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アラカシ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
アラカシ
Quercus glauca
Quercus glauca(大阪府、2006年10月)
分類(APG III)
界 : 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 Eudicots
階級なし : コア真正双子葉類 Core eudicots
階級なし : バラ類 Rosids
階級なし : 真正バラ類I Eurosids I
目 : ブナ目 Fagales
科 : ブナ科 Fagaceae
属 : コナラ属 Quercus
亜属 : クヌギ亜属 Cerris
節 : アカガシ節 Cyclobalanopsis
種 : アラカシ Q. glauca
学名
Quercus glauca Thunb. (1784)[1]
シノニム
和名
アラカシ(粗樫)、クロガシ、ナラバガシ
英名
ring-cup oak

アラカシ(粗樫[10]、学名: Quercus glauca)は、ブナ科コナラ属の常緑広葉樹。ドングリのなる木で、その年の秋に熟す。別名で、クロガシ[1]、ナラバガシ、ホソミノアラカシ[3]、ヒロハアラカシ[4]、ナガバアラカシ[5]ともいう。山陰地方で「カシ」というと、一般に本種アラカシを指す[11]。

形態

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常緑広葉樹の高木[12]。高さは10 - 20メートル (m) になる[13]。樹皮は黒っぽい灰色で、成木でも表面に裂け目や割れ目などはなく、ほぼ平滑である[10]。若い木では、樹皮が褐色を帯びることがある[10]。若枝は紫褐色で、皮目がある[10]。

樹形は広葉樹に特徴的な丸みを帯びたものである。大径木では根が若干であるが板根(英:buttress root)のようになる。

葉は互生し、長さ5 - 13センチメートル (cm) 、幅3 - 6 cmの長楕円形から倒卵状長楕円形で先端が尖る[13]。葉柄は長さ1.5 - 2.5 cm[13]。葉身は革質で硬く、葉脈の側脈は8 - 11対あり[13]、葉縁の中央から先端にかけて粗い鋸歯があり、下部は全縁であることが特徴的である[14][12][10]。葉の表面はつやのある緑色で[13]、裏面は粉を吹いたように毛が多く、白味を帯びている[12][10]。芽吹きの頃の新葉は、赤褐色でよく目立つ[10]。冬芽は長卵形で、重なり合った多数の芽鱗に包まれて葉の付け根につき、枝先の頂芽は頂生側芽を伴って複数つく[10]。

開花期は4 - 5月で[12]、雌雄同株。雄花序は長さ5 - 10 cmで垂れ下がり、雌花序は上部の葉腋につく[13]。果期は10 - 11月[13]。果実は長さ15 - 20ミリメートル (mm) の楕円形をした堅果(いわゆるドングリ)で、その年の秋に熟す[12][13]。殻斗(ドングリの基部についているもの。

いわゆる「皿」、「椀」「帽子」などと呼ばれる部分)には環状の模様が出る。 コナラ属でも日本産ナラ類はこの部分が鱗状の模様となっており見分けられる[15]。

発芽は地下性(英:hypogeal germination)で子葉は地中に残したまま本葉が地上に出てくる。このタイプの子葉は栄養分の貯蔵と吸出しに特化し、最初に根を伸長させ、次に本葉を展開させ自身は地中で枯死する[16]。

ブナ科の堅果の内部には子葉の他に未発達の胚珠の干からびたものが5つ入っている。この5つがどこの位置にあるのかはブナ科内での分類にも使用されている[17]。

生態

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他のブナ科樹木と同じく、菌類と樹木の根が共生して菌根を形成している。樹木にとっては菌根を形成することによって菌類が作り出す有機酸や抗生物質による栄養分の吸収促進や病原微生物の駆除等の利点があり、菌類にとっては樹木の光合成で合成された産物の一部を分けてもらうことができるという相利共生の関係があると考えられている。菌類の子実体は人間がキノコとして認識できる大きさに育つものが多く、中には食用にできるものもある。土壌中には菌根から菌糸を通して、同種他個体や他種植物に繋がる広大なネットワークが存在すると考えられている[18][19][20][21][22][23]。外生菌根性の樹種にスギやニセアカシアが混生すると菌根に負の影響を与えるという報告がある[24][20]。土壌の腐植が増えると根は長くなるが細根が減少するという[25]。

花は地味なものであり、花粉は風媒(英: anemophily)される。風媒花はシダ植物の胞子散布の様で原始的な花だと思われることもあるが、ブナ科やイネ科は進化の末にこの形質を獲得したとみられている[26]。

種子は重力散布型であるが、動物の影響も大きい。カシのドングリは渋くて食べにくく、実際に有毒である。ツキノワグマやイノシシは唾液中にタンニンを中和する成分を持ち、しかもタンニンが多い種類のドングリを食べる時期だけ中和成分を増加させることが報告されている[27][28]。一般にブナ科樹木の発芽にはネズミが地中にドングリを埋めるという貯食行動によるものが大きいと見られている。ネズミがドングリをその場で食べるか、貯食するかは周囲の環境の差も大きい[29]。ネズミもタンニンに耐性を持つが、常に耐性を持っているのではなく時期になると徐々に体を馴化させて対応しており、馴化していない状態で食べさせると死亡率が高いという[30]。イノシシが家畜化されたブタは例外として、その他のウシやウマなどではドングリ中毒(英:acorn poisoning)というのも知られている[31][32]。

