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柔らかな光|風まかせ文芸部

    東西に窓がある祖母の部屋には、いつも柔らかな光が差し込んでいた。

    朝は、白いレースのカーテンを通した光が部屋全体を包んだ。

    子どもの私は、埃が光の中でゆっくりと舞うのを、祖母の膝の上でよく眺めていた。

    ある時、祖母が言った。
    「光にも、重さがあるのよ。ほら」
    そう言って、祖母は手のひらを朝の光に翳した。

    真似をして、光に向けた私の手のひらは、じんわりと温かくなった。

    朝の光は軽やかだけれど夕暮れの光は少し重い。祖母はそう教えてくれた。

    夕方、西日が差し込むと、部屋全体が金色に染まった。朝とは違う濃密な光だった。

    「夕暮れの光は、一日を抱えているからね」 祖母の言葉の意味は、子どもの私には良く分からなかった。

    私が中学生の時、その部屋は主を失い、空き部屋になった。がらんとした部屋に、それでも光は優しく毎日差し込んでいた。

    数年後、大学生になって一人暮らしを始める時、私は東向きの部屋を選んだ。朝の光は確かに差し込んで来たが、祖母の部屋の光の、あの柔らかさはなかった。

    何が違うのだろう。カーテンの質?窓の大きさ?それとも、私の記憶が美化しているだけなのか。

    社会人になった後は、仕事に追われる日々が続いた。自分の部屋で朝の光を浴びようと思う余裕もなくなっていった。東京での独り暮らしの部屋は、寝て起きるだけの場所だった。

    束の間の夏休み、久しぶりに帰った実家の祖母の部屋は、物置になっていた。

    翌朝、そのドアを開けると、埃が光の中でゆっくりと舞った。

    「光にも、重さがあるのよ」
    忘れかけていた祖母の声に促され、光にかざした掌が温かくなった。

    光の質感を忘れていたのは、自分自身だったとその時気づいた。

    夕方、再び覗いた部屋は、あの頃と同じ西日で金色に染まっていた。

    祖母の言葉を思い出しながら、窓辺に腰を下ろす。

    今日という一日を、この光が抱えてくれている。
    明日の朝は、また新しい光が差し込む。

    どちらも大切な柔らかな光だ。






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    #風まかせ文芸部 #光
    #共創 #ショートショート #私の作品紹介 #スキしてみて



     
     
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