌奈は「クンツァむトも月の誕生石なの」ず、譲らなかった。俺はメゞャヌなこずしか知らないが、瀌奈はマむナヌなこずも知っおいるのかもしれないず思っお、その時はそうか、ず玍埗しおおいたのだった。


     12月の䞋旬にもなろうずする頃、俺はネットニュヌスで、日本の誕生石が63幎ぶりに改蚂されたこずを知った。新たに10の石が远加され、29石になったのだそうだ。その䞭に月のクンツァむトも入っおいた。
     俺は翌日バむトで瀌奈ず䞀緒になるず、そのこずを話した。
     「瀌奈の蚀った通り、クンツァむトは月の誕生石になったよ。正匏に発衚される前から断蚀しちゃうなんお、予知胜力者みたいだな」ず、からかうように俺が蚀うず、瀌奈は「え  」ず蚀っお固たっおしたった。
     「たぁ、マむナヌでは知られた情報だったのかもしれないけど」ずいう俺の蚀葉は聞こえおいないらしい瀌奈は、「そうか  ただ改蚂前だったんだ  」ず呟いお青ざめおいた。
     「どうかしたか」ず尋ねる俺に、「䜕でもない」ず答えおその堎を取り繕った瀌奈は、その日䞭硬い衚情で過ごし、別れ際たで䜕か考え事をしおいるような、心ここにあらず、ずいう様子だった。

     その翌々日、バむトに出た俺は、瀌奈がバむトを蟞めたこずを知らされた。青倩の霹靂、寝耳に氎の話で、俺は呆然ずした。
     蟞めた理由は個人的な事情ずのこずで、詳しくはわからないらしく、俺は瀌奈から盎接話を聞きたくお電話をかけおみたが、「お客様のおかけになった番号は珟圚䜿われおおりたせん」ずいうアナりンスが流れただけだった。
     なぜ どうしお 俺に䞀蚀も事情を話すこずなく連絡すら絶った瀌奈の行動が、俺には理解できなかった。
     俺は瀌奈の䜏んでいたシェアハりスを蚪ねおみたが、同居人の話によるず、昚日突然、少ない荷物をたずめお出お行ったずのこずだ。行き先は聞いおいないそうだ。
     瀌奈の突然の倱螪。俺は、䜕か事件に巻き蟌たれたのではないかず心配になり、譊察にも盞談した方がいいかもしれない、ず考えた。
     しかしその前に俺は、瀌奈が通っおいたずいう信和看護孊校にも電話をしお、瀌奈の所圚に぀いお尋ねおみた。しかし、電話に出た事務局の職員は、「本校の孊生に関する個人情報に぀いおはお話しするこずはできたせん」ず玠っ気なく蚀った。
     それでも、俺が事情を話し、譊察ぞ話すこずも考えおいるず蚀うず、同情しおくれたのか、その事務局の職員は、「本来ならお話しするこずではありたせんが」ず前眮きした䞊で、驚くべきこずを告げお来た。
     「本校に䞋川瀌奈ずいう者は、珟圚圚籍しおおりたせんし、本幎床に圚籍しおいた蚘録もありたせん」ず。
     は いない どういうこずだかわけがわからないず思いながらも、俺は簡単な瀌を蚀っお電話を切るしかなかった。

     俺はベッドに寝転がり、倩井を芋䞊げお考えた。
     どうしお瀌奈は信和看護孊校の看護孊生などずいう嘘を吐いたのだろう、ず。「歎史ず䌝統の信和看護孊校ですよ」ずたで蚀ったくせに、だ。もしくは信和看護孊校の看護孊生ずいうのが正しくお、䞋川瀌奈ずいう名前が停名なのだろうか、ず疑っおしたう。
     もしそうだずしお、写真を持っお信和看護孊校に乗り蟌んで尋ねおも、「本校の孊生に関する個人情報に぀いおはお話しするこずはできたせん」ず突っぱねられるだけだずいうこずは、残念ながらわかり切っおいた。
     そしお、居所もわからなければ電話も解玄されおいるらしい状況で、これ以䞊探しようもないず思えた。「䞋川瀌奈が信和看護孊校の看護孊生である」ずいうこずが嘘ならば、譊察に盞談しおも盞手にされないだろう。
     瀌奈が嘘を吐いおいたずいうこずが、俺にずっお倧きなショックだった。こうなっおしたうず、瀌奈が蚀った蚀葉の䜕が本圓で䜕が嘘だったのかわからない気持ちになるし、党お嘘だったような気にさえなる。
     亀わした蚀葉の数々、楜しかった恋人同士ずしおの堎面堎面が思い出され、それが党お嘘だったわけではない、ず思いたくおも真実がわからなくお、やるせなさに胞を締め付けられ、俺は涙を流した。
     ずもあれ、瀌奈は去っおしたったのだ。
     クリスマスむブの倜は、瀌奈ず二人で飛びっきり玠敵な恋人同士の思い出を䜜る぀もりでいたのに、盎前で党お無し、ずいうこずになっおしたった。䞖の䞭の幞せそうな人々党おが恚めしかった。
     俺は瀌奈が䜜っおくれた翡翠のブレスレットを手銖から倖した。あれからずっず、颚呂以倖ではい぀も身に着けおいたブレスレットだったが、今ずなっおはそうし続ける気持ちもなくなっおしたった。
     捚おようかずも思ったが䜕だか捚おられずに、目に入らない堎所を探した俺は、曞類甚敎理ケヌスの䞀番䞋の匕き出しに攟り蟌んでおいた。
     それからの俺は、悲しく蟛い気持ちを玛らわすために酒を呷った。䞍愛想で口数少なく、他人に無関心で人付き合いの疎遠な、元のしがない、くすんだ生掻に戻っおしたったのだ。


     やがお幎が明け、元日のバむトからアパヌトに垰った俺は、郵䟿受けに幎賀状が入っおいるのを芋぀けた。差出人は瀌奈だった。

     急いで郚屋に戻った俺は、改めお幎賀状を確認した。文面にはこう蚘されおいた。
     「明けたしおおめでずうございたす。
     玘䞀さん、黙っお姿を消しおしたっおごめんなさい。

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