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#93 韓国の銀行へのAIサイバー攻撃で、Claude Codeまで使われたと知り青ざめた話

    対象読者: 意思決定層

    日曜の朝、セキュリティニュースを眺めていて手が止まりました。韓国の金融機関を狙ったAIサイバー攻撃で、攻撃者がAIエージェントに侵入の作業を任せていたという報告です。しかも、その作業記録の中にClaude Codeの名前がありました。私自身も勉強用のツール作りで触っている、AIの開発支援ツールです。

    「AIが攻撃に使われる」という話は何度も読んできました。それでも、手元で動かしているのと同じ道具が、銀行への攻撃の現場にあった。その事実に青ざめました。この記事では、セキュリティ企業CrowdStrikeの一次レポートをもとに、何が起きたのかと経営層が今確認したいことを整理します。

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    [図: 攻撃者の2台のサーバーとAIツールの役割分担]

    1. 何が起きたのか:韓国の金融機関を狙ったAIサイバー攻撃

    CrowdStrikeのレポートによると、攻撃は9月下旬から10月上旬にかけて続き、韓国の複数の金融機関からデータが盗まれました。思っていたよりずっと短い期間です。

    侵入口として報じられたのは、ある銀行では融資の仲介業者が使う「融資の進み具合の照会サービス」、別の銀行では社員がスマートフォンで使う業務支援システムでした。どちらも社外からつながる業務アプリです。……派手な基幹システムより、取引先や社員のための「便利な入口」が狙われた。ここがいちばん引っかかりました。

    被害を受けた組織の数は、レポートの執筆時点で確定していません。攻撃者は既知の攻撃グループとは結びつけられていないものの、中国語を話す金銭目的の人物である可能性が高い。CrowdStrikeはそう中程度の確度で評価しています。

    出典: CrowdStrike「Unknown Threat Actor Uses AI-Driven ARTEX to Target South Korean Finance」(2026年10月7日、https://www.crowdstrike.com/en-us/blog/unknown-threat-actor-uses-artex-to-target-south-korean-finance/)

    2. 攻撃者の作業記録からわかったAIの使われ方

    手口がわかったのは、攻撃者自身のサーバーが外から丸見えだったからです。そこにはClaude Codeのセッション履歴(AIとのやりとりの記録)や、AIへの指示書、設定ファイルが残っていました。攻撃者の作業日報が公開されていたようなものです。

    使われていた道具は大きく2つです。

    ARTEX
    中国で開発され、当初オープンソースで公開されたAIエージェント型のペネトレーションテスト(侵入テスト)ツールです。本来は自社システムの弱点を探す道具が、他人の銀行に向けられました。悪用の判明後、開発者は10月8日に非公開化と更新停止を表明しています。ARTEXの頭脳役となるAIモデル(LLM、文章を理解して考える部分)には、主に中国のDeepSeekが使われていました。

    Claude Code
    Anthropicが提供する、指示を受けて調査やプログラム作成を自動で進めるAIエージェント型の開発ツールです。攻撃者は一部のClaude Codeのセッションで、中国のZhipu AIのGLMやxAIのGrokといった別のAIモデルも使っていました。

    指示書は中国語で、侵入テストの進め方をAIに細かく指定していました。さらに攻撃者は、韓国の流出データを売買するTelegramのグループ探しまでClaudeに手伝わせようとしていました。……え、そこまでAIに聞くの? と声が出ました。

    出典: BleepingComputer「ARTEX AI, Claude agents used in cyberattacks on South Korean banks」(2026年10月10日、https://www.bleepingcomputer.com/news/security/hacker-used-artex-ai-and-claude-agents-to-target-south-korean-banks/)

    出典: Digital Today「ARTEX open-source AI penetration testing tool goes private」(2026年10月9日、https://www.digitaltoday.co.kr/en/view/112677/artex-open-source-ai-penetration-testing-tool-goes-private-unrelated-to-hacking-of-korean-financial-firms)

    3. 経営にとっての意味:AIサイバー攻撃は「速さ」と「件数」を変える

    レポートで一番重く受け止めたのは、AIの道具によって、金銭目的の攻撃者が短期間に複数の侵入を行えることが示された、という評価です。攻撃の規模は、これまで攻撃者の人数や腕前でほぼ決まっていました。偵察や弱点探しをAIエージェントに任せれば、1人でも何社も同時に相手にできます。

    今回の攻撃者は、大きな組織の後ろ盾があるとは確認されていません。公開されていた侵入テストツールと、API仲介サービス経由で使ったとみられるAIモデルの組み合わせで、金融機関に届いてしまった。私はこれを「攻撃の参入障壁が下がった」と受け取りました。

    経営の言葉に置き換えると、変わるのは2つです。まず狙われる会社の数。規模が小さいから狙われない、という前提は弱くなります。次に侵入から被害までの時間。人が手作業で進めていた工程をAIが肩代わりすれば、気づくまでの猶予は短くなります。CrowdStrikeも、攻撃者は今後もAIの道具を試し、作業の速さと能力を高めていくだろうと見ています。

    4. AIサイバー攻撃に備えて、経営層が今週確認したい3つのこと

    1. 社外に開いている業務アプリを一覧にする
    今回の入口は、仲介業者向けの照会サービスと社員向けのモバイル業務システムでした。顧客向けのWebサイトだけでなく、代理店・取引先・社員向けのアプリも、誰が管理しているかまで含めて棚卸しします。

    2. 「気づいてから遮断するまで」の判断者を決めておく
    攻撃が速くなるなら、夜間や休日に異常を見つけたとき、誰が遮断を決めるのかが問われます。担当者が承認を待つ間にも、被害は広がります。

    3. AIの開発支援ツールは「禁止」より「把握」を優先する
    今回使われたのは、正規の便利な道具でした。禁止しても攻撃者は使います。自社としては、誰がどのツールを、どの権限で使っているかを把握する側に回ります。

    取締役会への報告は、たとえばこう始められます。「AIを使えば、少人数の攻撃者でも短期間に複数の金融機関へ侵入できる事例が確認された。社外向け業務アプリの棚卸しと、夜間の遮断判断の担当者を今月中に確定させたい」。

    迷っているのは2つ目です。遮断の判断を現場に任せると、誤検知で業務を止めてしまうかもしれません。どこまでを現場の権限にするか、報告文例の後半はまだ書き直している途中です。

    まとめ

    • 韓国の金融機関を狙ったAIサイバー攻撃では、ARTEXやClaude CodeといったAIの道具が組み合わされ、短期間に複数の侵入が行われました

    • 狙われたのは、仲介業者や社員向けに社外へ開いた業務アプリでした

    • 社外向けアプリの棚卸し、遮断を決める担当者、AIツール利用の把握。この3つは経営が決めることです

    手元で使っている道具の名前をレポートの中に見つけたときの、ひやっとした感じがまだ残っています。まずは自分のClaude Codeの設定と権限を見直すところから始めるつもりです。


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