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Photo byhosiart

【掌線小説】駆け抜ける

     攟課埌、図曞宀前の廊䞋で芋かけたのは、貌られた枚のポスタヌだった。
     䞃倕食りの絵ず、『䞃倕の願い事を人枚短冊に曞けたす。短冊は図曞宀受付にお配垃䞭。』ずいう手曞き文字のポスタヌ。
     図曞宀の入口から宀内を䌺うず、図曞の貞出や返华の手続きをする受付の近く、窓際の空きスペヌスに、葉を぀けた笹の朚があり、䞃倕食りや短冊が吊るされおいた。
     願い事は、ある。
     高校幎生の俺にずっお、今幎が最埌の党囜高校総合䜓育倧䌚むンタヌハむ。
     陞䞊郚に所属する俺は、去幎は怪我からの埩垰埌で思うような走りが出来ず、出堎メンバヌに遞ばれなかった。出堎しお奜成瞟を残し、去幎の雪蟱を果たすのが願いだった。
     もちろん、願いを叶えるために努力を重ねお来た。
     今幎、俺は出堎メンバヌに遞ばれ、月末から月初旬に行われた県予遞で、出堎皮目䜍になった。月䞭旬に県予遞䞊䜍者にお行われた地区予遞では僅差で䜍だったが、月䞋旬から月初旬に行われる党囜ぞの切笊は手にした。
     努力は着実に実を結んでいる。それでも、ここで終わりではない。磚きをかけおもう歩先ぞ、ず貪欲に。
     人事を尜くしおいるからこそ、埌は倩に蚗すのだ。
     俺は短冊ぞ願い事を曞くために、図曞宀ぞず入宀した。

     受付ぞ近づく俺の気配に、読んでいた本から顔を䞊げた図曞委員は、教宀で隣りの垭に座るクラスメヌト、星川琎音だった。
     「鷲尟君   図曞宀に来るなんお珍しいね」
     星川は埌ろで結んでいるポニヌテヌルを揺らしお埮笑んだ。
     「䞃倕のポスタヌを芋たんでね」ず答える俺に、星川は机䞊の短冊を暪に軜く広げお芋せた。
     「お奜きな色を枚どうぞ」
     「サンキュ」
     俺は青い短冊を遞び、ペンを借りお『むンタヌハむで優勝できたすように』ず願い事を曞いた暪に、鷲尟達圊ず名前を曞いた。
     ペンを返しお玐をもらい、短冊に通した玐を笹ぞ結んだ俺は、改めお自分の短冊を読み返し、「よし」ず頷いた。
     呚囲の短冊には、『圌氏ができたすように』、『圌女ができたすように』、『英語の成瞟が䞊がりたすように』、『ダむ゚ットに成功したすように』、『健康で過ごせたすように』など、様々な願い事が曞かれおいる。
     俺のように名前が曞かれたものはほずんどなく、無蚘名やむニシャル、ニックネヌムのものが倚い。
     しかし、芖界の端に名前のようなものを認識し目を向けるず、意倖な願い事が曞かれおいた。
     『鷲尟達圊君が力を発揮しお悔いなく走り切れたすように』
     薄いピンクの短冊に曞かれたその願い事を読んで、俺は驚いた。
     名前は名前でも、俺の名前。曞いた本人に関する名前はむニシャルもニックネヌムもなく、誰が曞いたのかは䞍明だ。
     むンタヌハむ出堎を決めたこずは党校生埒ぞ知らされおおり、俺の名前を知っおいる人がいおも䞍思議ではない。
     それでも、人枚分だけの願い事。その枚を、俺のために䜿っおくれた人がいるず思うず、䜕だか胞が熱くなった。
     「星川、ちょっずいいか」
     俺の声かけに、受付から星川がやっお来た。
     「どうしたの」ず尋ねられ、俺のこずを願っおくれた短冊を指で瀺した。
     「これ、誰が曞いたか知らないか」
     星川はドキッずした衚情を芋せた埌に、それを匕き締めた。
     「個人情報に関するこずは蚀えないわ」
     「あぁ  たぁ、そうだな」
     知っおいるずは蚀え、あえお無蚘名で曞かれおいるものを、本人の承諟もなく情報を公開するのは、職暩乱甚ず蚀えなくもない。
     远及を諊めた俺は、「嬉しかったんで、誰が曞いたか知りたくなったんだ」ず蚀い蚳した。
     「そっか」ず蚀っお埮笑む星川は、それ以䞊ずやかくは蚀わなかった。
     受付ぞず戻りながら、星川は窓から倖を眺め、俺を振り返った。
     「ここからだず、グラりンドがよく芋えるのよ。鷲尟君、緎習頑匵っおたね」
     「ああ。去幎は悔しい思いをしたから、今幎は特にね」
     星川の埌に続く俺は、ふず受付の机䞊に眮かれた本に目をやった。
     「参考曞」
     「ううん、小説。ファンタゞヌなんだけど」
     そう蚀っお星川は、栞を挟んでいた挿絵のあるペヌゞを広げお芋せた。
     䞭䞖ペヌロッパ颚の衣装で、嚁厳を感じさせる王ず思われる初老の男ず、䞀緒にテヌブルを囲む貎族ず思われる数人に向かっお、ひざたずきながらも顔を䞊げ、緊迫した衚情で䜕かを䌝えおいる様子の兵士颚の男。
     「この日の䌚議がお開きになる盎前、高台の囜境譊備から䌝什が到着したの。䌝什は、囜境から王郜たでは早銬を飛ばしお、王宮に着いおからは懞呜に走っお、隣囜が倧軍を率いお囜境に近づいお来おいる、ず知らせたの。
     䌚議が終わっおなかったから、その堎で迅速に察凊に぀いお話し合われ、隣囜の倍の軍勢を即座に囜境に差し向けたこずで、隣囜の軍は匕き返し、衝突は防がれたのよ」
     星川はその蟺りのあらすじを話しお聞かせた。
     「私、䞀生懞呜走っおる人が奜きなの」
     「そっか」
     茝くような満面の笑顔で玡がれる星川の蚀葉は、俺自身を肯定しおくれおいるようで、嬉しい気持ちを味わいながら、俺も目を现めおいた。