新規侵入地へのカシの定着にはネズミが運ぶには長距離の分布地域もあり、カケス(Garrulus glandarius、カラス科)の貯食行動が関与しているのが疑われる地域もある[33]。

菌根の種類、花粉の媒介、種子の散布様式という3つの事象は独立して進化してきたように見えるが、連携して進化してきたのではないかという説が近年提唱されている。外生菌根、風媒花、重力散布(および風散布)はいずれも同種が密集する状況ほど有利になりやすい形質であると考えられている[34]。

ドングリは昆虫の餌にもなっており、種子の死亡率としては動物以外にこちらも大きい。北海道における観察例ではクリシギゾウムシなどのシギゾウムシ類と、ハマキガ類が殆どである。この年の虫害率は全種子の8割、虫害による死亡率は同7割であった。虫害を受けても完全に死ぬわけでなく一部は生存し発芽もするが、実生はやや小さいという[35]。野外ではたいていのドングリは虫害を受けているため、これに対するネズミの反応も調べられている。ヒメネズミでの実験では完食する場合は健全堅果の方を好むが、虫害果も食べないわけではない。巣へ運ぶ個数などは雌雄差が見られた[36]。

ドングリは秋に地上に落ちるとすぐに根を伸ばし、春先には本葉を展開させる。形態節のように地下性の発芽様式をとり、子葉は地中のドングリ内に残る。ネズミは地下に残る子葉目当てに、掘り起こして捕食することがあり、初夏までの死因はこれが多いという[37]。時期、および過度な掘り起しが起きなければ子葉の捕食自体は致命的でない場合もあると見られ、大きい種子を付けることで実生から遠ざけ子葉に誘引する生存戦略なのではという説もある[38]。前述のように虫害でも種子内部が完全には捕食されずに生き残る例が知られている。

種子は落下後すぐに根を伸ばす性質から埋土種子や土壌シードバンクは形成しないと見られている。戦略としては耐陰性の高い実生を地上に大量に用意し、ギャップの形成を待つ陰樹に多いタイプである。耐乾性はあり尾根筋にも定着できるが、条件の良い谷筋で優勢な群落を作ることが多い。これは重力散布になるドングリの影響もある。実生の耐陰性はツブラジイ(コジイ)より高く、イチイガシより若干低いと見られ、暗い林床では樹高成長よりも横に枝を伸ばし光を求める樹形になるという[39]。これはモミ属針葉樹などでも知られる。アラカシは気候的な極相種ではなく、後述のように土地的な条件で極相になると見られる[40]。

他の植物が嫌う石灰岩質の土壌にも適応する[41][42][43]。菌根菌を摂取してやると定着しやすいという[44]。変種アマミアラカシも石灰岩地に見られ、サンゴ礁が隆起してできた琉球石灰岩やこれを母材とする島尻マージが多い南西諸島の土壌に適応している。花崗岩の土壌(真砂土)にも適応する。

クスノキとアラカシでは乾燥時の戦略が違うという[45]。

実生更新の他に萌芽更新もよく行う。コナラが高齢になると萌芽能力が著しく低下するのに対し、アラカシはあまり変わらないという[46]。

常緑ブナ科の葉はムラサキシジミ族(Tribe Arhopalini)のシジミチョウの食草である。日本産のこの仲間であるムラサキシジミ(Narathura japonica)、ルーミスシジミ(Panchala ganesa)、ムラサキツバメ( Narathura bazalus)がいるが、いずれも食草が異なる。アラカシに付くのはムラサキシジミであり、この種は植生が広く他のカシ類も食べる。また、幼虫は体から蜜を分泌しアリと共生するというシジミチョウによく見られる生態をもつ[47][48]。ムラサキシジミは近年分布を拡大しているが、天敵である寄生蜂よりも早く拡大しており、先端地域では全く寄生されない現象がみられるという[49]。

ナラ枯れ

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ナラ枯れ(ブナ科樹木萎凋病、英:Japanese oak wilt)は、本種をはじめ全国的にブナ科樹木の枯損被害をもたらしている病気である。原因は菌類(きのこ、カビ)による感染症であることが、1998年に日本人研究者らによって発表され[50]、カシノナガキクイムシという昆虫によって媒介されていることが判明した[50]。ミズナラやコナラはこの病気に対して特に感受性が強く[51]、枯損被害が全国的に発生しており大きな問題になっている。

マツ材線虫病およびナラ枯れの蔓延により、関東地方以西ではアカマツ・コナラ林からシイ・カシ林へと植生遷移が急速に進んでいる地域がある[52][53]。これには増加するニホンジカの捕食圧の影響も言われており、シカが嫌う植物と母数の多い植物が優勢になっていくのではないかと推測されている[54]。

分布

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中国、台湾、朝鮮の済州島、アジア東南部、日本に分布し、日本においては、本州の宮城県以南・石川県以西、四国、九州、沖縄に分布する[12]。

人間との関係

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木材

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