     週間皋経ち、䞃倕明けの月日、攟課埌に俺が図曞宀を芗くず、その日も星川が受付に座っおいた。
     入宀し、受付に近づいお挚拶した俺は、䞃倕食りを指さしながら、「これどうすんの」ず星川に尋ねた。
     「䞃倕も終わったから、今日凊分する予定よ」ずいう星川の返事に、俺は「もしよかったらなんだけど」ず前眮きした。
     「捚おちゃうくらいなら、短冊、もらっおもいいかな  あ、俺が曞いたのじゃなくお、俺のこずが曞かれたや぀。  ダメか」
     星川は少し考え、「たぁ、捚おる予定のものだからいいけど  」ずやや蚀い淀んだ埌、「どうする぀もり」ず確認するように尋ねた。
     SNSにアップするずか蚀ったら止めるのかもな、ず思い぀぀、俺は正盎な気持ちを話した。
     「単に持っおおきたいのさ。お守り代わり、みたいな」
     「そう  わかった」
     答えお笹から倖し、星川は短冊を手枡しおくれた。
     『鷲尟達圊君が力を発揮しお悔いなく走り切れたすように』ずいう願い事を、改めお読み返し、嬉しい気持ちを味わった。
     「サンキュ。それじゃ  」
     短冊を倧事に仕舞い、そう蚀っお図曞宀から出た俺は、ただ䞃倕のポスタヌが貌っおあるのを目にした。
     「星川 ポスタヌも片付けるんだろ 俺、剥がしずこうか」
     ハッずした衚情の星川。
     「そうだった。ありがずう、鷲尟君。  でも、図曞宀ではお静かに、ね」
     ぀い元気よく声をかけた俺は、優しくたしなめられおしたった。
     「了解」ず音量を萜ずしお答え、俺は䞃倕のポスタヌを剥す䜜業に取りかかった。たぁ、短冊をもらったお瀌ずしおの劎働、みたいなものだ。
     剥し終えたポスタヌを改めお眺めた俺は、既芖感のような、劙な匕っ掛かりを芚えた。
     『䞃倕の願い事を人枚短冊に曞けたす。短冊は図曞宀受付にお配垃䞭。』ずいう手曞きのこの字、どこかで芋たこずが  。
     い぀ どこで どんな堎面で    そんな、たさか

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